白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

「株式会社 山本山」代表取締役社長 山本嘉一郎さんをお招きして

2011/1/28 

185nishi-garden今回のお客様は「山本山」の山本嘉一郎社長。今日の試食は白井が子供の頃から食べている、全形海苔を使って家庭で作る海苔の佃煮。「最初に手に水を付けて海苔をクシャっとにぎるのですが、今日の海苔はいつもより手にくっつきますね」と白井。「いい海苔は水にすぐ溶けます。口の中で上あごにくっつくような海苔はいいんです。水分に出会うと香りも上がってきます。」と山本社長。今日お持ち下さったのは江戸前のもの。有明産と同様、潮干狩りができるような場所で太陽の恵みをたくさん受けて育ち、柔らかく、水分を吸うとすぐに溶けるのが特徴だそうです。
「ずっと海水の中で育つ瀬戸内の海苔は、強い海苔になります。破れにくいから巻き寿司に向いているんです。節分の恵方巻きは大阪の海苔屋さんが考えて広めたものなんですよ。」と続けられます。
「煮物の残り汁などに海苔をといて、酢・塩・コショウで味を整え、ドレッシングや和え衣のように使うこともあります。海苔の旬はいつですか?」と白井。「産地にもよりますが寒い時期です。12月半ばから1月半ばぐらいですね。」海苔の製法は紙漉きと良く似ているそう。水洗いしたどろどろの海苔をすだれに広げて天日干しし、焼いたものが焼き海苔に。巻き寿司を巻くすだれはそもそも海苔を作る道具を転用したものだとか。味が良いのは干す時すだれに接していた海苔のざらざらした面のほうなのだそう。 「関西で味付け海苔が好まれるのは昆布の文化に根差すものだと思います」と山本社長。ご飯と食べる佃煮と同じ発想から味付け海苔が好まれているのではないかと話され「焼きのりは海苔本来のおいしさ。特に小さい子供さんはまず焼きのりから食べて欲しいと思いますね」とも。白井が雑学王と称する山本社長。テンポよくジョークを交え、江戸っ子の粋な風情が素敵です。老舗の重みについてお尋ねすると「やりたいことは自分でやらないと決めています。自分は基盤をしっかり守り、次の代が出来ることを残すことで、続いていくと思っています。」とさらり。
お茶といえば、茶色いお茶しかなかった時代、元文3年(1738年)に日本で初めて緑の煎茶を販売し、天保6年(1835年)には玉露茶を発明し世に送り出します。昭和22年(1947年)からは海苔の販売にも着手し、100年ごとに新たな飛躍をとげてこられた山本山320年の歴史。「今後はもっと海苔やお茶を世界の人に食べて(飲んで)もらいたい」山本社長のお言葉には、日本独自の食文化を切り口に、日本を理解してもらう契機になっていきたいとの願いが込められています。会場にはあつあつご飯と焼きのり・海苔の佃煮を。「ご飯に焼き海苔を載せて30秒後が食べごろ。水分を程よく吸って香りも味も絶品ですよ」とのアドバイスもいただき、日本食のおいしさの原点を改めて堪能しました。

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