堺刀司(株式会社和泉利器製作所)代表取締役社長 信田圭造氏をお迎えして
2013/5/24
今回のゲストは日本だけでなく世界の一流シェフが愛用する堺刀司の代表取締役社長信田圭造さん。会場にずらりと並べられた様々なサイズや形の包丁や調理道具。「鋼の包丁の良さはやっぱり切れ味。使った後すぐ水で洗って乾いたふきんで拭いておけば、鋼でもそんなにサビません。」と信田社長。様々な和包丁を軽く持ち「日本の包丁は取手を軽く握るだけで、ほら自然に切りやすいバランスになってます。そこまで計算して作られているから、疲れません。」と実演。「ご家庭では三徳包丁もいいですが、きれいに美味しく仕上げるために、出刃ぐらいは使い分けて欲しいですね」。創業から210年、鋼からステンレスへ、さらに外国製の包丁が出回る昨今、「海外の方ほど『これはいい!』と和包丁をお土産に買って帰られます。日本の包丁はそれほどいいもの。使って良さを実感して欲しい」と日頃の思いを。
西宮阪急正司食品部長さんからは試食のスイカと24(フシ)にちなんで今日は節の日ということで生節をご紹介。「昔はよく使われました」と信田社長が手にとられたのは、刃渡りが30センチ以上にもなる大きなスイカ切り包丁。麺切り包丁や羊羹を切る菓子切り包丁など珍しい包丁や道具を次々手にとって説明を。細くて長い刺身包丁は関西のものは先が尖っているのに対して、江戸では細くて四角い形。これは関西の料理人が立って作業をしていたのに対し、江戸では仕込みは座っておこなっていたため、それぞれに使いやすい刃の形になったのだそう。卵焼き器は関西では長方形、東京は正方形で木のフタ付き、名古屋は長方形でも横長に持つスタイル。「料理の文化の違いがそのまま道具の違いになるんですね。」と白井も会場もその奥の深さにへぇ~の連続です。ふぐの薄造り用の包丁は手で刃がしなるほどの薄さ。「普通の刺身包丁と値段も倍違います」。
人気番組「料理の鉄人」にも協力されていた信田社長。道場六三郎氏のサキ包丁を見られ、「京都で修行を積まれたとすぐ分かりました。」うなぎのサキ包丁は、背開きをする東京だけでなく、名古屋、関西でも京都と大阪でそれぞれ形が異なるそう。
「ステーキを食べに行くと、切る前にナイフをスチール棒という道具でさっと研ぐ。それが西洋の研ぎ方。水で濡らした石で研ぐのは日本と中国と韓国だけ。研ぎも長持ちします。」鋼の包丁は鎬(しのぎ)という刃に付けられた角度に合せると良いそう。片刃は鎬のある表を80~90回、裏を10回ほど、両刃は両面50回ずつを目安に。鎬がない包丁は10円玉を3枚ほど重ねた高さを目安に。砥石の端において初めに角度を確かめてから研ぐとうまくいくとのこと。
「30年前、スタジオを初めてスタートさせるとき、堺刀司さんの刃物やお鍋をたくさん買わせていただきました。今でもよく切れて現役で活躍中です。信田社長さんともその時からの長いお付き合い。道具も人とのつながりも大切にしていきたいですね」と白井。信田社長の刃物や食に対する深い知識と軽妙な関西弁のトークに大いに笑い、大いに学んだひとときでした。(文:土田)