第21話 あやめに菖蒲に花菖蒲
端午の節句は、菖蒲の節句とも言われ、古くから強い香気で厄を祓う菖蒲(ショウブ)や蓬(ヨモギ)を軒につるし、また菖蒲湯に入ることで無病息災を願っていたんだよ。
「強い香気による厄払い」という意味が込められた「菖蒲湯」に使う「菖蒲(ショウブ)」とは・・・。「ショウブ」という言葉を聞いてみんなが頭に思い浮かべるのは、きっと梅雨の雨によく映える紫紺の花菖蒲(ハナショウブ)だろう。ところがドッコイ、菖蒲湯に使うショウブとは、ショウブ科(サトイモ科に分類されることもある)のショウブという植物のことを言うんだぞ。葉に爽やかな香気を持っていて、お湯につけるとその香気に包まれて心が静まるうえに、血行が良くなり体も温まるんだ。さてこのショウブと言う植物は、古くには「あやめ」または「あやめぐさ」と呼ばれ、万葉集にも数多く詠まれているんだよ。この「あやめ」と同様湿地に生えていて、葉や草の姿もよく似て花が美しいことから、「はなあやめ」と呼ばれたのがハナショウブの野生種である「ノハナショウブ」なんだ。
日本では古くは、「あやめ」と呼ばれていたものが、奈良時代に中国から導入された端午の節句という行事に使われていた「あやめ」に、「菖蒲」と言う漢字を当てて「ショウブ」と読ませたことから、話がややこしくなったんだね。「あやめ」が「ショウブ」になったので、「はなあやめ」が「ハナショウブ」に変わり、「あやめ」と言う名が使われなくなったと思ったら、「ハナショウブ」の仲間を「アヤメ」と呼ぶようになったみたいなんだ。さぁ、わかったかな?