白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第43話 彼岸花のなぜ? その3 「なぜ、人里にしかないの?」

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「その花は毒があるから触ったらあかんよ!!」なんて、子供の頃にお母さんから言われなかったかい? 僕と同じような年代の人は、少なからずこのような注意の声を聞いていたはず。
ヒガンバナは田んぼの畦や農道の脇、お墓の周辺など、たいてい人が立ち入ることのできるところに生えている。人の手の入らない山地や野原などには生えていない。これは何を意味しているんだろうかと考えたことはないかい?
ヒガンバナは、前回も書いたとおり、中国の揚子江周辺が原産地で、有史以前にわが国に持ち込まれたと考えられているんだけど、その主な理由は、国内のヒガンバナは3媒体であり、種ができない株ばかりだからなんだよ。中国にはもちろん、正常に種のできる2媒体が普通に生えているから、中国のようにもし日本にも原産していたなら、2媒体があってしかるべしと言うことなんだけど、たまたま中国から持ち込まれた株が3媒体で、それが人為的に急速に全国に広まっていったと考えられているんだよ。
冒頭の言葉通り、ヒガンバナにはアルカロイドが含まれており、そのまま食べると吐き気や嘔吐、腹痛などの中毒症状を起こすんだ。ところが、あの球根には良質のデンプンが含まれていて、球根をおろし金でおろして、綺麗な水で一昼夜くらい晒すと、毒素がすっかり抜けて、片栗粉のようなデンプンがとれるんだ。昔の人はこのことを知っていたからこそ、田んぼの周辺に好んで植えたようだよ。それは、凶作の年には米の代わりにヒガンバナからとれたデンプンを食べて飢えを防ぐことができたからだろうね。だから、ヒガンバナは稲作の広がりと同じくして、救荒作物として全国に広がっていったんだね。
どうだい? 人里にしか生えてない理由が分かったかい?

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