第54話 春を先取りするイヌノフグリ
イヌノフグリという名の早春の花を知っているかい? きっと誰でも目にしているとは思うけど、何せ小さな花(直径3mm)だからねえ。見ていても気がついていない人が多いだろうねえ。2月の中下旬ともなれば、街中の道端のコンクリートやアスファルトの割れ目や隙間、はたまた庭の隅や公園など、日当たりのイイ、周りに丈の高い草の生えていないところで、ごくごく小さい薄ピンク色の花を咲かせるんだよ。
イヌノフグリの花
ところでこのイヌノフグリと言う名前はどういう意味か分かるかな? 「犬のふぐり」って何かって!? この「ふぐり」という言葉は、ワープロで変換しても漢字がなかなか出てこないだろう。最近ではトンと使わなくなった言葉だけど、実は「ふぐり」とは「陰嚢」、すなわち「男のタマタマ」のことなんだ。なんて言う名前を付けたんだって! こらっ、この植物の名付け親は、かの有名な植物学者である牧野富太郎博士なんだぞ。えっ、知らないって?
イヌノフグリの果実
この花の果実の形をよく見てごらん。ほらね、可愛いワンちゃんのあそことそっくりだろう? 牧野博士はこの小さな花の果実をじっくりと観察して、イヌノフグリという名前を思いついたんだ。
でも、このイヌノフグリは最近見かけることが少なくなってきたんだよ。その原因は外来植物であるオオイヌノフグリという草が勢力を増して、イヌノフグリの生息場所を奪っているからなんだ。読んで字の如く、大きいイヌノフグリって言う草で、生きていく場所はイヌノフグリと同じようなところで、しかもイヌノフグリよりも体も花(直径1cm)も大きくて、生長が早いもんだから、瞬く間に全国制覇を果たしたんだよ。
オオイヌノフグリの花
みんなもこの綺麗なコバルトブルーの花を咲かせるオオイヌノフグリなら見たことがあるだろう。この花を見かけたら、昔から日本で生きている可憐なイヌノフグリのことも思い出してくれよな!
オオイヌノフグリの果実