白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

2015.4.10  伝承大阪寿司さね松 店主 實松洋輔さん

2015/4/16 

西宮阪急をもっと知りたいシリーズ。今回は催事によく出ておられるお店の中から、大阪寿司『さね松』の實松洋輔さんをお迎えしました。「さね松さんとのお出会いは、うちのスタッフが差し入れてくれた寿司折。おいしい、懐かしい味と心に残りました。昔ながらの大阪寿司の味を守る甲子園口商店街のお店です。西宮阪急の催事でお寿司を買う時に、先代のお父様ともよくお話をさせていただきました。残念ながら25年9月に亡くなられましたが、味はこの息子さんに引き継がれています」。
生ものを売りにする江戸前の寿司とは違い、大阪寿司はすべての具材にひと手間をかけるのが特徴。その分時間が経つと味がなじんでまたおいしくなるのだそう。押し寿司の木型はかつてタコ焼き器と同じくらい関西の家庭の台所にあったと言われます。今日の試食は焼きアナゴと煮アナゴの押し寿司を。
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「どうしたらおいしいままぺっしゃんこにできるの?」「アナゴはゼラチン質が強い皮を持つ背の方を最初にしっかり焼くことが一番のコツです。エビは串をして沸騰した鍋に入れます。皮が張ったら冷水に。鯛は塩を振って30分ぐらいなじませ、水洗いして水を切ります。」その後ラップして冷凍し少し凍らせた方が薄く切りやすいとのこと。鯖に塩をするときは尻尾から頭に向かってウロコの間に入るように塩を・・・家でも役立つプロの技をたくさん教えてくださいました。
巻き寿司は実演を交え「海苔に対してご飯は細巻きで7分、太巻きで9分ほど、奥の端がすこし高くなるように広げます。具は真ん中に。巻き簾の上だけを手前から押すように動かして。海苔が重なるところがしゃりの水分でちゃんとくっつきます」と慣れた手つきで。「いなり寿司の揚げは必ず前日に炊いて味をしっかり含ませます。具材は薄味に仕上げます。」とコツを丁寧に。
寿司に使うすべての具材を手作りされ、添加物も使わない。「妥協せず、どんな忙しいときでもきっちりしたものを作るように」と託されたそうです。「食べることへの興味がとても強い人。私のやり方を否定するのではなく「僕だったらこんな風に作る」とどんな時でも自分の手を止めてすぐ手本を見せて教えてくれる優しい親父でした」と思い出を。
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油をひかず焼き上げる卵焼き、蔵元さんに酸味を抑えたものを特別に作ってもらう酢、すべてにこだわり抜いた大阪寿司。「父が残してくれたこの味を、この道を作ってくれたことに感謝して、のれんを守りいつか父をこえられるように頑張っていきます」としっかりとした言葉で語ってくださった洋輔さん。お客様からのアンケートには「おいしかった」という言葉とともに「誠実なお人柄がよく伝わってきました」とたくさんの嬉しいメッセージが。
大阪寿司の伝統とおいしさに触れ、父から子へ職人としての真摯な姿勢と技が受け継がれた喜びを会場の誰もが感じた温かなひとときでした。
(文:土田)

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