蓮と睡蓮
7月にもなると、水辺には蓮や睡蓮の花を見かけるようになるんだけど、蓮と睡蓮の区別がつかない人が意外と多いみたいなんだ。みんなはしっかりと区別がつくよね! えっ、よく分からないって? 仏教においては蓮の花も睡蓮の花も区別せず、蓮華として扱われているからなぁ、しょうがないかなぁ。じゃあ解説するから、しっかりと聞いておくんだよ。
まず、蓮だけど、ハスという植物はインド亜大陸が原産で、みんなもよく知っているとおり、池や田んぼの水中の泥の中に蓮根という長い地下茎(根茎)を這わしているよね。その蓮根の節々から葉柄や花茎を伸ばして水上に突き出し、丸い大きな葉や30cm近くもあるような大きな花を咲かせるんだ。
ハスの花
一方、睡蓮だけど、スイレンという植物は東アフリカから東南アジアを経て日本にまで分布する植物で、熱帯性のものと温帯性のものが有るんだよ。日本にはヒツジグサっていう種類が自生しているんだ。スイレンも水中の泥の中で育つんだけど、ハスのように長い根茎ではなくて、太短い塊茎から葉や花を出すんだ。葉は基本的に水面に浮いており、ハスのように水上に大きく突き出すことはないんだけど、花は温帯性のものは水面上に、熱帯性のものは水上に少し突き出して咲かせるんだよ。
温帯性スイレンの花(左)と熱帯性スイレンの花(右)
スイレンの葉は、円形または楕円形で、一カ所だけ中心部の葉柄の付け根まで切れ込みが有り、表面は艶があって水をはじくことはないんだね。一方、ハスの葉は、ほぼ円形で切れ込みはなく、春先に出るもの以外は、大きく水上に突き出してるよね。表面は艶がなく白い粉をふいたような状態で、水を良くはじき、葉の上を水玉がころころと転がってるのをよく見かけるよね。
スイレンの葉(左)とハスの葉の上の水玉(右)
どうだい、ハスとスイレンて、水中で育つという共通点はあるけど、全然違うだろう? じゃあ、花を比べてみようか。ハスの花びらは舟形で、これを形取って作られた、ラーメンや中華料理に使われる食器を「れんげ(蓮華)」って言うよね。しかも、蓮の花は咲き終わると、花びらが散ってしまい、中心部に花托部分が残されて、それが蜂の巣に似ているから「蜂巣(ハチス)」と呼ばれるようになり、それが訛ってハスになったんだよ。
ハスの花托
スイレンの花を見てみると、花びらは細長い三角形で、花が終わると、花びらと萼を閉じて水中に潜っていくんだよ。スイレンの花は日中開いて夜には閉じるというのを3回くらい繰り返すんだけど、それが夜には眠っているように見えることから、睡る蓮に似た花でスイレンになったんだね。でも、実はね、ハスの花も日中に開いて夜に閉じるという動きを2~3日繰り返してから散るんだけどね。
さあ、これでもう蓮と睡蓮の区別がつかないなんて言わせないぞ! あとは現地で現物をよく観察して、しっかりと目に焼き付けておくんだな。
最後にレンコンの話を少ししてみようか。みんなはレンコンは好きかな?
あのシャキシャキ感がたまらなくって、僕は大好きだよ。レンコンを輪切りにすると、穴がいくつか空いているけど、穴の数はほぼ決まっているのを知っているかい? ごく小さな穴を除くと、ほぼ10個前後なんだけど、もちろん例外もあるよ。この穴は葉から取り入れた酸素を通す通気口の役目を果たしているんだよ。水中の泥の中では、酸素を取り入れることはできないからね。
ところで、今の説明で葉の表面からレンコンまで穴がつながっていることに気づいたかな? 昔中国では、ハスの葉に入れたお酒を葉柄から吸い込んで飲むということをしていたそうな。これは日本にも伝わっていて、その形から象鼻杯(ぞうびはい)といわれているんだよ。みんなも、ハスの葉が手には入ったら一度試してみると良いよ。
レンコンの穴