白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

薄と荻

この漢字読めるかな? えっ、馬鹿にするにもほどがあるって? こりゃこりゃ失礼。みんなにはこれくらいの教養は十分あるんだったな。じゃあ、この二つの植物の違いを言える人は? あれれ、誰も手が上がらないじゃないの! 漢字は読めても、実物の違いは分からないんだね。 それじゃあ、ムッシュの出番だ!
この漢字はススキとオギと読むのは常識だけど、ススキとオギ、ススキは分かっていても、オギをしっかりと区別できる人は結構少ないんだよ。みんながススキの原っぱだと思っているところは、実はオギの原っぱだったりするからね。荻原や荻野など、荻が群生する野原をイメージした人名や地名があるけど、薄原や薄野っていう人名や地名はあまり聞かないよね。えっ、札幌に「すすき野」があるじゃないかって? 確かに薄野という地名はあるけど、オギに比べると極端に少ないよね。でも、みんなはどうしてだと思う? これは、ススキとオギという二つの植物の生態の違いを理解すれば、自ずと分かってくると思うよ。
薄と荻①ススキの穂薄と荻②オギの穂
ススキの穂             オギの穂

それじゃあ、そろそろススキとオギの違いを説明しようか。ススキとオギの見分け方は大きく3つあって、それは穂の先端と株立ちの状況それに生育環境の違いなんだ。まず穂だけど、これは非常に良く似ていて、ススキの穂は薄茶や赤っぽいものなど、色があるんだけど、荻は白っぽくて日に当たると白銀に輝くこともあるよ。でも穂の最も大きな違いは、穂の先端部分にあるんだよ。この穂というものは、小さな花の集まりなんだけど、一つ一つの花をよく観察すると、ススキの花には先端部分に細くて柔らかい毛の他にノギ(芒)と言う、針のような細いものがついているんだ。このノギは稲や麦の籾の先端についているものと同じなんだよ。ところが、オギにはこのノギというものがなく、柔らかい毛だけが生えているんだ。何だって、老眼鏡がないと見えないって? 老眼鏡でもなかなか見えにくいから、虫眼鏡で見た方が良いよ。
薄と荻③ススキの穂のノギ薄と荻④オギの穂にはノギがない
ススキの穂のノギ            オギの穂にはノギがない

次に、株の状況だけど、ススキは芽生えてから年数が経つと、一株の茎がどんどん増えて、抱えきれないほどの株立ち(かたまり)になるんだけど、オギは地下茎で周辺に広がっていくため、株立ちにはならず面として広がっていくんだ。
薄と荻⑤ススキの株立ち薄と荻⑥オギの面的な広がり
ススキの株立ち           オギの面的な広がり

そこで思い出してほしいのが、荻野や荻原という地名や人名。ススキはたくさんの種が芽生えて、多くの株が生えてこないと原っぱにはならないけれど、オギは地下茎でどんどん広がっていくから、数年もすれば立派な原っぱになるんだよ。でも、兵庫県の砥峰高原など、ススキの原っぱも数少ないけどあるよね。これには毎年山焼きと言って、冬の終わりに原っぱに火を放つことで、ススキ以外の植物や病害虫などを死滅させるから、ススキの原っぱが維持できているんだ。このように、ススキは人の手助けがないと長い間原っぱの状態を保つことができなんだぞ。ところが、オギはさっきも言ったように地下茎で周辺に密に広がっていくので、他の植物が入り込む隙が少なく、一面のオギ原になっていくんだ。大きな川の河川敷や河原に群落を作って綺麗な穂をなびかせているのは、実はススキではなく、オギだったんだぜ!
違いの三つ目、最後に生育環境なんだけど、今までの説明でピンときた人もいると思うけど、オギは河原など、地下水位が高くて砂と粘土が適度に混ざり合った良く肥えたところを好むんだけど、ススキはずいぶん以前に話題にしたようにパイオニア植物と言って、山火事や土砂崩れなどで、地面が露わになったところにまず生えてくる植物で、やや乾燥したやせたところを好む傾向があるんだ。だから、河原で群落を作っているのはオギで、河から離れたところや、山地の開けたところ、、高原などに生えているのはススキって言うわけさ。
今まで、みんながススキの原っぱだと思っていたところは、実はオギの原っぱだってことになるかもね?

へぇ~の雑学一覧へ戻る