初冬の花、ヤツデ
みんなはヤツデと言う植物にどんな印象を持っているかな? えっ、まさかヤツデを知らない人はいないよね! ほとんどの人は知っているけど、知っていてもそれほど良い印象を持ってる人は少ないんじゃないかな。昔は庭などにも植えられていたけど、日の当たらないジメジメしたところ、特に便所の近くに良く植えられていたもんだよ。
ヤツデ
ヤツデは日本原産の常緑低木で、日陰と湿り気を好むことから、日の当たらないジメッとしたところに植栽されてきたんだね。しかも、深い緑の大きな葉を広げることから、あんまり大きく繁ると家の中が暗くなってしまうからねえ。このような理由で,しばらくは人気もなかったんだけど、最近になって明るい斑入りの葉を持つ園芸品種が出てきて、室内で育てる観葉植物の鉢物として人気が出てきているんだぞ。
斑入りの園芸品種
ところで、ヤツデの花はいつ咲くか知っているかい? おっ、さすがムッシュ・フルーリのファンだけのことはあるね。そう、正解! タイトルにもあるとおり、晩秋も終わり、師走の声を聞く頃になると、白い小さな花を咲かせるんだ。一つ一つの花は小さいけど、それがたくさん集まってボール状になり、そのボールがたくさん円錐状に着くものだから、花序全体としては結構大きくて目立つから、みんなも良く目にしていると思うぞ。まさに、初冬に輝かしく咲く花だね。
ヤツデの花
ヤツデの花房
じゃあ、どうして寒さに向かう年末に花を咲かせるのかって? その頃になると、他の多くの植物は厳しい寒さに向かって、冬越しの準備をするんだよな。普通なら、生育に適さない冬に向かって、多くのエネルギーを使わなきゃいけない花を咲かせる活動なんてもってのほか! でも、裏を返せば、そのような時期に花を咲かせる植物はほとんどいないってこと。そう、みんなも気がついたね。競争相手がいないから、受粉してくれる昆虫たちを独占できるってことさ。えっ、その時期には昆虫もほとんどいないんじゃないかって? 確かに、春から秋に比べると,昆虫の種類は極端に減るけど、まだまだ多くの昆虫たちが活動してるんだぞ。ヤツデの花を観察してごらん、たくさんの昆虫たちが蜜を吸いに集まっているぞ。
ヤツデの実
話はころっと変わって、ヤツデはウコギ科に属しているんだけど、同じウコギ科に属していて,みんなもよく知っているのがキヅタだね。えっ、キヅタを知らないって? キヅタって言うから分からないのかな。では、呼び方を変えてアイビーもしくはヘデラと言えば分かるかな。いろいろな葉の形を持つ蔓性の常緑植物だね。このアイビーは,見かけは全然違うけど、ヤツデとは非常に近縁なんだぞ。
アイビー(ヘデラまたはキヅタ)
その証拠に、ヤツデとアイビーを交配した合いの子が観葉植物として売られているんだ。「ファツヘデラ」って言う名前を聞いたことがないかなぁ? ヤツデをぐっと小さくしたような葉を付けた蔓性の植物なんだけどね。へゴ棒に這わせた鉢物として春から初夏に出回っているから,園芸店を良く注意して見てごらん!
ファッツヘデラ
(ヤツデの属名がFatsia、アイビーの属名がHedera、これを掛け合わせたから両方の名前をとってFatshederaファツヘデラって名付けられたのさ)