白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2017.1.27 京・南禅寺畔 瓢亭 当主 高橋英一先生

2017/2/4 

毎年年初に恒例となった高橋先生のセミナーは、始まる前からお客様のワクワクが会場に伝わってきます。「お料理は楽しくやっていかんとおいしくできないと思っています」と高橋先生。「ひと手間を大切に」その思いを一番に込めておられるのはおだし。瓢亭ではまぐろ節と利尻昆布が使われますが、家庭では普通のだし昆布と鰹節で十分と言われます。「今日は割だしをベースに4通りの使い方で味の変化を楽しんでいただこうと思っています。」

まずは鯛の昆布〆から。「鯛をおろして皮を引いて好きな形に切って塩をあて、一時間程冷蔵庫においてじっくり塩をまわします。身から水が出てきますが、その水分をまた吸って表面がねちっとなるまで待ちます。塩は旨みが深く海のミネラル分を含む天然の塩を使って」と高橋先生。鯛の身を酒とほんの少し薄口しょうゆとみりん入れたボールでまぜて、さっと洗ってしんなりした昆布の上に並べます。ラップを敷いたバットに昆布を広げ、鯛の身を並べ昆布を載せてラップをしてバットを重ねた上に重石をして、冷蔵庫で5~6時間置くと食べごろだそう。少量の時は昆布のまま丸めてラップで包み重石の代わりに輪ゴムで止めても。

「割りだしはお酢を使わない酢の物。お酢が苦手な方にも召し上がっていただけます。だしに薄口と濃口のしょうゆを合わせることで薄口のからさと濃口の香りの両方が楽しめます。そこにレモン・すだち・ゆず・だいだいと4種類の柑橘を。少なくても3種類以上入れるとおいしくまろやかに。すっぱくて旨みの少ないレモンは控えめに、だいだいはこの時期正月飾りのものを。すだちはたくさん入ります。明日はお肌がすべすべに。香り付けに柚子の皮も擦って。割りだしは時間が経つと香りが変わってしまうので、食べるときにいる分だけ作ってください。」まずは割りだしそのものの味わいをもずくで。次は鯛の昆布〆にワサビを添えて。「精進のもずくと生臭の鯛ではおなじ割りだしでもこんなに味が変わるんですよ」。カニとほうれん草には露生姜を加えた割り出しを。「割りだしをかけるのではなく、カニとほうれん草と先によく和える方がおいしくできます。わさびとしょうがでも味が全く変化します。違いを楽しんでいただけたら。」最後はちり酢で。「そこそこ絞った大根おろしと一味唐辛子。細かく刻んだネギを入れると味がコロッと変わります。水っぽくなる分しょうゆを足してやります。」小さめに造りにした鮃と湯引きした鯛の肝にかけて。「鰹のタタキにもよく合います。これも先に和えた方がおいしくなります。さっとゆがいた鯛の皮でも、刺身の端などいろんなお造りを入れても楽しめて、また節約にもなる便利な料理です」。
「瓢亭さんのまかないってどんな風なんですか?」「1年生2年生が作ります」「へぇ、熊谷さんも作っておられたの」「出し巻を作ったりして。決まった予算で人数分をつくるので、色んな工夫をするんですが、それがいい勉強になりました」。今回も跡を継ぐ高橋義弘先生と、瓢亭で15年修業を積んだ後、苦楽園口の京料理「くまがい」でミシュランの星を獲得された熊谷伸司さんが高橋先生のお手伝いに。お話の合間に親子で確認をしながら進められる様子に「仲がいいんですね。お家でもこんな感じ?」「父は家でもあまり変わりません。いつも親子で普通に話してます」と義弘先生。
「正月の元日の朝には従業員みんな揃ってスルメ・昆布・みかんと日本酒で乾杯するとお聞きしました。京都は毎日のおかずにも決まり事があるとか」「毎月3日にはあらめとおあげの炊いたん、あと毎月末にはおからですね。これは家々で違うんですよ」白井の質問に会場からも「へぇ~」と声が上がります。誠実で朗らかなお人柄がそのまま料理の味わいとして伝わる贅沢なひととき、京都の風が会場にそよいでいました。(文:土田)

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