白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第5話 じゃがいもと馬鈴薯

(操さん)
「トントン!煮てよし、焼いてよし、蒸してよし、つぶしてよし、食べ方の数だけおいしさがあるジャガイモ。もしジャガイモがなかったらいつもの食卓の景色がすっかり変わってしまいそうなぐらい、身近な食材ですよね。最近は新しい品種もどんどん出てきて選ぶのも楽しいし。おいしいじゃがいものこと、いろいろ教えてくださいな。」

(ムッシュ・フルーリ)
前回は春キャベツについて話をしたんだけど、今回は白井先生からのお尋ねで、初夏の味じゃがいもについて話すことにするぞ。

じゃがいもはみんなも知っているように、南米のアンデス山地の高地の原産で、16世紀にスペイン人によってヨーロッパにもたらされたんだけど、当時は観賞用の花としてフランスの宮殿などで、栽培されていんだそうな。日本には意外と早く1600年頃にはオランダ人により導入されたようなんだ。そのとき、インドネシアのジャカルタ(当時はジャガトラ)港から運ばれたから、ジャガタラ芋と呼ばれていたんじゃ。それが、だんだん変化してじゃがいもとなったんだな。今も昔も日本人は言葉の省略が好きだねぇ。
その後、明治時代になって北海道開拓が進むにつれて外国品種の導入が盛んになったんだけど、この時期最も早く海外から導入されたのが「男爵薯」なんだぞ。これは当時、函館ドックの役員をしていた川田竜吉が、アメリカ生まれの「アイリッシュ・コブラー」という品種をイギリスから導入したんだけど、彼が爵位を持っていたことから、「男爵薯」ばれるようになったんだ。その「男爵薯」は、150年近く経った今でも、「メークイン」と並んで日本の代表的な品種として君臨しているんだからなぁ。どうだい、感慨深いだろう?
 じゃがいもの品種 出展:日本いも類研究会

さて、みんなは、じゃがいものことを馬鈴薯と言うのも知ってるよな? この馬鈴薯という名前は、18世紀に本草学者の小野嵐山によって名付けられたんだけど、これは、中国における名前と漢字も同じなんだってさ。何でも、馬の首に付ける鈴に形が似ているからなんだって。因みに、「薯(しょ)」という漢字は、いものことを指していて、甘薯(さつまいも)、自然薯(やまのいも)にも使われてるよな。

じゃがいもは、アンデスの高地の原産だけど、そこは熱帯の高地だから、年中春から初夏のような気候で、極端な暑さや寒さのない地域なんだ。だから凍り付くような寒さにも、うだるような暑さにも弱いって言うのが、じゃがいもの性質なんだぞ。というわけで、夏の涼しい北海道が栽培の適地となって、最大の生産地になっているんだ。
ところで、北海道では、春に種芋を植えて、夏から初秋に収穫する、年に一作の夏作だけなんだ。みんなも、じゃがいもの薄紫色や白色の花が、見渡す限りの畑一面に咲いている、夏の北海道の風景写真を見たことがあるだろう? 花が終わって一ヶ月もすれば収穫が始まるんだけど、あれは春に植えたものが夏に花を咲かせているんだ。
 じゃがいもの花 出展:日本いも類研究会

ところが、関東以西の暖地では、夏が暑すぎて高原育ちのじゃがいもには耐えられないので、夏を避けて作るようになったんだな。幸い、種芋を植えて収穫するまでの期間が3ヶ月ほどと短いので、西日本では、春先2~3月に植えて5~6月頃に収穫する春作と、初秋の9月上旬に植えて晩秋の11~12月上旬に収穫する秋作の二毛作が可能なんだぞ。特に「新じゃが」という名前で出回るのは、春作の収穫時期となる5~6月で、湯がいても、蒸しても、焼いても、皮が薄くてホクホク、熱々の新じゃがにバターをのせるだけで最高のご馳走だもんな。
でも、じゃがいもを食べるときに気をつけてもらいたいのは、じゃがいもは有毒植物であると言うことなんだ。じゃがいもは表面の凹んでるところから芽が出るんだけど、その芽にソラニンと呼ばれる毒を含むので、必ず調理の前にはしっかり取り除くようにな。また、芽以外にも、光に当たって緑色に変色した皮にも同じソラニンが含まれるので、そうなったら皮は厚めにしっかりと剥いてから、調理するんだぞ。
せっかくの美味しいじゃがいもを食べて、中毒にならないようにな!

(操さん)
「へぇ~、男爵薯ってそんなに昔から食べられてきたんですね。一面にジャガイモの花が咲くところも一度見てみたいなぁ。新じゃがの季節、とっておきのレシピをご紹介します。これって「きょうの料理」50周年の時に、きょうの料理HPで歴代の人気レシピ第3位になったんですよ。ムッシュ・フルーリも今夜のおかずにどうですか?」
「みそじゃがバター」のレシピはこちら>

へぇ~の雑学一覧へ戻る