白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

ムッシュ・フルーリ花探検 第7話ヘメロカリス

「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、 何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ! 今回からは、我がフラワーセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、 その季節ごとに咲くとっておきの一品を紹介していくぞ!  栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、 形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、 そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを紹介していくから、楽しみにな!

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと夏の花探検!
兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長のとっておきの植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。
フラワーセンターのお花とムッシュ・フルーリに会いに行きませんか?
(参加の皆様には会場で操さんのレシピプレゼントもあります。)
『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
7/13(土)、8/17(土)、9/14(土)
(すべて13:30~。ご参加には予約が必要です。)
予約・お問い合わせは
 TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

第7話 ヘメロカリス

関西では入梅が遅かった梅雨も後半になり、そろそろ大雨が降る時期になってきたね。今年は大きな被害がなければいいがなぁ。

さて、この時期になると日本中のあちこちで花を咲かせ始めるワスレグサの仲間たち。この花を見るといよいよ夏がやってきたなぁ~って感じがするよな。えっ、ワスレグサってどんな花、だって? みんなはワスレグサを知らないのかい? じゃあ、ニッコウキズゲ、ヤブカンゾウ、ノカンゾウ、ユウスゲって言う花は? ほら、知っているじゃないか。そう、これらのキスゲやカンゾウ類を総称してワスレグサって言うんだぞ。花は知っているけど、名前を知らないだけだろう?
 ニッコウキスゲ
 ヤブカンゾウ
 ノカンゾウ
 ユウスゲ
ついでに言っておくと、このワスレグサたちは、最新の研究では、ワスレグサ科ワスレグサ属に分類されているんだ。以前は、ユリ科に分類されていたんだけど、最近になって、アロエやニューサイラン、トリトマなどとともに、ユリ科から独立してワスレグサ科になったんだぞ。
そして、このワスレグサ属の学名が、Hemerocallis すなわちヘメロカリスなんだな。ここまで来ると分かったかな。みんなには、初めから標題にあるヘメロカリスって言った方が理解できたみたいだね。

ワスレグサの仲間たちは、東アジア、中でも中国、朝鮮半島、日本を中心に自生していて、わが国にも、先に挙げたニッコウキスゲやノカンゾウにヤブカンゾウ、ユウスゲのほかにも、ハマカンゾウ、エゾカンゾウ、ムサシノキスゲ、ヒメカンゾウなどなど、おおくの野生種があるんだ。ワスレグサの仲間は、ユリに似た花を咲かせて、その花が一日で終わってしまうことから、英語ではDaylilyって呼ばれているんだ。
これらの野生種が新大陸に渡ったとたん、アメリカ人の心をぐっと惹きつけて、凄い勢いで品種改良がなされていったんだ。その理由は、何しろ暑さ寒さにめっぽう強く、土質を選ばず乾燥にも耐えて、一日花だけど花数が多いので、長期間咲き続けることなどなど、簡単に言えば、植えっぱなしで手入れ要らず、しかも真夏に綺麗な花が咲き続けるってとこかな。どうだい、みんなにもピッタリの花だろう?

カラフルな園芸品種の数々①②

今では、毎年数百もの園芸品種が育成されていて、本来の野生種にはなかった、真っ赤や紫、それに複色の花など、非常にカラフルになってきてるんだぞ。みんなも一度これらの園芸品種を育ててみてごらん。きっと気に入ると思うよ。

カラフルな園芸品種の数々③④

それに、もう一つ付け加えると、日本に自生しているヤブカンゾウやノカンゾウは、野菜としても利用できるんだぞ。平安時代から若葉を摘んでお浸しにしたり、また、蕾を乾燥させて保存食としてたんだ。今でも、春先になると、山菜摘みの対象になったり、スーパーでも売られていることもあるよな。特に、若芽をさっと湯がいて酢味噌で食べると、しゃきしゃきとして旨いぞ。

花が綺麗で長持ちし、大変丈夫で育てやすく、しかも、美味しくいただけるなんて最高じゃない?

最後に、ワスレグサって言う名前だけど、中国の古書・文選(もんぜん)の中に、「萱草忘憂」(萱草をして憂いを忘れしむ)の記述があり、この植物が憂いや苦しみを忘れさせてくれると信じられていたみたいだね。これを読んだ当時の日本の貴族たちが「忘れ草」と名付けたようだね。万葉集や古今和歌集などにもこの「忘れ草」を詠んだ歌がたくさんあるから、探してごらん?。

操の「へぇ~!」
ノカンゾウを酢味噌でシャキシャキと食べる感触、私も思い出しました。
昔の人は今ほど野菜の種類が豊富でなかった分、野草の味わいや食感でも季節を感じていたのかもしれませんね。色んな野草がある中で、最初に食べた人の勇気に感謝です。

「ヘメロカリス」を見に行こう!!
「兵庫県立フラワーセンター」のHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいことが満載です

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