「ささやかな『間』が取り持つもの」
2019/12/29
2019年の年の瀬、紅葉が遅かったスタジオの紅葉は風の強い日に、まるで紅葉吹雪のようにパラパラと葉が舞落ち、あっという間に地面が紅葉の赤で埋め尽くされました。家の中ではクリスマスツリーが飾ってあって、秋と冬が隣り合わせの本当に不思議な光景でした。
西宮阪急の開業以来、1階ドンクのティールームを会場に、月2回トークショーを始めて10年が過ぎました。ゲストを招いてお話を聞かせていただいたり、料理講習、お中元お歳暮の青カタログの試食会をしたり・・・。抽選に当選された40人の方たちが、雨でも雪でも休むことなく来てくださいます。ありがたいことです。長い年月を振り返ると人数が半分にも満たない日もありました。
毎回アンケートを書いていただくのですが、ふとした思いつきから書くための時間を作るようにしました。しーんとして熱心に思いを書いてくださる様子はなんだか作文の時間のよう。ほんの3~4分ですが、この「間」をとることで、会場の皆さんから私への大切なメッセージが届くようになりました。
「〇〇だと見にくい」「もっと〇〇して欲しい」など時には厳しいご意見も。一番多いメッセージは「癒されました」の言葉。「久しぶりに当たりました。来てよかったぁ~」「〇〇には意味があったんですね。知らなかった」「食わず嫌いでした」「お店のプロの方のお話、伝わりました」。言葉を届けるだけでなく、書く時間を作ることで、相手の心の声が聞こえてくる、お互いにとって、とても大切な時間だったようです。
先日NHKの「ラジオ深夜便」に出演しました。拙著「兵庫の酒をつなぐ30の物語~この土地に米と人あり~」についてのインタビューの放送後、この本の問い合わせのメールやTELが全国から殺到し、一時はアマゾンの日本酒部門ランキング1位になりました。
番組収録のために東京から来てくださった担当アナウンサーは、打ち合わせもほとんどなく、台本があるわけでもなく、時に「間」を置くような、ゆったりとした雰囲気で質問してくださり、収録は楽しいひとときでした。その「間」がラジオの向こうの誰かの心を動かしてくれたのかも知れません。
「間」というほんの短い時間も、人間にとって大切なのかも知れませんね。