ムッシュ・フルーリ花探検 第17話 ポピー
「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、
何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ!
今回からは、我がフラワーセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、
その季節ごとに咲くとっておきの一品を紹介していくぞ!
栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、
形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、
そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを紹介していくから、楽しみにな!
【参加募集中】ムッシュ・フルーリと春の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。
【新型コロナウィルス感染防止のため4月14日~5月6日まで臨時休業】
『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀5/16(土)②6/27(土)③7/17(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)
第17話 ポピー
フラワーセンターでは、ここ数年春花壇の一員としてチューリップと相性のいいポピーを使うことが多いんだよ。ポピーって一口に言っても、たくさんの種類があるんだけど、みんなはポピーって聞くとどんなポピーを思い浮かべるんだい? シャレーポピーにアイスランドポピー、オリエンタルポピーなどなど。ポピーという名前は、分類上ケシ科ケシ属の植物の総称として使われているからねぇ。でも、日本語でケシと言えば、花を観賞するポピーではなくて、アヘンやモルヒネの原料となる、あへん法で栽培を禁止されているケシを思い出すよね。今回は、ケシ類の中でも、花を観賞するポピーに焦点を当ててみよう!
フラワーセンターでは、11月から年末にかけて、園内のあらゆる花壇にチューリップの球根を16万球も植えるんだけど、花壇に球根を植え付けたら、翌春に芽が出てくるまで、花壇の表面には何もなくなってしまうよね。、それでは冬花壇にならないので、球根を植えこんだ花壇には、冬から春にかけて花を咲かせる一年草を、球根と球根の間に植えておくんだよ。その代表がパンジーやビオラなんだけど、そればかりじゃつまらないので、最近はポピーを使うことか多いんだ。 今年は、アイスランドポピーとシャレーポピーを植えているんだけど、この冬があまりにも温かかったもんだから、本来はチューリップが終わるころから咲き始めるアイスランドポピーが、チューリップに先駆けて3月の半ばくらいからちらほらと咲き始め、今ではチューリップと共演の真っ最中。だから今年の春の花壇はすっごく華やかなんだ。(この原稿を書いているのは4月中旬)でも、本来の時期の5月にはどうなっているのかちょっと心配なんだけどね。
アイスランドポピー
観賞用のポピーの代表と言えば、まずはヒナゲシ。最近はシャレーポピーなどとハイカラな名前で呼ばれることが多くなってきたけど、我々の世代は、何といってもアグネス・チャンが歌って大ヒットした「ひなげしの花」だよね。♬丘の上ひなげしの花が~♬ってね。
ヒナゲシは、ヨーロッパ原産で、麦畑の雑草だったんだよ。特に痩せた土地を好んで生えることから、イギリスでは、畑がケシで赤く染まるのは農家の恥とされた時代があったらしいんだ。ヒナゲシは、またの名をグビジンソウ(虞美人草)とも言うんだけど、これは、中国の伝説に由来していて、秦朝末期の武将・項羽には非常に美しい虞と言う愛人がいたんだけど、項羽が劉邦に敗れて垓下に追い詰められた時に、死を覚悟した項羽が詠った垓下の歌に合わせて虞が舞ったんだ。この舞の後に彼女は自害し、彼女を葬った墓にこの花が赤く咲いたという伝説からこう呼ばれるようになったんだってさ。
ヒナゲシ(シャレーポピー)
次は、最近ヒナゲシよりもよく見かけるようになったアイスランドポピーだね。和名はシベリアヒナゲシって言うんだけど、今では全く使われていないね。もちろん原産地はシベリアから極東で、その地域の気象条件などからアイスランドポピーと名付けられたらしいけど、アイスランド共和国とは全く縁もゆかりもないんだぞ。じつは、これに非常に近い仲間が日本にも自生しているんだ。それは北海道は利尻島の利尻岳だけに自生している、小さな黄色い花をつけるリシリヒナゲシなんだ。 アイスランドポピーは、1日で散ってしまう他のケシとは違って花保ちが良く、数日間も咲き続けるんだ。花色も基本色の白や黄色に加えて、オレンジ、サーモン、ローズピンクにクリームイエローなど、カラフルな園芸品種が育成されていて、その上寒さに強くて栽培しやすいので、大変な人気なんだ。
ケシの花(栽培禁止) ケシの果実(栽培禁止)
最後に、みんなに気を付けてもらいたいことがあるんだ。冒頭でも触れたように、ケシ類には栽培してはいけない種類があることは知っているよな。「あへん法」や「麻薬及び向精神薬取締法」により、ケシ、ハカマオニゲシ、アツミゲシの3種の栽培が禁止されているので、十分注意が必要なんだ。特にイギリスなどの海外で栽培されている園芸品種の種子を、現地で買ったり輸入したりする際には、気を付けるんだぞ。アヘンが取れるケシは、ヨーロッパでは観賞用として多様な園芸品種が普通に栽培されているからな。でも、このケシの種子にはモルヒネが含まれていないので、日本でも昔からアンパンのてっぺんに乗っかってるだろう? そう、それが芥子粒すなわちケシの種子なんだ。種子は煎ると香ばしいので、パンやケーキに振りかけたり、七味唐辛子に混ぜたりしているんだ。もちろん、種子は取り締まりの対象にはなっていないから安心してもいいが、その種を播いて発芽した途端違法になるから気を付けるようにな。
アンパンの頂部に振りかけられている芥子粒
(ケシの種子を煎ったもの)
※ フラワーセンターは、新型コロナウィルス感染防止の観点から、兵庫県の指導により4月14日~5月6日まで臨時休園しています。
「ポピー」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>
ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。