白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第30話 インパチェンス

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと夏の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。大人気のセミナーです。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。

『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀6/19(土)②7/17(土)③8/21(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

第30話 インパチェンス

 インパチェンスっていう花は、みんなは良く知っているよね。 今ではフラワーセンターの夏花壇には欠かせないポピュラーになっている花だよね。因みに和名はアフリカホウセンカって言うんだけど、みんなは聞いたことあるかな? えっ、聞いたことがないって? みんなはそんなに若いんだねぇ。今では、あまり聞かなくなってしまった名前だけど、ホウセンカの仲間でアフリカ原産という意味合いだから、わかりやすい名前だと思うけどなぁ。
◀インパチェンスの花壇

それじゃあインパチェンスっていう名前は、どういう意味かって? では、説明をはじめるとするかな。ホウセンカもアフリカホウセンカもツリフネソウ科ツリフネソウ属に分類される熱帯性の多年草で、日本の野山に生えているツリフネソウの仲間なんだな。     ツリフネソウの花▼
この仲間の共通点は、実はその果実にあるんだ。 ホウセンカを育てたことのある人ならわかるだろうけど、果実が熟すと、ちょっと触れるだけで果皮が一瞬で弾けて、中の種子が勢いよく飛び散るんだよ。飛び散った種が当たると痛さを感じるくらいの勢いで弾き飛ばされるんだけど、それはできるだけ広範囲に種子を散布するために、長い年月をかけて勝ち取ってきた仕組みなのさ。植物は自分の子孫の繁栄を願って、あらゆる手段を講じて、種子をできるだけ広範囲の散布する努力をしているんだ。

▲ホウセンカ    今にもはじけそうなホウセンカの実▲

風で飛ばされていくタンポポの綿毛やカエデの翼、動物の毛や衣服にくっつくオナモミの鈎針、甘いおやつを付けたスミレ、水に浮くスポンジに囲まれたハマユウ、人間が食べても美味しいと感じる果肉を蓄えたフルーツ類などなど、調べれば調べるほど、いくらでも数多くの仕組みが見つかるんだ。 動けない植物は身の回りの環境を巧みに利用して、生産した種子をなるべく広範囲に散布するための努力をしてきたのさ。

さあ、話を元に戻そうか。インパチェンスっていう名前は、ツリフネソウ属の学名Impatiens(インパティエンス)から来てるんだけど、この属名は、ラテン語の「impatiens=我慢できない」を語源にしていて、果実がちょっと触るとすぐに弾けることが由来になっているんだ。どうだい、なかなかセンスのいい名付け方だと思わないかい?

最近では、インパチェンスの他にも、花が大きくて、株張りも大きなニューギニア・インパチェンスの品種も多数育成され、花壇や寄せ植え以外にも大鉢で観賞されるなど、利用方法も多様になってきているので、是非、みんなも育てて見てくれよな。その際には、果実に触れてみて、我慢できるかどうか調べることを忘れないようにな!!

◀ニューギイア・インパチェンス 

 

 

 

「インパチェンス」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

第29話 サラセニア

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと春の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。大人気のセミナーです。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。

『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀5/15(土)②6/19(土)③7/17(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)
★新型コロナウィルス感染防止のため、下記の期間は臨時休業いたします。
臨時休園期間:2021年4月25日㈰~5月11日㈫

第29話 サラセニア

5月の声を聞くころになると、我がフラワーセンターが誇る食虫植物のコレクションの一つ、サラセニアの美しくも妖艶な花が咲き始めるんだよ。ところで、サラセニアを知っている人は多いと思うんだけど、その花を見たことがある人は意外と少ないんじゃないかな? どうだい、みんなは見たことあるかい?

食虫植物は虫を捕まえて自らの栄養源に利用しているんだけど、どうして植物が動物である虫を食べるようになったか知ってるかい? そりゃあそうだよなぁ、知らないよね。じゃあ種明かしをするかな。
まず、食虫植物は、世界中に12科20属500種類にも及ぶグループなんだけど、分類上その12科は分類学的にも遠縁のものが多くて、ただ虫を捕まえて栄養補給しているという共通点があるだけなんだな。じゃあ、どうして縁もゆかりもない植物たちが、虫を捕まえるようになったのかって? それには大きな共通する理由があるのさ。その理由は、「食虫植物が他の植物たちとの生存競争に勝てなかったから」っていうことなんだよ。つまり、食虫植物は、いわゆる「負け組」なんだ。

サラセニアの蕾(細い茎の先で下向いている丸い形状のもの)▼

他の植物との生存競争に負けた食虫植物のご先祖たちは、植物が育ちにくい栄養分が乏しいところで生きていくしかなかったんだな。もちろんそんな貧栄養のところでは、十分な生育が望めないから、ご先祖たちはよーくよーく考えた。そこで閃いたのが、栄養分を吸収するのは何も土の中からだけじゃないってこと。だから、初期の食虫植物たちは、自分たちの根元付近にたまたま落ちた虫の死骸が、細菌などによって腐って分解され、そこから窒素などの栄養分が生じることを発見したんだ。 はじめはそれを根から吸収してたんだろうけど、気の遠くなるような長~い年月をかけて、仕組みをどんどん改良させて、積極的に虫を誘き寄せて捕らえ、しかも自ら分泌する消化液で分解して、葉から栄養分を吸収するっていう究極の技を編み出したんだな。どうだい凄いだろう? 植物は黙って虫に食べられているだけじゃないんだ。

食虫植物には、サラセニアやウツボカズラの様に葉を筒状や袋状変化させて、そこに虫を落としこむ「落とし穴式」、モウセンゴケやムシトリスミレなど葉に生える沢山の腺毛から粘液を出して絡めとる「粘着式」、ハエトリソウの様に葉に感覚毛というセンサーを備え、それに虫が触れると瞬く間に葉を閉じて捕獲する「わな式」と、虫を捕まえる方式には三つの方式があるんだけど、それぞれ、ご先祖たちが苦労して、改良に改良を加えて獲得した仕組みなんだぞ。

では、本題に戻って、サラセニアっていう植物は、みんなも知っているとおり葉が筒状になった「落とし穴式」の食虫植物で、文字どおりその筒の中に虫を落とし込んで捕らえるんだ。その筒状の葉の形や色、そしてその表面の模様等が奇麗なので、観葉植物として食虫植物マニア以外の人にも育てている人が多いんだね。
サラセニアは、北アメリカの東岸に広く分布していて、暑さにも寒さにも強いことから、日本の気候にも適応して栽培しやすいってのも万民受けしている理由の一つだね。

◀サラセニア(キバナヘイシソウ)

さて、サラセニアの花だけど、他のどんな花とも似ても似つかない独特の形をしているんだ。花は下を向いて咲き、がく弁と花弁が5枚ずつで、雄しべはたくさんあるけど雌しべは1本。しかしその先端が大きく五つに分かれて反り返り、雨傘を逆さにしたような形状になっているんだ。雨傘で言うなら、5本の骨の先に柱頭があり、その柱頭と柱頭の間から、5枚の花弁がぶら下がっているんだ。言葉で説明してもなかなか花の形は思い浮かべられないけど、花の写真を見れば理解できるかな? どうだい、みんなが想像していた花の形に近いかな? しかも華やかで奇麗だろう?

サラセニアの花(赤花)▲   サラセニアの花(黄花)▲

この独特の形は、昆虫を利用して効率よく花粉を雌しべに運んでもらうことができるように、これもまた、気の遠くなるような長~い時間をかけて、作り上げてきた形なんだ。蜜や花粉を食べようとして、花弁と雌しべの隙間から逆さになった雨傘の中に入った昆虫たちは、体中に花粉をまといながら、またまたその隙間から出てくるんだけど、その際に雌しべの先の柱頭に触れることにより、必ず花粉が柱頭(雨傘の骨の先端部分)に付くんだよな。よくできた仕組みだと思わないかい?
           花びらだ脱落した後のサラセニアの花(雌しべの先端が雨傘様の形状)▼

結局、サラセニアっていう植物は、自分の繁殖のために虫たちを利用しつつ、花期以外の時期には筒状の葉に虫たちを落とし込んで栄養補給に利用しているんだな。植物の世界広しと言えども、これだけ徹底的に虫たちを利用し尽くしている植物は他にはないよな。
是非、一度フラワーセンターに来て、サラセニアの生き残り戦略を目の当たりにしてみては如何?

 

「サラセニア」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

 

第28話 つつじの小径

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと春の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。大人気のセミナーです。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。

『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀5/15(土)②6/19(土)③7/17(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
★4月は『ムッシュ・フルーリ園長の園内ガイドツアー』開催します!
4/10(土)
①10:30~ ご参加には予約が必要です
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

🌷🌷チューリップまつり2021🌷🌷
🦋🦋3/20(土・祝)~4/30(金)🦋🦋
350品種、16万球のチューリップが咲く春のフラワーセンター。
3月は温室内、4月初旬から中旬にかけて花壇のチューリップが見ごろを迎えます。
★チューリップまつり期間中は無休で開園します

第28話 つつじの小径
フラワーセンターの4月と言えば、そりゃあ何と言ってもチューリップだよな。それは自他ともに認めるところだけど、実は、4月にはもう一つ隠れた名物があるんだぞ。それが今月のタイトルにもなっている「つつじの小径」なんだ。知ってるかい? ほら、やっぱりみんなも知らないだろう?

知る人ぞ知る「つつじの小径」とは、園内の北側に鎮座する飯盛山の尾根筋にある、コバノミツバツツジの群落なんだ。コバノミツバツツジっていう名前は聞いたことがあるだろう? えええっ~聞いたことがないって! じゃあ、コバノミツバツツジの説明からしなきゃならんな。

▲コバノミツバツツジの花

ツツジの仲間は、ツツジ科ツツジ属に分類される植物ってのは、みんな知っているよな。このツツジ属には、ヤマツツジ、ウンゼンツツジ、ミヤマキリシマなどの野生種やヒラドツツジ、クルメツツジなどの園芸種のある常緑性のツツジと、レンゲツツジやミツバツツジ、アケボノツツジなどの落葉性のツツジがあり、さらに、アズマシャクナゲやヤクシマシャクナゲなどのシャクナゲ類も含んでいて、北半球を中心に850種類の野生種がある大きなグループなんだ。ツツジ属はロードデンドロン(Rhododendron)という学名なんだけど、この名前を聞いたことがある人もいるよな。ツツジ属のうちシャクナゲ類を英語でこう呼んでいるからね。因みに、シャクナゲを除いたツツジ類は英語でアザレア(Azarea)って呼ぶんだけど、こっちの名前の方が良く聞くよね。

さて、園内に自生しているコバノミツバツツジだけど、東日本に自生しているミツバツツジに比べて葉が小さいことから「小葉の三つ葉つつじ」っていう名前が付けられたのさ。愛知県から九州にかけての、アカマツ・コナラ林にごく普通にみられるツツジで、兵庫県の瀬戸内側では、よく目にするツツジだよね。早ければ3月下旬頃から4月中旬にかけて、ちょうどヤマザクラが開花する頃とほぼ同じ時期に咲き始めるんだ。葉のない枝先に明るい紫紅色の花をたくさん咲かせるので、遠くからでも非常に目立って、西日本では里山の春を飾る代表的な花だね。

◀つつじの小径

フラワーセンターの飯盛山の尾根の東側には、非常にたくさん自生していて、ほとんどコバノミツバツツジだけでできた、ちょっとした花のトンネルがあるんだ。このトンネルを含めて「つつじの小径」って呼んでいて、なかなかの見物なんだぞ。でも、ちょっと山道を登らないといけないので、あまり知られていないんだよ、勿体ないだろう?
この春は、是非この「つつじの小径」を通って、花のトンネルをくぐってみては如何かな?
◀花のトンネル

「コバノミツバツツジ」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>
www.hyogo-park.or.jp/flower-center/index.html

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。