白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

ムッシュ・フルーリ花探検 第18話 ハンゲショウ

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと夏の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。大人気のセミナーです。フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。

『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀6/27(土)②7/17(土)③8/22(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

第18話ハンゲショウ

みんなはハンゲショウという言葉を聞いたことがあるかな? えっ、聞いたことがないって? それじゃぁ話が進まないから、ハンゲショウの説明からするかな。ハンゲショウは漢字で書くと「半夏生」。半夏生とは雑節(八十八夜や土用など、五節句・二十四節気以外の、季節の移り変わりの目安となる日の総称)の一つで、かつては夏至から数えて11日目の日を当ててたんだけど、今では、天球上の黄経100度の点を太陽が通過する日となってるようだね。因みに今年は7月1日なんだってさ。

昔から半夏生は気候の変わり目として、農作業の大きな目安とされてきたようなんだ。田植えは「夏至~半夏生に入る前」に終わらせるものとされ、それを過ぎると秋の収穫が減ると言われてきたんだ。そして、この日から5日間は働くことを忌み、天から毒が降ってくるので井戸に蓋をして、この日に採った野菜も食べてはいけないと言われてたんだって。関西では、田植えした稲がタコの足のようにしっかりと大地に根付くように、タコを食べる風習があるんだぞ。

また、この頃は梅雨の末期で、昔は半夏(ハンゲ)という毒草が生える多湿で不順な頃とされていて、半夏生までに田植えを済ませた農家では、この日の天候で稲作のできを占ってたらしいんだ。半夏生という名は、このハンゲという植物にちなんで名付けられたとされているんだよ。このハンゲという植物は、今ではカラスビシャク(烏柄杓)という名で呼ばれており、サトイモ科でマムシグサやウラシマソウが属するテンナンショウ属に近い仲間で、その球根は生薬にもなるんだよ。
 カラスビシャク(ハンゲ)

さて、そろそろ本題に入るとするかな。ところで、みんなはハンゲショウという植物は知っているかな? えっ、それも知らないって? ではあらためて、ちょうど半夏生の頃になるとフラワーセンターの水路沿いの湿地でハンゲショウが最盛期を迎えるんだ。ハンゲショウは、その頃になると、それまで緑一色だった葉のうち、花のついている先端部分の2~3枚が真っ白に変わってしまうことから、ハンゲショウと呼ばれるようになったんだ。
 ハンゲショウの花

ハンゲショウは、ドクダミ科に属する宿根草で、日本の本州以南と朝鮮半島、中国、さらにはフィリピンなどに自生していて、日当たりのよい湿地によく群生していたんだ。ところが最近はそのような生育に適した環境が減ってきて、次第に姿を消しつつあるんだって。でも、本来は非常に丈夫な植物なので、環境さえ整えてあげれば、どんどん地下茎を伸ばして増殖していくぞ。フラワーセンターでは増えすぎて困っているくらいなんだ。
 ハンゲショウ

水辺や湿地に生える宿根草だけど、乾燥させ過ぎないようにすれば、普通の庭でも育てることができるから、みんなも一度栽培してごらん! 暑い夏の庭にさぁっと涼風が吹くよ。

 「ハンゲショウ」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

 ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。
バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

ムッシュ・フルーリ花探検 第17話 ポピー

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと春の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。
【新型コロナウィルス感染防止のため4月14日~5月6日まで臨時休業】
『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀5/16(土)②6/27(土)③7/17(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

第17話 ポピー

フラワーセンターでは、ここ数年春花壇の一員としてチューリップと相性のいいポピーを使うことが多いんだよ。ポピーって一口に言っても、たくさんの種類があるんだけど、みんなはポピーって聞くとどんなポピーを思い浮かべるんだい? シャレーポピーにアイスランドポピー、オリエンタルポピーなどなど。ポピーという名前は、分類上ケシ科ケシ属の植物の総称として使われているからねぇ。でも、日本語でケシと言えば、花を観賞するポピーではなくて、アヘンやモルヒネの原料となる、あへん法で栽培を禁止されているケシを思い出すよね。今回は、ケシ類の中でも、花を観賞するポピーに焦点を当ててみよう!

フラワーセンターでは、11月から年末にかけて、園内のあらゆる花壇にチューリップの球根を16万球も植えるんだけど、花壇に球根を植え付けたら、翌春に芽が出てくるまで、花壇の表面には何もなくなってしまうよね。、それでは冬花壇にならないので、球根を植えこんだ花壇には、冬から春にかけて花を咲かせる一年草を、球根と球根の間に植えておくんだよ。その代表がパンジーやビオラなんだけど、そればかりじゃつまらないので、最近はポピーを使うことか多いんだ。 今年は、アイスランドポピーとシャレーポピーを植えているんだけど、この冬があまりにも温かかったもんだから、本来はチューリップが終わるころから咲き始めるアイスランドポピーが、チューリップに先駆けて3月の半ばくらいからちらほらと咲き始め、今ではチューリップと共演の真っ最中。だから今年の春の花壇はすっごく華やかなんだ。(この原稿を書いているのは4月中旬)でも、本来の時期の5月にはどうなっているのかちょっと心配なんだけどね。

アイスランドポピー

観賞用のポピーの代表と言えば、まずはヒナゲシ。最近はシャレーポピーなどとハイカラな名前で呼ばれることが多くなってきたけど、我々の世代は、何といってもアグネス・チャンが歌って大ヒットした「ひなげしの花」だよね。♬丘の上ひなげしの花が~♬ってね。
ヒナゲシは、ヨーロッパ原産で、麦畑の雑草だったんだよ。特に痩せた土地を好んで生えることから、イギリスでは、畑がケシで赤く染まるのは農家の恥とされた時代があったらしいんだ。ヒナゲシは、またの名をグビジンソウ(虞美人草)とも言うんだけど、これは、中国の伝説に由来していて、秦朝末期の武将・項羽には非常に美しい虞と言う愛人がいたんだけど、項羽が劉邦に敗れて垓下に追い詰められた時に、死を覚悟した項羽が詠った垓下の歌に合わせて虞が舞ったんだ。この舞の後に彼女は自害し、彼女を葬った墓にこの花が赤く咲いたという伝説からこう呼ばれるようになったんだってさ。

ヒナゲシ(シャレーポピー)

次は、最近ヒナゲシよりもよく見かけるようになったアイスランドポピーだね。和名はシベリアヒナゲシって言うんだけど、今では全く使われていないね。もちろん原産地はシベリアから極東で、その地域の気象条件などからアイスランドポピーと名付けられたらしいけど、アイスランド共和国とは全く縁もゆかりもないんだぞ。じつは、これに非常に近い仲間が日本にも自生しているんだ。それは北海道は利尻島の利尻岳だけに自生している、小さな黄色い花をつけるリシリヒナゲシなんだ。 アイスランドポピーは、1日で散ってしまう他のケシとは違って花保ちが良く、数日間も咲き続けるんだ。花色も基本色の白や黄色に加えて、オレンジ、サーモン、ローズピンクにクリームイエローなど、カラフルな園芸品種が育成されていて、その上寒さに強くて栽培しやすいので、大変な人気なんだ。


ケシの花(栽培禁止)  ケシの果実(栽培禁止)
最後に、みんなに気を付けてもらいたいことがあるんだ。冒頭でも触れたように、ケシ類には栽培してはいけない種類があることは知っているよな。「あへん法」や「麻薬及び向精神薬取締法」により、ケシ、ハカマオニゲシ、アツミゲシの3種の栽培が禁止されているので、十分注意が必要なんだ。特にイギリスなどの海外で栽培されている園芸品種の種子を、現地で買ったり輸入したりする際には、気を付けるんだぞ。アヘンが取れるケシは、ヨーロッパでは観賞用として多様な園芸品種が普通に栽培されているからな。でも、このケシの種子にはモルヒネが含まれていないので、日本でも昔からアンパンのてっぺんに乗っかってるだろう? そう、それが芥子粒すなわちケシの種子なんだ。種子は煎ると香ばしいので、パンやケーキに振りかけたり、七味唐辛子に混ぜたりしているんだ。もちろん、種子は取り締まりの対象にはなっていないから安心してもいいが、その種を播いて発芽した途端違法になるから気を付けるようにな。

アンパンの頂部に振りかけられている芥子粒
(ケシの種子を煎ったもの)

※ フラワーセンターは、新型コロナウィルス感染防止の観点から、兵庫県の指導により4月14日~5月6日まで臨時休園しています。

「ポピー」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

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ムッシュ・フルーリ花探検 第16話 デルフィニウム

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと春の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。
(新型コロナウィルス感染防止のため4月14日~5月6日まで臨時休園)
『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
① 4/18(土)②5/16(土)③6/27(土)
(①10:00~、②③13:30~。ご参加には予約が必要です。)
*①はムッシュ・フルーリ園長の園内ガイドツアーです。
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)
【3月20日(金・祝)~4月30日(火) チューリップまつり2020開催中!!】

第16話 デルフィニウム
 最近のフラワーセンターでは、春の代名詞ともいえる花壇のチューリップが4月20日頃には終盤を迎え、ゴールデンウィークには見る影もなくなっているんだ。今回は、春の主役のチューリップが終わるころに、温室前の中央花壇でひときわ目を引くデルフィニウムについて話をしようかな。

中央花壇に植栽されたデルフィニウム
(バックの背の高いのがエラータム系の品種、手前の背の低いのが」シネンシス系の品種)

アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、ゼラニウム、デルフィニウム。っん? はるか昔に化学の授業で習った元素の周期表に出てくる名前かな? ってなことはなくて、デルフィニウムは植物の学名で、元素の名前も植物の学名も同じラテン語だから、語感が似ているだけなんだ。

デルフィニウムって植物は、ヨーロッパからアジア、北アメリカなどの高冷地や山岳地帯に約300種ほどが分布していて、ほとんどが多年草なんだ。和名はオオヒエンソウって言うんだけど、みんなはほとんど聞いたことがないだろう? デルフィニウムの方がまだ知名度が高いようだね。夏の涼しいヨーロッパでは古くから園芸植物として庭園によく植えられているんだけど、日本ではなかなか普及しないんだな。その一番の理由は、暑さに弱いってこと。さっきも言ったように、野生種は高山地帯などに自生しているので、寒さにはめっぽう強いんだけど、暑さにはからっきし弱いんだよ。特に日本のような高温多湿には耐えられなくて、梅雨の頃になると弱ってきて、夏には枯れてしまうんだ。だから、フラワーセンターでも、一年草として扱っていて、花が終わるとその株は処分して、毎年秋に種を播くようにしているんだぞ。

さて、デルフィニウムの園芸品種は、主に、デルフィニウム・エラータムというヨーロッパの高山地帯に自生する野生種から改良されたエラータム系と呼ばれる品種と、中国北部などに自生するデルフィニウム・グランディフロルムをもとに改良されたシネンシス系と呼ばれる品種があるんだ。それに最近では、エラータム系とシネンシス系を交配して作られたベラドンナ系っていう品種もあるんだぞ。

エラータム系の品種

エラータム系の品種の特徴は、背丈が1~2メートルにもなって、長さが数十センチにもなる豪華な花穂が特徴で、しかもブルー系の花色が多いので、花壇のバックに植えるとすごく映えるんだ。一方、シネンシス系の品種は草丈が低くて一重のシンプルな花をスプレー状にまばらにつけて、エラータム系の品種とは全く違った雰囲気なんだ。そして両者の交雑種であるベラドンナ系の品種は、その中間的な感じだな。

シネンシス系の品種          ベラドンナ系の品種

ところで、デルフィニウムの花は非常に豪華できれいな花なんだけど、そのきれいで鮮やかな色の花弁のように見えるものは、花弁ではなくて実はガクだってこと、知ってた? ホントの花弁は花の中心にある白いまたは黒い小さな花びら状のものなんだ。デルフィニウムは、分類上キンポウゲ科に属しているんだけど、このキンポウゲ科の植物の花はこのタイプが多くて、アネモネ、ラナンキュラス、クレマチス、クリスマスローズなどなど。 みんなが花弁だと思っているものは、すべてガク弁なんだ。アネモネやクレマチスは花弁は退化してなくなっているんだ。 また、クリスマスローズは、色のついたガク弁と雄しべの間に小さな筒状のものがあるだろう? それが花弁なんだ。どうだい、また一つ賢くなったねえ。キンポウゲ科の花が咲いていたら、よ~く観察してご覧。色のついた花びら状のガク弁の下側には、何も付いてはいないからね。(花弁の下側にはガク弁が付いてるけど、ガク弁の後ろ側には何も付いてないよ)

青いのはガク弁、白いのが花弁

 

「デルフィニウム」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。