白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

残したいコト 聞きたいコト

「肉じゃがいろいろ」

2016/3/9 

森本達平さん毎日の暮らしの中でちょっと気になったあれこれについて、若い人はどんな風に感じているの?大人の思いと若者の気持ちは違うの?そんな白井の小さな疑問に答えてくださる若者代表は森本達平さん。桂南光さんの次男さんで「イマドキの若者も捨てたもんじゃない」と白井をうならせる感性の持ち主です。

達平「材料、買ってきましたよ。」
操「ふふっ。楽しみ楽しみ、今日は肉じゃが談義。今日はそれぞれに我が家の肉じゃがを作りましょう。肉じゃがはその家の個性がいっぱいでるよね。ちなみにウチはお肉の量が多い『お肉食べるぞ』の肉じゃが。」
16.2月 残したいコト聞きたいコト④
達平「うちは主菜と副菜の間・・・、メインではないかな。」
操「そんな時のおかずは何?」
達平「う~ん、多いのは魚を焼いたのが多いですかね。ギンダラのみそ漬けとか。」
操「あ~、わかる。献立ってなぜか大体きまってくるんよね。それがおうちの味よね。私はジャガイモを入れたすき焼きに近い肉じゃが。実家の母のはこんなにすき焼きに近くはなかったけど。」
達平「ウチはこれでお腹いっぱいにしなさい・・・という肉じゃがかな。いつもたくさん作ってあって。」
16.2月 残したいコト聞きたいコト⑤
操「ほう、だしで炊くのね。」
達平「具は牛肉と玉ねぎとジャガイモだけ。操さんのは糸こんにゃくとか、ネギとか入るんですね。」
操「家に遊びに来られるお客さんに和食で肉料理で前もって作り置けるもの・・・というと、こんなすき焼きっぽい肉じゃがに。みんな大好きだしね。お肉は炒めてからをつけて一旦取り出すの。」
16.2月 残したいコト聞きたいコト⑥
達平「へぇ~。」
操「そういえば緑のおネギがおいしい時期に作りたくなるかな・・・。私はおかずを決めるときは野菜から。きれいな菊菜が目についたら酢の物、すき焼きとかね。達平君は家でもよく料理作ったりする?」
達平「いや~、一人の時は作ったりしますけど。肉じゃがを作るのはこれが初めて。」
操「へ~っ。お母さんに作り方聞いて?」
達平「一応大体こんな風に・・・ぐらいは。母も目分量で作ってるから、作り方があるのか無いのか。」
操「ちょっとお味を・・・。あ~やさしい味。おいしい!!いつも食べてるのもこんな感じ?」
達平「ハイ、いい感じにできました。」
操「最初はね、お互いの得意料理を作ろうかっていってたよね。」
達平「そうですね。でもその後、肉じゃがを指定されて「なぜ肉じゃが?」って思ってましたけど、作ってみてわかった気がします。もっともポピュラーなおかずのはずなのに、作ってみると違いがあっておもしろい。操さんのも旨そう。ほんま色々なんですね。」
操「さぁ、食べよう!! 初めまして・・・でいきなりご飯が始まることもあるでしょう。そんな時、肉じゃがの話になると「ウチのは豚です」とか「うどんを入れます」とかね、すごく盛り上がるのよ。友達の輪がふぁ~っと広がる、肉じゃがってすごい!!」
16.2月 残したいコト聞きたいコト①

「旅が教えてくれたこと」

2015/8/1 

 達平「スペインに行ってきました。サンセバスチャン、バルセロナ、その後パリに。」
操「へ~っ。何が一番面白かった?」
達平「バルですかねぇ。サンセバスチャンの旧市街はバルがたくさんあって、リタイアしたおじさんたちが陽気に昼間っからでも仲間と盛り上がっていて。僕たちにも気軽に声をかけてくれたり。一緒に行った友人がスペイン語が話せたので。」
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操「言葉が通じると旅は豊かになるよね。」
達平「バルは圧倒的に男性が多いですよね。あの店にいくとあいつが居る、みたいなノリで。」
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操「女の人はどこに行ってるんだろう、ふふっ。タパス、おいしいよね。ちょっとつまんで次の店へ・・・って感じ。飲んだり食べたりがみんな大好き。日本でもこの前、神戸のおしゃれなパン屋さんでおじさんが昼間から一人で、和食に合うようなパンとワインを自然体で楽しんでいてね。あ、なんか新しい・・って、ちょっと嬉しいなぁ~。」
達平「僕はパンがあまり好きではないんですけど、逆にお味噌汁にあうようなパンがあったら食べてみたいなとずっと思ってるんです。」
操「それも新しい!ねぇ、新しい食べ方が自分の新しい文化を作ってるって思わない?」
達平「食べることが好きなので、旅先でおいしいものや、それを楽しむ独自のスタイルに出会うといろんなイメージが湧きますね。」
操「旅って、いい気づきをくれるよね。」
達平「パリでは『イデム』というリトグラフの工房へ。歴史的にも価値のある昔のままの建物に、田舎に残っていた古いリトグラフの機械が持ち込まれていて、2階には作家さんの作業スペースがあって。」
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操「私もそこ行ったことある。素敵なところよね。」
達平「その場にいるだけで、何か自分も作りたくなるような、そんな思いがしてくるところでした。」
操「わかるわ。その空気。描ける人は描きたくなるでしょうね。達平君は描くの?」
達平「美術や技術工芸は学生時代、得意だったから表現することは嫌いではないんです。むしろ好きかも。イデムではそのことを思い出させてもらったかな。」
操「わぁ、よかったねぇ~。それも旅の収穫やね。」

「流通が進歩すると・・・」

2015/4/20 

(前回に続き)
操「ほう、最近は日本にいて手に入らない食材って少なくなったのにね」
達平「そうなんです、そこで思うこともあって・・・」
操「なになに?」
達平「そのおかげで外国に行かなくても、現地で腕を認められたシェフが現地の食材を使って本場のおいしさを日本のレストランで提供してくれるようになって、それを食べられるようになりましたよね」
操「ほんとに流通の進歩ってすごいなってつくづく思うわ。」
達平「そうやってフランス料理、イタリア料理、中華料理っていうようにカテゴライズされ本物の味が競いあう中で、他の国の料理に負けないように、日本料理もまたその技が磨かれていくんじゃないかと思っているんです。今よりは狭く深く・・・という感じかも知れませんけど。」
操「ふ~ん、なるほど。」
達平「操さんは消えゆく和の食材のこと心配されていましたよね。でも和食のおいしさのために絶対に必要な食材なら、なくならないと思いますし、消えてしまったら思考錯誤して代わりの食材を探すと思うんです。」
操「流通の進歩がそこでも役立つかも。」
達平「そうです。昭和から平成にかけて消えゆく食材は確かにありますが、江戸から明治にもそんな食材がなかったとは言えない。その時にも料理人は工夫したと思うんです。で、新しいものを試したりもしたと。」
操「なんだか希望が湧いてきた」
達平「本物を大切にする気持ちは、そこに生きていると思うんです。」
15.4月 残したいコト聞きたいコト 6話 写真