白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

残したいコト 聞きたいコト

「どこまでが和食?」

2015/3/12 

達平「どこまでが和食でどこからが和食でないかというのが、ぼくの中では実はよくわかってないんです」
操「私たちが日頃食べてるおかずのこと?」
達平「はい、カレーライスとかもそうでしょ。日本のスタイルが確立されていて、インドのカレーとはもう別物ですよね。日本にしかなくて、カレーうどんとかにもなって。日本で料理として浸透するうちに、日本独自のものになっているものは和食といってもいいのかな」
操「ふんふん、ハンバーグやグラタンも私の母が作ってくれた時は、外国から来たものとして作ってくれたけど、私が自分の子供に作る頃になると家庭の味になっていたよね。」
達平「そうなんです。」
操「う~ん、家のごはんとしてお母さんから子供へと食べつがれているかどうかをポイントに考えると、和食の裾野は広~くなるね。昔は香辛料や食材が揃わなくて、日本の食材や調味料を代用したりするところから入っていたでしょ。外国から入ってきたレシピを、日本の食材で作れるようにアレンジして、日本人の口に合うように変えてきたのよね。」
達平「その対応力というか、応用力というものも日本の味のひとつと言えると思いますね。例を挙げるとしたら、今中国人の観光客も『日本のラーメン』は食べようと思うらしいんです。日本でしか食べられらない味って考えると、和食の広がり方ってすごいなと思うんです。」
操「ほう、最近は日本にいて手に入らない食材って少なくなったのにね」
達平「そうなんです、そこで思うこともあって・・・」  次回に続く
15.3月 残したいコト聞きたいコト 5話 写真

第4回 和食のこれから

2015/1/25 

操「今食べてるおいしいものの生産者は高齢者の割合が高く、手間がかかる割に儲からないので、今作っている人がいなくなると、作り手がいなくなり、食材自体が手に入らなくなることは時間の問題。若い料理人の多くはパティシエを目指し、和食を志す人は減っているし。家庭の食卓でも和食が中心とは言えなくなって、昔ながらの和食のおかずも若い人になじみが薄くなっているでしょ?達平君は食べることが好きなご両親がいて、和食でも本当においしいものを口にする機会に恵まれた環境にあって、私ともよく話をしたりして食についての知識が豊富だけど、今の若い人たちの本当のところはどうなのかな。
15.1月②
コンビニやファストフード、安い居酒屋しか知らない若者は、本当の和食の美味しさに感動する機会を持たない人もたくさんいるのでは?特に男性が心配。男性は先々社会的なお付き合いで店で食事をする機会も増えるはず。食の感性は日々の食事で育まれるものだから、このままだと本物の和食をおいしいと思う人がいなくなる・・・そのことが心配。おいしいものを知って、食べて支えなければ、いいお店もいいものを作る人もいなくなると思うよ。今の若い人たちはそのことをどんな風に感じたり、考えたりしているのかな。」

達平「みさおさんの心配している通り、本当においしいと思えるものに出会う機会は減っているようでしょう。でもそれは、和食だけに限られたことではないと思います。
よく感じることは、現代の日本では、ある程度おいしい多種多様なものが安い値段で提供されていていて、それがどこででも食べることができることがあります。便利な環境があって、なんでも手に入る生活しやすい状況です。でも便利になりすぎたからこそ出てきてる問題が、こういうことなんだと思います。特に和食においては、なんでも手に入る生活だと、季節や行事の意識が薄れますし、ある程度の他ジャンルのものがありふれてわざわざ求める必要もなくなってなじみも薄くなっているっていると感じるのかもしれません。そして知らないことをわざわざ志す人は、いなくなっていくという流れになっているのではないでしょうか。
もう一つ思うのは、“食べる”ことは、ひとつの娯楽だと思うんです。そう思うと、現代にはいろいろな娯楽があふれかえっているので、“食べる”という娯楽に注力する割合が減っている。でもその分注力する人々は、多大に力を注ぎこむことができるように思います。
だから、和食へのなじみが薄れているのではなくて、日本全体の食文化レベルに厚みが増しているから、目立たなくなっているんじゃないですかね。本当に興味がないとか、薄れているようなら、こんなに毎週・毎月特集が組まれたり、テレビで放映されたりしないと思います。
そして今は日本の食が、観光目的にも置かれていますよね。大事な輸出産業になっていて、和食は特に日本人だけでなく、海外の方々にも取り上げられているでしょう。そうして拡がれば、日本にも逆輸入となって、興味を持つ人が増えると思います。
またみさおさんは、そもそも「本当の和食とは」ってどういうものだと思いますか?ぼくは、明確な定義なんてできないと思うんです。食事も生き物だと思うので、いつも変化しているんです。でもイメージはそれぞれ違うものをもっていて、それを共有できることが大事なことだと思います。」
15.1月①

第3回 「時の流れは・・・」

2014/12/4 

tokinonagareha「家業としてのれんを守ることって大変よね。受け継いだ技を忠実に守っても、買ってくれる人がいないと続かないし。」
「老舗と言われる店のものは、少し割高だけど良いものが多いと思うんです。でも、なぜその値段になるのかを知っていないと、簡単には買わないし、買えないですよね。」
「そうね。でもお菓子だと年々パッケージも洗練されて、それも今は大切な商品価値になっていることもあるよね。」
「パッケージを一新して、売上が上がることも確かにありますよね。けど古いものをそのままずっと変わらず続けることも、ホントは変わっているっていうことらしいですよ」
「どういうこと?」
「どんな人も物も、ゆるやかな時代の流れの中に存在しているから、時が流れても変わらないということは、時の流れと同じ速さで少しずつ変わっている・・・だからこそ変わらず存在できる。全く変わらなかったら、時の流れとともに淘汰されてしまって存在できないっていうことなんですよ」
「ははぁ、なるほど」
「僕も本で読んだんですけど。」
「老舗の職人やマイスターと言われる人たちは、守るために少しずつ変わっている・・・本人も気づいてないかも」
「そうですね。僕らもそういう視点を持てば、“古い”と感じていた親やその世代の人たちの考えや思いを理解しやすくなるんかなぁ・・・って話してて思いました。」
「ほんとやねぇ」