白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操発スタジオ*トピックス

「食から学ぶ震災の記録」を作りました

2016/6/1 

食は人をつなぎ、食卓は心を近づける・・・。ずーっとそう思ってきました。さきの阪神淡路大震災から22年。気がつけば、あの時今の私と同じくらいの年齢だった方の多くは亡くなっています。あっという間に月日は流れ、あの怖かった経験も消えようとしています。
食べるものを作ることを仕事にしてきたことはこの本を手掛けたことと無縁ではありません。相手を思い、食材を料理し、食卓で分かち合って食べるからこそ、人の痛みが伝わり、頑張ってこられた様子を知ることができました。どうやら人は、心からほっとし、緊張が解けると心に溜めてきた思いをつぶやき、又その相手の気持ちを受け止める力が湧いてくるのかも知れません。
私はいつの日からか、いろんな方々と食事を共にする中で、その方の震災の記憶を忘れない内に書きとめておきたいと思うようになりました。次の世代がもし同じ様な災
害に見舞われたとき、この時の記憶がひとつでも心に残っていたらそれは何かの助けになるはず。助ける人になるか、助けられる人になるかは分かりません。どちらになってもあの震災から学んだ経験がひとつでも生かされることを願っています。食べ物を切り口に解いていくと、いろんな事が見えてきました。
スタジオトピックス16.5.31震災本表紙②
一般の書店に並べて多くの人に読んでいただくことも考えましたが、すべてを非売品にし、兵庫県、神戸市を通して学校や図書館、公共施設に寄贈しようと決めました。嬉しいことに神戸市立中央図書館で本をPDF化し管理していただけることになり、今準備中です。より多くの方に読んでもらえるよう、中央図書館のホームページからダウンロードが可能になる予定です。
阪神淡路大震災以降、日本各地で次々と地震災害が頻発しています。どうぞこの本が次の世代の何かの役の立つようにと祈ってやみません。
たくさんの感謝をこめて
白井操

●●NEWS●●
6月9日、神戸市中央図書館HPからPDFデータで本をご覧いただけるようになりました。http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/top/info_20160528.html   (神戸市立中央図書館1号館2階「神戸ふるさと文庫 震災関連資料コーナーで閲覧できます)

「食から学ぶ震災の記録」目次PDF ←クリックしてください。別ウィンドウで開きます。

 

☆神戸市内の配布先:市立学校園、区図書館、区役所、地域福祉センター等

☆神戸市立中央図書館 TEL:078-371-3351
開館時間:9時15分~20時(火曜~土曜)、(日曜は18時まで)
休館日:月曜日 (5/30~6/9まで蔵書整理のため休館)
http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/top/

 

☆兵庫県内配布先:市町防災部局、市町立小中学校、県立・市町立図書館等

☆兵庫県立図書館 TEL:078-918-3366
開館時間:9時30分~18時
休館日:毎週月曜日 毎月第3木曜日
(注)2016.8.31まで建替えのため休館。2016.9.1~仮設図書館で開館。http://www.library.pref.hyogo.jp/news/28taishinkouji/28taishin_kyukan.html

 

春を呼ぶメカブ

2016/3/6 

先月のNHKラジオ「関西土曜ほっとタイム」では、今がおいしい旬の食材をご紹介しました。毎年春の兆しが感じられるころになると、メカブが待ち遠しくなります。10日程前、魚屋さんの店先に並んでいたのは、明石の漁港で揚がった淡路周辺に育つメカブ。その頃はまだ小さかったのですが、みるまに大きくなって、もう立派な芽かぶが出回っています。
収穫の手間がかかる割に値段の安いメカブは、漁師さんにとってはあまりうれしくないモノとか。けれどやがて暑くなる季節に備え、夏バテしない強い体を作るのは今。春は海では芽かぶなど海藻、山では山菜とありがたい自然の恵みがいっぱい。
スタジオトピックス16.3.3めかぶ①
スタジオトピックス16.3.3めかぶ②
ラジオでは、近頃流行りのわかめうどんなど海藻麺をゆがいて皿に敷き、その上に、ゆがいてフードプロセッサーにかけた芽かぶ、色がきれいな新キャベツ、スナップエンドウなどを乗せ、トマトのみじん切りにオリーブオイル、塩こしょうを合わせたものを添えて旬を味わう麺を作りました。お好みで生卵もどうぞ。めんつゆをかけて出来上がり。さあ春を召し上がれ~。

○詳しいレシピはこちら
NHKラジオ 関西土曜ほっとタイムHP
http://www4.nhk.or.jp/kansaihot/156/

食から学ぶ震災の記録

2015/12/26 

秋から冬の始まりは暖かい日が続き、ゆっくり師走が過ぎました。朝起きたら寒くて紅葉がびっくりするくらい紅くなっていた!…ということはなかったけれど、それなりに紅くなって地面を紅く染めました。山に食べ物があるからでしょうか、ひどく鳥に食べられることもなく、南天や千両、万両の赤い実が枝に残っています。新しい年の始まりにもきれいな実が役に立ちそうです。
スタジオトピックス15.12.21②スタジオトピックス15.12.21①

震災から20年、自分に何ができるだろうと、ずーっと考えていました。当時47歳の私は67歳になりました。振り返ってみたらまわりで働いている友人の多くは組織を卒業し趣味三昧の毎日。「みさをちゃんはいつまで働くの?」と聞いてきます。志がわいてくる内は続けようかな・・・と思ったり、いやいやそれは自分が決めることではないのか・・・と考えたり。そんな中、食から学んだ震災の記録を本にしようと思いつきました。次の世代にも資料として役立ててもらえるよう、学校や図書館、公民館などに置いていただく本です。一般に販売はしません。
取材を通して、神戸市、兵庫県、行政の方たちの大変なご苦労が見えてきました。あの恐ろしい揺れの後、毎日大きな音を立てて神戸の空を飛んでいたヘリコプター。当時新聞の連載をしていたこともあり、報道の方たちが取材に来られ、被災した市民のつらい写真を撮っておられることに何となく違和感を覚えつつも、彼らの痛みと使命感も分からなくもなく、複雑な思いで見上げていました。ところが当時を知る神戸市の方から、道路の使用がガレキの運搬や医療用の車に限られていた震災直後、東京や各地から食料を運んでいたのがあのヘリコプターだったと教えられ、今になってなるほど・・・とその事実を知ったのです。
食べたら出すは当然のこと。トイレは最大のテーマです。避難所でトイレは二日と持ちませんでした。生活環境を整えることが健康の環境を整えることと、各地の避難所をめぐりトイレ掃除を率先してされたのは看護士さんたちだったとか・・・。このことをきっかけにトイレを研究され、現在は東京で活躍されている元行政マンにもお話を伺うことができました。水を備蓄することと同じくらい大切なことは簡易トイレと普段の食べ物の蓄え。その日暮らしはだめですね。今まだ本作りは真っ最中です。また改めて報告を。
食を学びのきっかけにすると分かりやすく暮らしのヒントも見えてきます。経験したから分かったこと、そこから生まれた知恵は、伝え継ぐことで、どこかの誰かの力になると思っています。

ちなみに今日へぇ~と納得した食の学びをひとつ。むいたリンゴにほんの少しゆずの絞り汁をかけておくと時間がたっても茶色くなりません。塩水につけたり、レモン汁をかけるよりおいしいですよ。穏やかな今日に感謝して。