京都「瓢亭」14代目当主高橋英一さんをお招きして
2010/1/8
2010年最初のミニセミナーは京都「瓢亭」14代目当主高橋英一さんをお招きして新春特別企画で始まりました。かねてより親しくしていただいてる白井より「この方がいらっしゃるだけでどんな席にも風格の華を添えられる方です」とご紹介。近頃はJRのポスターでもおなじみの高橋さんは「車両にズラリと私の顔が並んでいたり、駅に大きなポスターがあったりします。どうぞよろしくお願いします」とユーモアたっぷりに自己紹介され会場は和やかな雰囲気に。
今回の試食は「鯛の細造り」と「吸い物」。モニターの手先の動きや丁寧で無駄のない所作に目が自然と引き付けられます。「鯛の細造り」は細く切った鯛に塩を振り昆布で締めたものにわさびと岩海苔、芽甘草を添え、レモンやだいだい、かぼすなどを絞った割り出汁を張って。「吸い物」には貝柱の真丈や生麩、鶯菜に黄ゆずが添えられ、どちらも試食とは思えない五感を満たす瓢亭さんの味です。
高橋さんは料理人を目指す学生さんや外国人シェフにも広く料理を教えておられる先生でもあります。「どこへいっても1時間半ほどかけて必ずだしは自分で引きます。」と代々伝わっただしを大切にされています。瓢亭さんで使っているのは利尻産の堅い昆布とマグロ節、これは血合いのない極上のものなのだとか。「お家では高い素材にこだわるのではなく、色々試して口にあうものを探してください」とアドバイス。ここで高橋さんから教わっただしの取り方をご紹介します。水でサッと洗った昆布を65~70℃の温度で1時間くらいかけて煮だし、引き上げます。80℃くらいに煮立たせたら鰹節を入れ、火を弱め箸で鍋に静かに沈めます。灰汁を引いて火を止め、鰹節が沈んだらネルでこします。「おだしをきちんと取ると、少々失敗してもおいしくできます。ペットボトルなどで保存もできますし、子供が味音痴になりません。」高橋さんが京都の小学校を回られた時、小学生は昆布だしの旨味が分かったのに対し、フランス人はシェフでも昆布だしの旨味が分からなかったそうです。日本人の繊細な味覚はだしが育んでいたことを改めて教えていただきました。
ミシュランの三つ星についておたずねすると「二年前に打診があった時からウチには合わないと言い続けてきましたが、もうそう言うほうがややこしいことになってきたので・・・」と、また200年の伝統の重みについては「一人で200年やってきたのではなく、先代から引き継いだものを、悪くしないように次に引き継ぐ、ランナーの一人やと思っています」と、語りのすべてにおいて自然体で飾らないお人柄がうかがわれます。時を超え何代も引き継がれた、きちんとした柔らかな高橋先生の気配・・・、素晴らしい料理とともにいただきました。最後になりましたがこの豊かなミニセミナーをお正月特別企画として支えてくださった西宮阪急さんに心から感謝いたします。今年もミニセミナーは素敵なスタート切りました。よろしくお願いいたします。