白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

アートフラワー作家 佐藤悦枝さんをお迎えして

2013/11/22 

366nishi-gardenセミナーが始まる前から、お客様は会場に置かれたアートフラワーの周りでその繊細で可憐な美しさにうっとり。淡いグリーンの細くて長い糸を、大きくふわふわと無造作に丸くからめられたところに、咲き誇るようにあしらわれているのは、様々な種類の数え切れないほどの花々。色とりどりの小花はよく見ないと本物と間違えそうなほど。「野の花のようで、手を差し伸べてしまいそう」と口々に。今回はご自身で染めた布で花を作られるアートフラワー作家の佐藤悦枝さんをゲストにお迎えしました。9月のパリの個展も盛況で長年の夢を叶えられたばかり。
「震災への思いを込めた白い花の作品に感動したのがそもそもの出会いでしたね。」と白井。佐藤さんの手がけられる布花は、白い布を染め、花びら一枚一枚からすべて手作り。「このグリーンの糸もドンゴロスの布から引き抜いた麻糸を染めたものです。高校生の時、トアロードの帽子屋さんで出会った布花を見て、習い始めてから、どこにも売っていない、自分だけのものを作るのが好きで、ずっと花を作ってきました。いろんなものがつくれるんですよ」ご主人に先立たれた友人が捨てられずに取っておられたワイシャツで作った白いコサージュ、新聞紙で作った花、小さな作品は会場で回覧され、手のひらの作品の世界にお客様もひととき感動を。
大きな夢を叶える力の源は?と白井に聞かれ、「これをしていると幸せと感じる時間、それが手仕事の良さ。何かしたいと思った時に行動にうつせることも大切ですね。30代の頃、人生につまずいたことを契機に、人を大切にすることを何より大事に思うようになりました。今回もたくさんの思いや支えを頂いたからこそ」と笑顔で。
「誰かを応援したり、何かをしてあげるとき、私じゃなくて父がすることだからってよく言われますよね」と白井。「苦労を乗り越えやっと事業に成功した父が私に残してくれたものですることなので。私は神戸育ちですが、父は台湾出身で、どこででも生きていける華僑の精神を持った人。人から気持ちをもらえる人になりなさいと良く言われました。物を頂いて物で返すことは簡単ですが、気持ちを頂くということは、それを忘れないということが大切です。それは当たり前ではない、そこにあぐらをかくようではいけない、父の背中が教えてくれたと思います。小さい頃はとにかく厳しかったのですが、今になって怒ることの大変さがわかります。友達ともいいけんかができることって大切だと思うんです。」「私たちって分かってくれてるだろうっていう小さなことでもあえて言葉にして表現するものね」手仕事で伝わることも、言葉で伝わることもどちらも大切…とうなずき合う二人。
「夢が実現した今、これを機にまた誰かに教えることを始めようかなという気持ちになってきました。花をつくることで今の自分があると、花を通じての出会いが私を育ててくれたと思います。」と佐藤さん。家事以外に自分の時間や世界を持つことの豊かさ、その世界を極めることの深さ、辛いときには自分を癒し支えてくれる手仕事。会場にも手仕事が好きなお客様がたくさんおられ、ご自身に重ねて頷かれたり、目をうるませたりとその素晴らしさを分かち合ったひとときでした。(文:土田)

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