第41話 彼岸花のなぜ?その1「なぜ、お彼岸に咲くの?」
秋の彼岸頃になってくると、日本のあちこちから彼岸花の便りが届いてくるよね。花好きではない人でも、彼岸花を知らない人はいないほど、あの深紅の花は日本人の脳裏に染みこんでいるよね。
さて、この彼岸花、毎年同じように秋の彼岸、すなわち9月20日前後に花を咲かせるんだよ。そしてその頃には,ちょうど稲穂が実り黄色く垂れることから,田んぼの畦に咲く深紅の彼岸花と黄金の稲穂の波のコントラストが美しく、「日本の原風景」とか何とか言って、あちこちに写真が掲載されているよね。
ヒガンバナは、みんながよく知っているように球根植物で、秋に花が咲いた後に葉が出てきて、冬の間は青々としていて、晩春には枯れてしまうよね。そうなんだ、春先に芽を出して花を咲かせ、夏にかけて生育し、秋の終わりには葉を落として冬に休眠するという、普通の植物とは全く正反対の生活パターンを持っているんだよ。でもこれは、ヒガンバナの巧妙な生き残り戦略なんだぞ。この戦略については、次回にに詳しく説明するからお楽しみにな!
さっき言ったように、ヒガンバナは夏の間は地下の球根だけになり、秋の来るのを待ち続けているんだけど、何もしないでじっと休んでいるわけじゃなく、球根の中では、着々と秋に咲かせる花の準備をしているんだぞ。春も盛りを過ぎ、気温がどんどん上がってくるようになると、地上の葉はその用を終えて枯れる準備を始めるんだけど、球根内部では次の花を咲かせるための準備がもう始まっているんだ。その準備も8月の中ばには完了し、いつでも花を咲かせることができるような状態になっているんだぞ。7月~8月の長く続いた寝苦しい熱帯夜も終わり、最低気温(地温)が20℃前後にまで下がってくると、待ってましたとばかりに一斉に球根内部から花茎が伸び始め、あっという間に地上30~50cmまで伸びて開花するんだ。
関西では、最低気温が20度前後にまで下がってくるのがちょうど秋のお彼岸の頃なので、ヒガンバナはその名の如くお彼岸に咲くことになるんだね。年によっては、9月上旬に急に涼しくなるときがあるけど、そんなときには早く咲いてしまうこともあるんだよ。だから、決してお彼岸に合わせて咲いているんじゃないってことが分かったかな!
でも、最近の地球温暖化により、お彼岸を過ぎても暑い日が続き、ヒガンバナが10月になってから咲くような年もあるから、季節感がおかしくなってくるね。