小篠綾子さんの思い出
2011/11/1
朝の連続ドラマ「カーネーション」を観るたび、思い出すのはヒロインのモデル小篠綾子さんの元気なお姿。WHOのシンポジウムのパネリストとして同席させていただいた時、ロビーで会場を探しておられるご様子に「はじめまして、ご一緒しましょうか」と声をかけさせていただいたのは、先生が87歳のこと。「あー、あんた白井さん?コシノです」と気さくなお返事から始まり、92歳で亡くなられるまで、ご一緒させていただく機会がちょこちょこあり、私はコシノのお母ちゃんと呼ばせていただくようになりました。
いつもエネルギッシュで前向きだった先生の思い出は『NHKウィークリーステラ(関西版)』に、毎月1回連載しているエッセイでも、書かせていただきました。今回はその中から、少し抜粋してご紹介させていただきます。
ある日「白井さん、汚れてもエエ格好しておいで、肉食べに行こ」とお電話をいただきました。「その店はな、ほんまに汚いけど、最高にエエ肉出すから楽しみにしといて・・・」。「あんた、さっさと食べな肉に悪いで。さっと焼いてさっと食べる」。「ビール飲んだらお酒にしよか」。こうして書いていると、お母ちゃんのいろんな声が思い出されます。 だんじりの時はお祭りに合わせてふ化後130日目の鶏を調達し、おいしい鶏すきに。そしてお母ちゃん特製の自慢の卵焼き・・・。ぬか漬けのきゅうりや水なすのおいしかったこと。中でも一番おいしい思い出はシャーベット状に冷やした日本酒を、人にもすすめ、自分もくっと飲まれるお母ちゃんの姿でした。
色んなところへ連れていっていただきました。何しろスケジュール帳はいつも一杯で、いつお会いしても前向きで、愚痴っぽくない生き方は素敵でした。
過日の偲ぶ会で、次女のコシノジュンコさんが『夢は持ち続けたらきっと叶う』とよく口にされていたお母ちゃんの面白いお話をしてくださいました。NHKの朝ドラが大好きなお母ちゃんは、NHKの集金の人が来るたびに「私この番組に出たいねんけど、あんたからも偉いさんに頼んでくれへんか」と話しておられたそうです。今頃天国から「そうや、夢は持ち続けなあかんで。」と言われてると思います。
(NHKウィークリーステラ(関西版)11月11日号 「白井操のパステルライフ」より)
白井 操