白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

セージとサルビア

♫ Are you going to Scarborough Fair,
Parsley, sage, rosemary and thyme, ♬

予想どおり、みんなしっかりと口ずさんでるね。僕と同年代?のみんななら、この英文を見ただけでついつい口ずさんでしまうよね。そう、これは、サイモン&ガーファンクルが大ヒットさせたイングランド民謡「スカボローフェア」の歌い出しの歌詞なんだ。
この歌詞に出てくる、パセリ、セージ、ローズマリー、それにタイムは、欧米でよく使われるハーブなんだよね。今回はこの中のセージにスポットを当ててみようか。
英語でセージといえば、数多くの種類があるセージの総称で、みんながよく知っている普通のセージはコモンセージと呼ばれてるんだ。このコモンセージの学名は、Salvia officinalis で、サルビア・オフィキナリスと読むんだけど、属名のSalviaは、ラテン語で「治癒する」という意味のsalvereという単語に由来していて、大昔から薬草として使われていたようなんだ。
ヨーロッパでは、セージは古くから健康の象徴として重宝され、「セージの育つ家に病人なし」など、セージにまつわる諺や、言い伝えがたくさんあるんだ。
ところで、最近は、ガーデニングに花が綺麗な多くの種類のセージが使われるようになったけど、サルビアと呼ばれているのは、あの一般的な赤いサルビアとブルーサルビアと呼ばれているサルビア・ファリナセアくらいで、その他は、アメジストセージやチェリーセージ、パイナップルセージなど、○○セージと呼ばれてるよね。はっきりとは言えないけど、どうやら多年生のサルビアを○○セージと読んでいるような気がするな。それともセージという名前の方が女性受けするのかな?
セージとサルビア①サルビアスプレンデスセージとサルビア②サルビアファリナセア
サルビアスプレンデス         サルビアファリナセア

さて、サルビアの仲間は日本の野山にも自生しているのを知っているかい?
Salvia属は和名ではでアキギリ属と言い、代表種のアキギリやアキノタムラソウなど10種ほどが自生しているんだけど、ちょっと意外だったかな。秋風が吹く頃に里山を歩くと出会えるかもしれないぞ。
最後に、セージはソーセージの語源になってとも言われてるんだぞ。英語の雌豚sowとセージsageでソーセージになったとか。腸詰め製品には欠かせないセージはこんなところにも名を残しているんだね。
セージとサルビア③コモンセージセージとサルビア④コモンセージの花
コモンセージ             コモンセージの花

セージとサルビア⑤チェリーセージセージとサルビア⑥メドウセージ
チェリーセージ        メドウセージ

セージとサルビア⑦アメジストセージ
アメジストセージ

蓮と睡蓮

7月にもなると、水辺には蓮や睡蓮の花を見かけるようになるんだけど、蓮と睡蓮の区別がつかない人が意外と多いみたいなんだ。みんなはしっかりと区別がつくよね! えっ、よく分からないって? 仏教においては蓮の花も睡蓮の花も区別せず、蓮華として扱われているからなぁ、しょうがないかなぁ。じゃあ解説するから、しっかりと聞いておくんだよ。
まず、蓮だけど、ハスという植物はインド亜大陸が原産で、みんなもよく知っているとおり、池や田んぼの水中の泥の中に蓮根という長い地下茎(根茎)を這わしているよね。その蓮根の節々から葉柄や花茎を伸ばして水上に突き出し、丸い大きな葉や30cm近くもあるような大きな花を咲かせるんだ。
蓮と睡蓮①ハスの花ハスの花

一方、睡蓮だけど、スイレンという植物は東アフリカから東南アジアを経て日本にまで分布する植物で、熱帯性のものと温帯性のものが有るんだよ。日本にはヒツジグサっていう種類が自生しているんだ。スイレンも水中の泥の中で育つんだけど、ハスのように長い根茎ではなくて、太短い塊茎から葉や花を出すんだ。葉は基本的に水面に浮いており、ハスのように水上に大きく突き出すことはないんだけど、花は温帯性のものは水面上に、熱帯性のものは水上に少し突き出して咲かせるんだよ。
蓮と睡蓮⑤温帯性スイレンの花蓮と睡蓮⑥熱帯性スイレンの花
温帯性スイレンの花(左)と熱帯性スイレンの花(右)

スイレンの葉は、円形または楕円形で、一カ所だけ中心部の葉柄の付け根まで切れ込みが有り、表面は艶があって水をはじくことはないんだね。一方、ハスの葉は、ほぼ円形で切れ込みはなく、春先に出るもの以外は、大きく水上に突き出してるよね。表面は艶がなく白い粉をふいたような状態で、水を良くはじき、葉の上を水玉がころころと転がってるのをよく見かけるよね。
蓮と睡蓮⑦スイレンの葉蓮と睡蓮③ハスの葉の上の水玉
スイレンの葉(左)とハスの葉の上の水玉(右)

どうだい、ハスとスイレンて、水中で育つという共通点はあるけど、全然違うだろう? じゃあ、花を比べてみようか。ハスの花びらは舟形で、これを形取って作られた、ラーメンや中華料理に使われる食器を「れんげ(蓮華)」って言うよね。しかも、蓮の花は咲き終わると、花びらが散ってしまい、中心部に花托部分が残されて、それが蜂の巣に似ているから「蜂巣(ハチス)」と呼ばれるようになり、それが訛ってハスになったんだよ。
蓮と睡蓮②ハスの花托スの花托

スイレンの花を見てみると、花びらは細長い三角形で、花が終わると、花びらと萼を閉じて水中に潜っていくんだよ。スイレンの花は日中開いて夜には閉じるというのを3回くらい繰り返すんだけど、それが夜には眠っているように見えることから、睡る蓮に似た花でスイレンになったんだね。でも、実はね、ハスの花も日中に開いて夜に閉じるという動きを2~3日繰り返してから散るんだけどね。
さあ、これでもう蓮と睡蓮の区別がつかないなんて言わせないぞ! あとは現地で現物をよく観察して、しっかりと目に焼き付けておくんだな。

最後にレンコンの話を少ししてみようか。みんなはレンコンは好きかな?
あのシャキシャキ感がたまらなくって、僕は大好きだよ。レンコンを輪切りにすると、穴がいくつか空いているけど、穴の数はほぼ決まっているのを知っているかい? ごく小さな穴を除くと、ほぼ10個前後なんだけど、もちろん例外もあるよ。この穴は葉から取り入れた酸素を通す通気口の役目を果たしているんだよ。水中の泥の中では、酸素を取り入れることはできないからね。
ところで、今の説明で葉の表面からレンコンまで穴がつながっていることに気づいたかな? 昔中国では、ハスの葉に入れたお酒を葉柄から吸い込んで飲むということをしていたそうな。これは日本にも伝わっていて、その形から象鼻杯(ぞうびはい)といわれているんだよ。みんなも、ハスの葉が手には入ったら一度試してみると良いよ。
蓮と睡蓮④レンコンの穴レンコンの穴

くちなしの花

この時期、しとしとと降り続く雨やどんよりとした梅雨空が続くと気分も滅入ってくるけど、雨上がりに、どこからともなく馥郁と漂ってくる強い甘い香りに、僕は気分が癒やされるんだよね。そう、その香りの正体はクチナシの花!
くちなしの花①野生のクチナシの花野生のクチナシの花
くちなしの花③八重咲の花八重咲の花
クチナシは西南日本に自生する常緑低木で、世界に誇りうる香りの良い花を咲かせる樹木なんだよ。ところで、クチナシはなぜクチナシという名前になったのか知ってるかい? クチナシの白い花が終わるともちろん実が成るんだけど、それは赤く熟しても開いて種を出すことがないんだね。それで、「口無し」と呼ばれるようになったとか・・・・・。ところで、将棋盤や碁盤の脚はクチナシの実をかたどっていて、「勝負には口出し無用」を意味しているんだってさ!知っていたかい?

くちなしの花②クチナシの実クチナシの実
赤く熟した実は、染料や食品の着色料になるんだけど、栗きんとんやたくあん漬けなどを鮮やかに黄色く染めるために使われてるんだよ。この黄色い色素はクロシンと呼ばれていて、あのサフランの色素の成分でもあるんだ。この実は乾燥させると、日本薬局方で「山梔子(さんしし)」と呼ばれる生薬になり、煎じて黄疸などに使われるんだ。
クチナシは英語ではガーデニアって呼ばれていて、日本でも良く耳にするよね。ガーデニアって言う名前は、植物の世界共通の名前であるクチナシの学名がGardenia jasminoides なので、そこから来てるんだけど、元々は,スコットランド人の植物学者Garden氏に因んでるんだよ。
さてさて、このクチナシの香りはもちろん香水にもなっていて、色々なメーカーから売り出されているらしいね。でも、クチナシの花の香りには似ているんだけど、似て非なるものなんだって(僕は香水の香りを嗅いだことがないんだけどね)。それは、クチナシの花から直接精油を採集しているんじゃなくて、人工的に合成した香りを使っているからかなぁ。

くちなしの花④オオスカシバの幼虫くちなしの花⑤オオスカシバ成虫
オオスカシバ(左:幼虫、右:成虫)

みんなはクチナシの木に鮮やかな黄緑色の大きなイモムシがいるのを見たことがないかな?大人の人差し指くらいの太さで、7~8センチ位の大きさで、おしりに角が一本生えてるやつ、見たことあるよね! これは、オオスカシバという蛾の幼虫で、クチナシの葉が大好きなんだ。この幼虫を見つけられずにいると、瞬く間に木の葉が丸坊主になってしまうほど、凄い食欲の持ち主。オオスカシバは漢字で書くと「大透羽」で、蛾なのに羽が蝉のように透明だからこんな名前がついたんだ。しかも、ハチのように高速で羽ばたくので、飛んでいるときは羽が見えなくて、ブーンと言う音を出して高速で移動するんだよ。さらに花の蜜を吸うときは,花に留まらずにホバリングで空中に止まって、ストロー上の口吻を花に突っ込むんだ。写真を見て貰えれば分かると思うけど、ジェット戦闘機のようにカッコイイんだぜ!! 一度よく観察してごらん!
くちなしの花⑥ホバリングして蜜を吸っているオオスカシバの成虫ホバリングして蜜を吸っているオオスカシバの成虫