白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第47話 秋の七草

「萩(はぎ)の花 尾花(おばな) 葛花(くずばな) 瞿麦(なでしこ)の花 姫部志(おみなへし)また藤袴(ふじばかま) 朝貌(あさがほ)の花」と山上憶良が詠んだ歌を知っているかい? この歌は万葉集に収められており、この歌に詠まれた植物を今では秋の七草と呼んでいるんだよ。
これを現在の植物名に当てはめると、ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマと、ここまでは順調にいくんだけど、最後の朝貌(あさがほ)の花で、はたと止まってしまうんだよ。
朝顔と言えば、ヒルガオ科の一年生の蔓植物として誰もがよく知っている花だけど、万葉集が編纂された時代にはまだ朝顔が日本に導入されていないという説や日本の野山に自生している植物でないことから、この歌に詠まれたあさがほは現代の朝顔でないことが分かっているんだ。
では、このあさがほはどんな植物を指しているのかって? ヒルガオ、ムクゲなど、そりゃあ色々な植物が候補に挙がっているんだけど、それがなかなか決定打がなくてね。でも、一番有力と言われているのがキキョウの花なんだよ。
キキョウは元々日本の野山に自生している草花で、野草にしては大きな紫色の花を咲かせることから、古代の人々はこの花を愛でていたようだね。
何はともあれ、現在では、オミナエシ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、クズ、それにハギを秋の七草と呼んでいるんだよ。
秋の七草の覚え方は、「お・す・き・な・ふ・く・は」だね!

キキョウ
キキョウ
オミナエシ クズ
オミナエシ クズ
ススキ ナデシコ
ススキ ナデシコ
ハギ  フジバカマ
ハギ  フジバカマ

第46話 蟻の火吹き

「蟻の火吹き」と書いて「アリノヒフキ」と読むんだけど、みんなは聞いたことがあるかな? よっぽど古典に造詣が深い人でもないと知らないよね。
このアリノヒフキというのは、実はキキョウという花の古代の呼び名なんだ。
キキョウは元々日本の野山に自生する植物で、古代はオカトトキとかアリノヒフキという名前で呼ばれていたらしいんだ。キキョウという呼び名は中国の桔梗という呼び名が後にわが国に入ってきて、それが居着いてしまったようなんだ。中国で薬草として重宝していたらしく、キキョウが非常に堅い根であることからこの名前が付いたらしいんだけど、元々あった日本語の名前を駆逐してしまうなんて凄いよね。
さて、アリノヒフキはすなわち「蟻の火吹き」という意味で、これは、当時の子供たちが、キキョウの花に蟻を閉じ込めたり、または、蟻の巣穴にキキョウの花を突っ込んだりして遊んでいるときに、蟻がキキョウの花びらを噛むと、その部分が真っ赤に変色することから、蟻が火を吹いたと言われるようになったみたいなんだ。これは、キキョウの花の紫色の色素であるアントシアニンが蟻の出す蟻酸によって赤色に変色するためで、一般に青~紫色の花の色素に酸を作用させると赤く変色するんだよ。
みんながご幼少の頃、理科の時間に習ったリトマス紙の原理もこれを利用してるんだぞ! 青いリトマス紙を酸性の液に浸けると赤く変わったことを覚えているかな? ついでにもう一つ、紫キャベツに含まれる色素もアントシアニンだから、その汁を搾ってお酢を垂らすと赤くなるぞ! 是非、やってごらん!!

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キキョウのつぼみ

第45話 キンモクセイに実は成るの?

 そろそろ街のあちこちから馥郁とした香りが漂ってくる頃だね。香りをかいで初めて、キンモクセイの存在を知ることが多いよね。
このキンモクセイ、公園樹や庭木として至る所に身近に植えられていて誰もが知っている花木だけど、この花の実を見た人はほとんどいないはず。
それもそのはず、日本にあるキンモクセイには実は成らないんだよ! どうしてかって? では、いつもの種明かしと行こうか。
キンモクセイは中国原産の常緑小高木で、江戸時代に渡来したと言われているんだ。キンモクセイの香りは甘くて強いことから、臭いのきつかった昔のトイレの芳香剤として一世を風靡したんだけど、逆にそれが災いして、トイレのイメージが強すぎることから、今の芳香剤からはほとんど姿を消しているんだってさ。何事も過ぎたるは及ばざるが如しだね。
さて、本題に戻って、どうして実が成らないのか? それは簡単なお話なんだよ。実はキンモクセイは雌雄異株(しゆういしゅ)といって、雄花の咲く株(すなわち雄株)と雌花の咲く株(すなわち雌株)が違うんだよ。江戸時代に中国からわが国に導入する際に、香りの強い雄株ばかりを導入したことから、日本には雄株しか存在しないんだ。だから日本のキンモクセイには実が成らないんだよ。キンモクセイは香りが命だから、雌株がなくても不自由しないんだね。聞いてしまえば、な~んだそんなことかい! だったかな。
でも、これと同じような話があって、みんななら、冬になると深緑の葉に赤い実をつけるアオキっていう低木を知っているよね? このアオキは日本原産の木で、常緑で寒さに強い上に、年末には真っ赤な大きい実をつけることから、西洋の人たちから見ればクリスマスカラーの木なんだよね。これが江戸時代の末期に日本にやってきたイギリス人の目に留まり、早速、イギリスに持ち帰ったわけさ。ところがどっこい、何年も何十年たってもイギリスでは赤い実が成らないんだよね。赤い実が成っている株を大量に持ち帰ったのにだよ! みんなはもう分かっただろう? そう、ご明察! イギリスに持ち帰った赤い実の成る株は総て雌株だったってことさ。kinmokusei-hana

キンモクセイの花(雄株に咲く雄花)

kinmokusei-kiキンモクセイの大木