白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第38話 花蜜の在処(ありか)

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ミツバチやチョウは迷うことなく花に留まり、花蜜をおいしそうに吸っているんだけど、花を訪れる昆虫たちはどうして花密の在処を知っているのか考えたことはあるかい? そんなの花を見りゃ一目瞭然だろうって。いやいや、そうは問屋が卸さないんだよ。
僕たち人間が見ても綺麗な花をつける植物たちは、花粉を雌しべに運んでもらうために、美しい花を咲かせて虫たちを呼び寄せていることは、「ムッシュ・フルーリの小さなお話の種」の読者なら知っているはずだよね。だから花蜜は虫たちに花粉を運んでもらうためのご褒美なんだけど、じゃあ、虫たちは花のどのあたりに花蜜が蓄えてあるのかっていうのはどうして分かるんだろうね。
虫たちは花ごとに花密の在処を覚えているんじゃないかって? いくら花蜜を主食にしているハチだって、何百何千とある花の密の在処をすべて覚えるわけにはいかないよ。じつは、花密の在処はいちいち覚えなくても、それぞれの花がしっかりと教えてくれているんだよ。
では、種明かしをしようか。下の写真のヒラドツツジやシャガ、レンゲなどは、花びらの一部に特徴的な模様が施されているのが分かるかな(○印部分)。
実はこの模様が、この奥に甘~い蜜がたっぷりと蓄えられているんだよって、虫たちに教えている目印なんだ。だからこれをネクターガイド(蜜標)と呼んでいるんだ。えっ、このような模様のない花もたくさんあるじゃないかって。たしかに、模様のない花の方が多いかもしれないね。でも、それは我々人間の目に見えていないだけで、虫たちにはしっかりと見えているんだよ。ミツバチは赤や黄色は見えないんだけど、緑や青はよく見えていて、さらに人には見えない紫外線がよく見えているんだよ。じつは、模様のない一色に見えている花でも、ミツバチのような紫外線が見える目で見ると、花の中央部は紫外線を吸収して、周辺部は反射しているのが分かるんだ。ネクターガイドには人の見ることのできる模様と、見ることのできない模様があるんだよ。でも、虫たちにはきっちりと見えているから、花をめがけて一直線に飛んでいけるんだ。
最近、このネクターガイドにはもう一つの役割があることが分かってきたんだ。ネクターガイドにある紫外線を吸収する物質は、花粉を運んでくれないうえに、葉や花を食べてしまうイモムシなどの幼虫に対して忌避効果があるということが分かってきたんだよ。遠くから虫たちを呼び寄せるネクターガイドは花粉を運ばない(すなわち植物にとって役に立たない)ものたちを寄せ付けないという二重の仕掛けで生存競争に勝ち残ってきたんだね。

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