白井操クッキングスタジオ

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西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2017.7.28 株式会社やまつ辻田 辻田浩之社長

2017/8/4 

しっかりとした木製の台を組み、重い石臼が運び込まれ、木の持ち手を固定する小槌のコンコンという音が聞こえるセミナー前の会場。御岳の溶岩石で作られた特別なこの石臼から毎回山椒の得も言われぬ香りが会場いっぱいに広がります。

今回のゲストは株式会社やまつ辻田の辻田浩之社長。
山椒と大辛七味のおいしさを味わって頂くのに、白井が用意したのは「豚しゃぶと夏野菜のゴマ味噌かけ」。7月に「きょうの料理」で紹介したレシピの焼き鳥を豚しゃぶに変えて。「今日の魚売り場はいいサワラがたくさん並ぶそう。サワラなら骨を取って一口大に切って焼いて。このみそだれは魚にもよく合いますよ」と白井。

辻田社長は「今日の山椒は間違いなく世界一だと思います」と笑顔で。例年6月だったセミナーが今年は7月末になったことで、3日前に採れた最高級品種の山朝倉山椒をお持ちくださいました。「4月~5月は芯が柔らかいので実山椒として、そのまま10%の塩水で湯通ししたものを冷凍すれば冷凍庫で1年大丈夫。芯が固くなる7月、8月頃のものは粉山椒に。陰干しして芯を抜いて皮だけを粉にします。芯抜きはとても手間がかかる作業。大粒で芯抜きがしやすいということで世の中に出回るほとんどが和歌山のぶどう山椒ですが、最初の芳香が長続きしないんです。」山椒にはぶどう山椒以外に、主に実山椒として使われる養父の朝倉地区が発祥の朝倉山椒。海抜800~1000mにあって希少な山朝倉山椒の3品種があり、中でも山朝倉の粉山椒は一流の料理人や料亭が使われる他、生産量が少ないので多くは出まわらないのだそうです。「今日はセミナーの為に早採りさせた採れたての山朝倉100%。挽きたてを冷凍庫で保管いただければ、これ以上の粉山椒はないという訳です」辻田社長の言葉にみんなも納得。
「山椒には中毒性があってよく合法麻薬と言ったりするんです(笑)」山椒をしゃれた容器と巾着に入れて自らも持ち歩かれるとか。「山椒が3で塩が1」辻田社長がぜひ覚えて帰ってほしいと言われたのは山椒塩の黄金比。山椒は塩と出会って初めてうまくなる。山椒が痛覚を刺激するので1/4の塩でもおいしく感じることができ減塩効果も期待できます。ステーキ・唐揚げ・焼き鳥・ポテトフライを始め、野菜の甘酢かけや酢豚にも。「油に出会うと辛みが和らぐのでたっぷりかけても大丈夫。味噌とも相性がとてもいいので、色々試してみて!。楽しんでもらえたら嬉しいです」。
「最近は世界が山椒のおいしさに気づき始めて、チョコレートやアイスにも使われるようになりましたね」と白井。「世界の有名シェフからも引き合いがくるんですけど、収穫できる量が限られているのでなかなか対応できないのが現状です。ウチの山椒や七味の説明は友人に頼んですばらしい英訳にしたものがHPにありますよ」。
かつて10年間高校で英語教師をされていた辻田社長。生徒に教えるようにポイントを分かりやすく伝られます。「香辛料の鮮度を守るためには、光・空気・温度に注意してください。光を遮断する、酸素を抜く、温度を下げる、そのためには保存は冷凍庫が一番。」お客さまがメモをとられる姿はさながら授業のよう。今回は辻田社長が一番好きだと言われる夏向きの調合の暑気払いの大辛七味とうがらしをお土産に。使われる山椒は新物の山朝倉山椒を使ったこの時期だけの特別なもの。

石臼で山椒が挽かれ始めると会場は一気に爽やかな香りに包まれました。鮮やかな緑の粉をふるいにかける時はみんなで石臼の周りに集まって、世界一の山椒を五感で味わい、山椒に癒される素晴らしいひとときとなりました。
(文:土田)

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