第48話 日本水仙のふるさと
早いもので、今年ももう師走だね。この頃になるとどこからともなくいい香りが漂ってくるね。そう、水仙の花の香りだね。
淡路島の「灘黒岩水仙郷」を知っているかな? 南房総鋸南町、越前海岸と並んで水仙の日本三大群生地となっているのが淡路島の灘黒岩水仙郷と立川水仙郷なんだよ。
日本に自生している水仙を学術的には「ニホンスイセン」と呼ぶんだけど、実は昔から日本に自生していたわけじゃないんだよ! このニホンスイセン、生まれは遠い遠い西の果てにあるスペインやポルトガルなど地中海沿岸なんだ。そこから、たぶんシルクロードを通って、延々と長い時間をかけて中国にたどり着いたんだな。その香りの強さとうつむき加減に咲く姿が中国で大いにもてはやされた水仙は、ついに日本にも持ち込まれ、気象条件が合うところで自然と野生化していったんだね。
ところが、国内の群生地は先の三大群生地以外にもたくさんあるんだけど、ほとんどが海岸縁なんだよね。そこで、これらの群生地は別のルートで日本にたどり着いたものと考えられているんだよ。それは、揚子江周辺で繁殖していたものが川の氾濫により海へと流され、それが海流に乗って日本の海岸にたどり着き、そこで根を下ろし繁殖したという仮説なんだ。だから、群生地は総て海岸縁にあるってわけさ!どうだい、なかなか夢のある話だろう。
ところで、スイセンの学名(属名)はNarcissus(ナルキッスス)と言うんだけど、これはギリシャ神話に出てくるナルキッソスという美少年に由来していて、ナルキッソスはその美貌のため数多くの相手から言い寄られるんだけど、傲慢な態度をとり続けたんだね。それに激怒した復習の神ネメシスに呪いをかけられ、水面に映る自分の姿に恋をしてしまうんだ。もちろん水面の中の像はナルキッソスの恋に応えることもなく、彼はその恋の苦しみに憔悴しきって死んでしまうんだよ。そしてその体は水辺でうつむき加減に咲くスイセンに変わってしまったと言うことなんだ。因みに、ナルシストという言葉もこの神話に由来することは、みんなは知っているよね!
灘黒岩水仙郷(南あわじ市)