白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2018.1.26 京・南禅寺畔 瓢亭 当主 髙橋英一先生

2018/2/5 

「去年も来てくださった方は?」髙橋先生の問いかけにたくさんの手が一斉にあがります。毎年この日を楽しみにされているお客様が集う大人気セミナーも10回目を数えます。「寒い時期に蓮根の澱粉をおいしくいただくお料理を・・・」とご用意下さったのは「カニ入り蓮根団子 ほうれん草 京人参 うす葛仕立て もぐさ生姜」のお吸い物。

「ずわいがにの身は手で半分にすると白いスジが出てスッと取れます。蓮根をすりおろす時は穴に対して垂直に。今の蓮根はそのままで自分の澱粉で固まります。」ほうれん草は湯がいて、ザクザクと切って散らすとたくさん食べられて、ほうれん草ならではの柔らかい食感を楽しめるのだそう。「おろした生姜の塊がのっているのもまたいいもんです。『もぐさ』も『やいと』も若い人は知らないみたいですが。どうぞあつあつを召し上がってください。」椀には京人参の赤も美しくあしらわれ、蓋の裏は春待つ季節に嬉しい梅の模様。会場には出汁のいい香りが漂います。

「蓮根とカニの比率は、出す人によってカニを減らしたり、増やしたりして(笑)」。メガネが新しくなった理由や外国人観光客があふれる祇園界隈の事情など気さくに軽口を交えながら、白井のいろんな問いかけに柔らかに答えてくださいます。
「あちこちの初釜に行かれるのは大変でしょうね。お家元じきじきですものね。」「裏千家、表千家、官休庵など・・・6~7軒、家内や息子と手分けして行くんです。お濃茶、お薄、点心を頂くのですが、和やかで晴れやかで、私も楽しみなんです。流儀もそれぞれに事細かに違いますし、様子もまたそれぞれで。」そんな話題もこのセミナーの楽しみのひとつ。
400年続く老舗14代目の髙橋先生が、ご自分の代で新しく始められたのはマグロ節を使うこと。「カツオ節のクセが気になって、修行から帰っていろいろ勉強して、マグロの鬼節と本枯節の4つの部位をブレンドしたものにたどりつきました。4年寝かせた利尻産の大ひね昆布と軟水で1時間半ほどかけてクセのないお出汁をとります。お出汁がおいしくできたら料理はおいしくなります。それが私の持論です。」15代目の髙橋義弘先生が新たに手掛けられるのは、名物の明石鯛のお造りを引き立てるトマト醤油。オーブンでじっくり焼いたトマトの旨みがたっぷりの薄口醤油はわさびとの相性もよく、オリジナルのゆず油を少し足すと日本酒にもワインにもよく合うのだそう。「3月には東京の日比谷公園前の新しいビルに出店が決まっています。京都の本店にはないカウンターと個室でまた別の趣になる予定です」。今回も苦楽園口の京料理「くまがい」の熊谷伸司さんがお手伝いに。「丁寧な仕事をする子で、うちで15年修業を積んだ後、開店してすぐミシュランの星もとりました」と髙橋先生。「この3人が揃うことがなんとも贅沢ですよね」と白井もにこにこ。

「粉末や液体ではなく、きちんと出汁をとることがまず大事。手間をかけた分、料理はおいしくなります。おいしいものを食べさせてあげたい、喜んでもらいたいという真心を忘れずに」と髙橋先生。和食の粋を、目で、舌で、香りで、心で味わう豊かなひととき。「だしの大切さがわかりました」とお客様アンケートにも嬉しい言葉がたくさん届きました。                     (文:土田)

 

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