白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2019.1.11 株式会社神戸酒心館 代表取締役社長 安福武之助さん、副社長 久保田博信さん

2019/1/23 

新年最初のゲストはブルーのボトル「福寿」でおなじみの株式会社神戸酒心館 社長の安福武之助さんと副社長久保田博信さんのご兄弟。「阪急の青いギフトカタログで「福寿」を使った「牛肉の佃煮」を手掛けていただいたのがご縁の始まり」と白井。ご近所ということもあり、山田錦を使う日本酒の本作りもお手伝いいただき今ではすっかり仲良しに。「蔵ではお二人がTシャツやポロシャツを来ておられたり、多言語のパンフレットがあったり新しい風を感じました。」「あれは社員のユニフォームです。お蔭様で蔵に来られるお客様は年間15万人。小さな蔵ですが世界から多くのお客様が来られるので、16の言語でパンフレットを用意しています。現在は海外15か国へ輸出もしています。」重い日本酒を携え海外へ出向き、地道にPRを行ってこられた努力が実り、ノーベル賞晩餐会で饗される酒としても世界から注目を集める人気の銘柄に。「お二人とも英語が堪能ですものね。海外で好まれるのはどんなお酒?」「まず香りが大事。華やかでフルーティーだと入りやすいようです。海外で試飲していただいて面白かったのは、アメリカでは香りがあってのど越しがすっきりしたものを好まれるのに比べ、フランスでは味に複雑味があるものが好まれます。ワインへの造詣の深さを感じました」。

「昔からの酒造りを守るにも道具を作る職人がいなくなりご苦労されている蔵もあると聞きます。」「かつては但馬杜氏が蔵人を連れて城崎から酒を造りに来てくれていました。杜氏さんの高齢化もあり、5年後も10年後もこのおいしさを守るために、社員が杜氏の技術を学んで、年間を通じてお酒が作れるよう『社員杜氏』という体制を作っています。」「酒造りは同じやり方で作っても同じ味にはならない繊細な部分があります。お酒の味を決めるのは昔から「一麹、二酛(もと)、三造り」と言われ、麹が味を決める大きな役割を担います。そこで管理しやすく自分たちが思い描くような良い麹を作るためにたらいを使った『たらい麹』作りに取り組みました。ホームセンターでもたらいが手に入らず、代わりにプラスチックのケースで作ってみたところ、きわめて上質な麹をみんなが作れるようになり、大吟醸の一部商品に使用しています。」「伝統を守りながら、新しいことにチャレンジするというのがウチの考え方です」。ご兄弟の仲の良さがお話のリズムから感じられるのも和やか。

試飲にご用意いただいたのは「福寿」の「大吟醸」「純米吟醸」「超特撰純米酒」の3つ。「大吟醸」はりんごのような甘い香りとキレを感じるのど越しを併せ持ち、宮水でドライに仕上げた逸品。「純米吟醸」は旨みと香りとのバランスの良さが持ち味。「この味をベースに、もっと華やかさを求められるなら大吟醸、辛口が良ければ純米酒とご自分の好みがよくわかると思います」。香りは控えめながら旨み豊か、辛口でボディー感を楽しめる「超特撰純米酒」は40~50℃に温めるとカドが取れてやさしい味わいに。温度帯で味わいが変わる日本酒の魅力を楽しむのもおすすめだそう。試食は焼きたてのバケットに黒豆のディップとアンチョビをトッピングしたカナッペを。
「海外の方に日本酒のゲートウェイとして米と水からできるサケのことを丁寧に説明して理解を広めたいと考えています」「酒蔵だけでなくレストランやイベントホールなどをきっかけにお酒に関心のない方も含めて多くの方に楽しんでいただけるサービスを考えていきたいと思います」。お二人の抱負に瑞々しい未来を感じたひと時でした。

(文:土田)

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