白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

ムッシュ・フルーリ花探検 第2話 ネペンテス・ペルヴィレイ

「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、 何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ! 今回からは、我がフラワーセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、 その季節ごとに咲くとっておきの一品を紹介していくぞ!  栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、 形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、 そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを紹介していくから、楽しみにな!

第2話 ネペンテス・ペルヴィレイ
今回は新企画の第2弾となるんだけど、早々に我が兵庫県立フラワーセンターが、世界に誇るコレクションの一部を紹介するとしようか。本園は、昭和51(1976)年の開園当初から春のチューリップで有名なんだけど、実は、知る人ぞ知る、今や食虫植物のコレクションでは、日本一、いや世界トップクラスなんだぞ。なかでも、ネペンテス属(ウツボカズラ属)では、世界中の数多くの植物園のなかで、何とフラワーセンターでしか見ることのできない種類があるんだ。それが、標題にある「ネペンテス・ペルヴィレイ」という種類なんだ。
 (ネペンテス・ペルヴィレイ)

ところで、みんなはネペンテスっていう食虫植物は知っているかい? 和名ではウツボカズラって呼んでいる食虫植物の仲間なんだけどね。えっ、それも聞いたことがないって?
しょうがないなぁ、それじゃあ、基本的なところから説明するとしようか。

まず、食虫植物とは、読んで字のごとく「虫を食べる植物」なんだけど、世界中に600種類以上もあって、非常に変化に富んでいる植物のグループで、共通している点は「虫を食べる」っていうところくらいかな。食虫植物の生えている環境を見てみると、湿原や乾燥した岩肌、もしくは湿った荒野など、植物が必要とする栄養素が非常に乏しいところなんだ。そんなところでは、光合成によってエネルギーを生産している植物でも、栄養分が不足してまともに生育できないんだな。そこで、考え付いたのが、昆虫などの小動物を栄養源にすることなんだ。これを最初に考えた奴は偉いよなぁ。それまで、食べられるばかりだった動物を食べてやろうっていうんだから、逆転の発想だな。その発見以降、何十万年という長い年月をかけて虫を獲る仕組みを進化させたのが、食虫植物というグループなんだな。自分たちが生存競争に生き残っていくための苦肉の策の結果っていうわけだな。
 (ネペンテス・ペルヴィレイの捕虫袋)
さて、その食虫植物の中でも、種類が多くて形が面白いものの代表がネペンテスなんだ。和名はウツボカズラって言うんだけど、海にいるウツボとは何の関係もないぞ。ウツボカズラは「靫葛」という字を書くんだけど、これでも意味が解らないかな? ウツボすなわち「靫」とは、「矢を携帯するための筒状の容器」で、武士が戦の際に肩からかけていたものなんだ。捕虫袋(虫を落とし込む袋状の葉)の形がその容器に似ていて、葛すなわち蔓状に伸びる植物なので、ウツボカズラって言うことなのさ。

マレー半島やボルネオ島、スラウェシ島などを中心とした東南アジアに約100種類が自生しているんだけど、本園には野生種と交配種を含めて200種以上のコレクションがあるんだぞ。中でも今回紹介するネペンテス・ペルヴィレイっていうのは、マダガスカルの北に1,000km以上離れた「インド洋の真珠」と呼ばれているセーシェル諸島に自生していて、栽培が非常に難しく、世界中でフラワーセンターだけがその栽培に成功しているんだ。だから、現地以外で正常に生育している姿を見ることができるのは、世界広しといえどフラワーセンターだけなんだぞ。どうだい、凄いだろう(自慢)! 是非、フラワーセンターまで足を運んで、実物を見てほしいなぁ。園内の温室内にある食虫植物室で年中展示しているのでいつでも見られるぞ!

(フラワーセンターの食虫植物室内で生育しているネペンテス・ペルヴィレイ)
〈このような自生地に近い状態で観察できるのはフラワーセンターだけ!〉

ここで、ちょっと宣伝しておきたいのが、このネペンテス・ペルヴィレイの栽培技術を確立したのが、食虫植物マニアの間で神と崇められている土居寛文さんなんだ。本園は植物だけでなく、素晴らしい人材にも恵まれているんだぞ。

さてここで、ネペンテスの虫を獲る巧みな仕組みついて説明しようか。ネペンテスは落とし穴式と呼ばれる補虫方式で虫を獲るんだけど、葉の先が蔓状に伸びてその先端に捕虫袋と呼ばれる「虫を落とし込む袋状の葉」を付けているんだ。
 (ネペンテスの捕虫袋)
その袋の上部には甘い蜜を出して昆虫を誘惑する蓋状のものがあり、袋の入り口には鼠返しがあり、その内側に下向きの歯状のものがあって、袋内に落ち込んだ昆虫が出られないようになっているんだ。しかも、袋の内壁には下向きのごく細い毛が密生していて、ツルッツルなんだぞ。
 (捕虫袋の入口にある鼠返し緑歯)
落ち込んだら最後、出るに出られず、袋の底にたまっている強力な消化液の中でじわじわと溶かされるんだ。
これぞ、本当のハニートラップだな。

こんな複雑で不思議な、そして恐ろしい仕組みを考え付いたネペンテスを、是非フラワーセンターに見に来てほしいな、園長いやいやムッシュ・フルーリは待ってるぞ!

操の「へぇ~!」
虫を落として溶けるの待って・・・。うわぁ~なんだか恐ろしい。同じ花と呼ばれるのなら、できれば「かわいい」「きれい」「いい匂い」といわれる花になりたいな。もし花と話しができたら、この「へぇ~!」と思う気持ちを伝えたり、ネペンテス・ペルヴィレイの思いに耳を傾けることもできるのに・・・なんて思いながら見せていただきました。この花のそばにいると蚊などから人を守ってくれるいいことが待っているのかしら・・・。

「ネペンネス・ペルヴィレイ」を見に行こう!!
兵庫県立フラワーセンターのHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

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