白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

ムッシュ・フルーリ花探検 第21話 リコリス

「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、 何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ! 今回からは、我がフラワーセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、 その季節ごとに咲くとっておきの一品を紹介していくぞ!  栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、 形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、 そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを紹介していくから、楽しみにな!

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと秋の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。大人気のセミナーです。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。

『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀9/19(土)②10/10(土)③11/21(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

第21話 リコリス
ようやく、猛暑に明け暮れた8月も終わり9月になったけど、一向に猛暑が収まる気配がないね。この暑さいつまで続くんだろう? 「暑さ寒さも彼岸まで」とあるように、やっぱり彼岸まで待たなきゃダメみたいだね。

さて、秋の彼岸と言えば、あの燃え上がるような特徴的な花型とそれに見合った深紅の花をつけるヒガンバナだよね。 ヒガンバナの学名は、リコリス・ラジアータって言うんだけど、この属名のリコリスっていう名前で呼ばれている花を知ってるかい? 日本や中国に自生しているヒガンバナの仲間を色々と交配して育成された、花の少ない夏から秋に咲く夏植えの球根植物をリコリスって呼んでいるんだ。リコリスの原種にはヒガンバナの深紅に加えて、イエロー、オレンジ、ピンクなどの色があり、さらにブルーの色素を持った種類もあるから、赤、青、黄色と三原色ともそろっている珍しい球根植物なんだ。
 シロバナヒガンバナ
 リコリス・ブルーパール
 リコリス・ジャクソニアナ

しかも、栽培が容易で植えっぱなしにしておけること、繁殖力が強くてどんどん増えていくこと、花の少ない真夏~秋にかけて花を咲かせること、その上病害虫がほとんどないことなどなど、ずぼらな花好きにはもってこいの球根だな。しかも、ヒガンバナのように、花が咲くときには葉が全くないんだぞ。だからたくさんの球根を植えて群生させたら、素晴らしい景観になること間違いなし。

フラワーセンターには、今までリコリスはそれほど植えられてなかったんだけど、この夏に神戸市内にお住いの花好きの方から大量にご寄贈いただいたので、宿根草園の一画にリコリスガーデンを作ったんだ。十数種類のリコリスを植えたので、数年後を楽しみにしていてくれよな。
 リコリス・真夏のクリスマス

ところで、日本には、ヒガンバナをはじめ、ナツズイセンにキツネノカミソリ、ショウキズイセン、などが自生してるんだけど、ヒガンバナとナツズイセンはもともと日本に自生したわけじゃなくて、有史以前に中国大陸から伝わったとされているんだ。その理由の一つが両者とも3倍体で種子ができないってことなんだ。えっ、3倍体ってなんだって? ごめんごめん、ちょっと専門的過ぎたかな。
 キツネノカミソリ
 ショウキズイセン

人間も含めて、生物は父方と母方の両方から遺伝子(染色体)を1セットずつ受け取って2セットの遺伝子(染色体)を持って生まれるよね。だからその遺伝子(染色体)は2セットで一対となっていて、それを2倍体と呼んでるんだ。だから、私もあなたも彼も2倍体なんだぞ。ところが、自然界では突然変異などで遺伝子(染色体)が一対プラス1セットすなわち3セットのものが生まれることがあり、それを3倍体って呼んでるんだ。遺伝子(染色体)が3セットあるってことは、繁殖の際にその半分を子孫に伝えなければいけないんだけど、3というのは奇数だから二つに割り切れないよね。だから遺伝子(染色体)をうまく子孫に伝えられないってことなんだ。ということは、すなわち種子ができないってことなんだ。種子ができなければ、そう、子孫の繁栄は望めないよね。
 ヒガンバナ
 ナツズイセン

じゃあ、どうしてヒガンバナは日本中にたくさん自生しているのかって? それは、球根の繁殖力が非常に強くて、そんなに増えやすい球根を人間があちこちに植えたもんだから、約2000年ほどの間に全国的に分布するようになったってわけさ。ヒガンバナの球根には、アルカロイドっていう有毒な成分が含まれているんだけど、良質なデンプンも含まれているんだ。有毒成分は球根をすりおろして水で晒せば取り除くことができるので、昔の人はそれを救荒作物として飢饉の際に利用していたんだな。だからヒガンバナは人里周辺の田んぼやお墓の周辺にしかにしか生えてないだろう?

種子のできないヒガンバナやナツズイセンは、人間にとって有益だったから、中国大陸から持ち込まれてきたんだけど、たまたま導入された球根が突然変異した三倍体だったもんだから、人間の手によって全国に分布を広げていったってことなのさ。分かったかな?
もちろん中国には、しっかりと種子のできる2倍体の彼岸花があるんだぞ。

「リコリス」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

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