白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第37話 コブラオーキッド

「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、 何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ! 今回からは、我がフラワーセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、 その季節ごとに咲くとっておきの一品を紹介していくぞ!  栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、 形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、 そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを紹介していくから、楽しみにな!

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと冬の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。大人気のセミナーです。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。

『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀2022/2/19(土)②3/19(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

37話コブラオーキッド

コブラは毒蛇のコブラ、オーキッドは英語でランのこと。何ともいかめしく、毒々しい名前だけれど、その花を見れば、毒蛇のコブラが鎌首をもたげているように見えないでもないかな。
▶コブラオーキッドBulbophyllum maximum     

毎年、年末から翌年の3月くらいまで、3か月もの間フラワーセンターのラン室に展示してあるんだけど、どのくらいの人がこの花に気づくんだろうか? 写真の様に平べったくて捻じれのある30㎝ほどの茶色い花茎を伸ばして、その真ん中に1センチにも満たない同系色の小さな花が裏と表にお行儀よく一列に並んでいるんだ。
◀コブラオーキッドの花の拡大

このランは、アフリカのケニア、タンザニア、ウガンダなどの熱帯雨林の樹上に着生しているんだけど、地上から見上げてもまず見つかることはないよね。
コブラオーキッドが属するマメヅタラン属(Bulbophyllum バルボフィルム)は、日本にもマメヅタランやムギランなど数種自生しているけど、いずれも小さくて地味な花を咲かせるんだよ。
▶マメヅタラン Bulbophyllum drymoglossum
でも、この属のランは世界中の熱帯地域に1000種以上も分布していて、ラン科の中でも非常に大きなグループで、その形態もおよそ同じ仲間とは思えないような変化を遂げていて、奇麗な色の花もあれば、一見、花とは思えないような形をしたものまで、千差万別。
◀ムギランBulbophyllum inconspicuum

ところで、みんなはランと聞けばカトレヤやコチョウラにシンビジュームなど、鮮やかな色彩で、しかも豪華で華やかな大きな花を付ける植物たちを思い起こすよね。ところがラン科植物はそんな花ばかりじゃないってことを分かってほしいな。折角だから、ここでラン科植物についてちょっと勉強してもらおうかな。

地球上の陸上に分布している植物は約25万種あるんだけど、そのうち、ラン科に属する植物は2万6千種もあって、陸上植物の1割以上を占めるほど大きなグループなんだ。そして、南極大陸を除くすべての大陸に分布しているんだ。どうだい、凄いだろう?
▶バルボフィルム・メデューサエBulbophyllum medusae

現在、地球上で繁栄を遂げている、花を咲かせ、種子を作る被子植物は1億4000万年前(ジュラ紀)に裸子植物(針葉樹やソテツ、イチョウなど)から分かれて進化したと考えられているんだ。その中でもラン科植物は約8000万年前ころ、すなわち恐竜が絶滅するちょっと前に地球上に現れているんだ。
◀バルボフィルム・ロビィBulbophyllum lobbii

今では、地球上に最も遅く現れたグループと言われているのさ。その頃の陸上には既に物凄く多くの種類の植物が蔓延っていて、最も後発のラン科植物が生きていく場所をを確保することは非常に難しかったんだな。そこで、発生初期のランは、他の多くの植物たちとの無駄な生存競争を避けるため、地上で生きていくこと(これを地生といいます)を捨てて、空中、すなわちほとんど植物がいない樹上や岩上で生きていく道(これを着生といいます)を選んだんだ。樹上や岩上に着生することで十分な生息場所を確保したランたちは、その後急速に進化を遂げて、僅か数千万年の間に陸上植物の1割を超えるまでに進化したんだ。
しかも、その急速に進化した要因はもう一つあるんだ。それは、受粉に昆虫を利用したことなんだ。
▶バルボフィルム・ロスチャイルディアヌムBulbophyllum rothschildianum 
実は、鬱蒼と植物が生い茂る地上ではなく、非常に日当たりや風通しが良く、かつ見晴らしが良い樹上に生育場所を選んだことで、空中を自由に飛び回っている昆虫たちに見つけられやすくなったんだ。そこで、昆虫たちに受粉を手伝わせることを考えたランたちは、昆虫たちに花蜜という報酬を与える代わりに、花粉を運んでもらうという仕組みを思いつき、昆虫たちを誘き寄せるために、色鮮やかな大きな目立つ花や小さくて目立たないけどよい香りのする花など、昆虫たちが魅了されるあらゆる手法で花を変化させていったんだ。
その結果、ランたちの進化に伴って、昆虫たちも大きな進化を遂げていき、ランと昆虫の共進化(お互いに影響し合いながらともに進化していくこと)という現象が生まれ、さらにお互いの進化のスピードを上げたっていうわけさ。
◀バルボフィルム・カルンキュラタムBulbophyllum carunculatum

どうだい、少しはランを見る目が変わったかな? これから全国各地でラン展が開催されると思うけど、ランの花を見たときには、その生い立ちを思い出しながら、じっくりとその花を観賞してみるのもいいと思うよ。

「コブラオーキッド」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

 

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