白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

スミレ~花が咲かないのに種ができる~

日本の春の野草の代表と言えば、そう、やっぱりスミレだろうね。さすがにスミレを知らない人はいないよね。
すみれ①スミレ スミレ
さてこのスミレ、日本国内に自生している種類だけでも、亜種や変種を含めると250もあるんだよ。スミレ類は、今進化の真っ最中で、地域ごとに少しずつ変化しているんだよ。
すみれ②エイザンスミレ エイザンスミレ
すみれ③オオバキスミレ オオバキスミレ
すみれ④タチツボスミレ タチツボスミレ

ところで、みんなはスミレを観察してて不思議に思ったことはないかい? スミレは春先に紫色や黄色の花を咲かせるけど、花が咲いている時期はせいぜい2週間ほど。でも、そのあとにできる果実は初夏頃まで次々と生まれてきて、種を飛ばしているんだよ。これに気付いたそこのあなた、なかなか観察眼が鋭いね。でも、どうして次々に実が成るのかって?

では、種明かしといこうか。実はスミレの仲間は花が咲く花と咲かない花の2種類があるんだ。春先に最初に咲くいくつかは普通に花を咲かせる花で、その花が咲き終わると花が咲かない花が次々と生まれてくるんだ。じゃあ、花の咲かない花って言うのはどんなのかって? 株元から小さな蕾が立ち上がってきて、そろそろ咲く頃かなって思っていると、実が大きくなり始めるんだ。この花が咲かない花を「閉鎖花(へいさか)」と呼んでいて、花びらが全くないんだ。蕾のままで、雄しべから花粉を出して雌しべの先に受粉して、受精が完了。すぐに実が大きくなってくるんだ。だから、確かに蕾が次々と上がってきているのに、花が全然咲かなくて、いつの間にか実がたくさんできているってことになるんだね。
すみれ⑦閉鎖花 閉鎖花
すみれ⑤スミレの果実 スミレの果実
本来は、花を咲かせて、昆虫たちが花粉を媒介して受精し、実が成って種ができるという道筋を通るんだけど、たくさん子孫を増やすためには、それだけではなかなか間になわないんだね。そこで考えついたのが、昆虫たちに頼ることなく、自分自身で受精して(自家受粉)、種をどんどん生産することなんだ。普通の花が終わったあとに、初夏ぐらいまで次々と「閉鎖花」を生み出して、種をどんどん生産することにより子孫を増やそうとしているんだね。

ところで、スミレの実が熟すると、縦に三つに割れて中にある種を周辺に飛ばすのは知っているよね。その種をよく見ると、端っこに白いねばねばとしたものが付いているのが分かると思うよ。これはエライオソームといって、アリの好む糖分が含まれているので、アリはこれを見つけると自分の巣まで運んでいくんだよ。 そう、スミレはアリを巧く使って、種を遠くに移動させているんだぞ。どうだい、なかなか頭が良いだろう?
すみれ⑧果実が熟して3つに割れたところ 果実が熟して3つに割れたところ
すみれ⑥種子(白いエライオソーム)  種子(白いエライオソーム)

 

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