白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

お正月と言えば黒豆 その①

師走も押し迫り、そろそろお正月の準備に向けてそわそわしてくる頃だね。このコラムを愛読してくれているみんなは、もちろんおせち料理は作るんだよえね。あれっ、なんか怪訝な顔をしている人がいるようだけど・・・・・。
まあ、兎に角、おせちに必須の料理と言えば、そう、黒豆だよね! 関西では、世界一の大粒大豆で名高い「丹波黒大豆」の煮豆が入るのが常套。まさか、丹波黒大豆を知らない人はいないだろうね。
最近では、10月に入ると枝豆としても出回っている丹波黒大豆だけど、今のあの粒の大きさになったのは意外と最近だって知ってた?
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兵庫県の丹波篠山地域では、古くからいろいろな大きさの黒大豆が作られていたんだけど、その中の特に大きい粒のものが江戸時代から重宝されていたようなんだ。でも、その大きさは今の約半分ほど、100粒で40g程度だったんだぞ。昭和の始め頃まではほぼその大きさのままで作られてきたんだけど、戦後に兵庫県の農業試験場が中心となって、その地域で最も粒の大きい種類を「丹波黒大豆」と言う品種名を付けて栽培を奨励したんだ。その後、約50年に亘って粒の大きい株から種を取り続け、選抜を繰り返していったところ、徐々に粒が大きくなっていき、20世紀の終わり頃には100粒で80gを超えるような大きさになったって訳さ。だから、たかだか20~30年くらい前に現在の大きさに到達したってことになるね。
粒が大きくなるに連れて、成熟期がだんだんと遅くなり、11月上旬だったものが、12月上中旬と、1ヶ月以上も遅くなったんだよ。これは、粒をより大きくするためにはそれだけ養分をため込む必要があるから、その分、成熟するまでに時間が掛かるってことなんだ。
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一般の大豆、すなわち白大豆や黄大豆などと呼んでいる大豆は、100粒で20g程度の重さだから、その違いがいかに大きいか分かるよね。この違いは栽培管理にも影響を及ぼしていて、白大豆は7月に種をまいて10月末~11月上旬には収穫という、3~4ヶ月あまりの栽培期間に対して、丹波黒大豆は6月に種をまき12月中旬に収穫という、約半年間の栽培期間を必要とするので、白大豆の約2倍近くの間、しっかりと手入れをしなくちゃいけないんだぞ。
しかも、収穫時期にはマメの水分が多くて柔らかいので、白大豆のようにコンバインで収穫できず、バインダーという機械で刈り倒して、枯れた葉を手作業でむしり取り、莢付きの枝を乾燥機に入れて乾燥させるという作業が必要になってくるんだ。それから莢から脱穀してゴミなどの不純物を取り除くとようやく黒大豆そのものに。しかも、これらの一連の作業には熟練した技術が必要なんだ。だから、収穫作業一つ取ってみても、一度にコンバインで収穫・脱穀・袋詰めされる白大豆と比べて、技術と労力と時間が掛かることが分かるだろう。さらに、これだけ手間暇かけても、単位面積当たりの収穫量は白大豆の約半分ほど。そりゃあ、相当高い値段で売らないと割が合わないよな!
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(この黒大豆は丹波黒大豆ではなく、100粒30g程度のもの)

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