白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2016.7.8 株式会社やまつ辻田 辻田浩之社長

2016/7/20 

毎年この季節にさわやかな山椒の香りとともにセミナーに来て下さるのは、株式会社やまつ辻田 辻田浩之社長。「とうがらしや山椒のおいしい食べ方、いい品種の伝道、いいものをいい人に伝えることをライフワークとしています。」
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かつて高校の英語教師をされていた辻田さんのお話はゆっくり分かりやすくポイントを押さえて。「ぶどう山椒はぶどうの房のように実がつき加工がしやすいもの。4~5月の芯が柔らかいうちは実山椒として使います。買ったらすぐに10パーセントの塩水で1分ほどさっと湯がいて冷凍します。芯が硬くなった7月のぶどう山椒は、山椒の芯を抜いて皮だけにして粉山椒として使います。有名な朝倉山椒は、芯が抜きにくいので、主に実山椒や佃煮として使われます」香りは朝倉山椒、鮮やかな色はぶどう山椒、二つの個性を併せ持つ希少品種の山朝倉山椒を主な原料として使われているそう。山朝倉山椒の収穫期は8月末頃。今回は去年収穫し冷凍保存したものに、一昨日とれたての朝倉山椒の新ものを混ぜて石臼で挽いてくださいました。
石臼は溶岩石で作られた特注のもの。これでゆっくりと挽くことも最高の粉山椒を作るために欠かせない作業のひとつなのだそう。会場いっぱいに山椒の香りがひろがると梅雨の湿気も一瞬にして忘れてしまう爽やかさ。実際は何回か石臼で引いたものをふるいにかけ粉山椒に仕上げ商品に。
「山椒の食べ方が分からない人は塩を少し入れてみてください。山椒3:塩1の割合の山椒塩です。山椒が脳に刺激を与えるので1/4の塩で塩辛いと感じることができます。減塩にもなるので塩分が気になる方にもおすすめです。」
16.7.8やまつ辻田②
今回の試食はさっと焼いたオリーブ豚に山椒塩をふりかけたもの、冷や奴に醤油と七味唐辛子を振りかけたものを。「追加用の山椒を回しますので、勇気のある方はたくさん振りかけて・・・。最後に新芽と若芽の一番いい香りが残るはず」。市販のポテトチップスに山椒をふりかけたものも試食して「魔法の粉」山椒のチカラを実感しました。美食で名高いスペインのサンセバスチャンで開かれた食博でも、この山椒塩を直前に作って天ぷら・唐揚げ・焼き鳥・焼き肉など日本食にあわせ「キラーコンテンツ」として好評を得たというのも納得です。
普通出回っている外国産唐辛子は1kg千円程度。1kg1万円の国内産鷹の爪純粋種を使い、山朝倉山椒を同量使ったこちらの七味唐辛子は本物の味わい。今回は暑気払いとしてちょっと辛めの夏の調合のもの。昨日調合したての七味を一袋ずつお土産にとご用意くださいました。東日本大震災の時に心を痛め売り上げの5パーセントを寄付にと企画されたものを今は東日本大震災と熊本地震の寄付にと続けておられます。こちらも保存は冷凍庫で。すき焼きの溶き卵にひとふりするのもおすすめ。
「全国の百貨店でおひとりで実演されてますよね。ぽつんと一人で話すのって勇気がいりませんか」「学校で英語を教えているときも、何かを人に尽くすつもりで、大切なことを伝えるという思いでやってきました。剣道も同じ。おいしい七味を作って、お客さんに喜んでいただけるのがうれしい。人の役に立っていると思えることが好き。安いとか、おいしいとか、うれしいなっとか感じてもらえたらお客さんがいっぱいになって『仕事をさせてもらっている』という感謝がいっぱいわいてきます」。
最後は山朝倉山椒をゆがいて冷凍したものを客席に回して「冷凍の状態だと軸が簡単に取れますよ」とコツを伝授。爽やかな香りと人柄に心洗われたひとときでした。
(文:土田)

セミナーレポート 2016.6.24 株式会社伍魚福 代表取締役社長 山中 勧さん

2016/7/4 

JRも私鉄も事故で電車が止まり、その影響で道路も大渋滞。そんな朝、笑顔で現れたのは株式会社伍魚福の代表取締役山中勧社長。状況を判断し、かろうじて動いていた電車からバスに切り替えて無事到着されました。
16.6.24伍魚福①
伍魚福といえば珍味。試食としてお持ちいただいたのは「一夜干焼いか」と「いかなごのくぎ煮」。「一夜干焼いか」は冷凍ものは使わず、函館の工場で生のイカをそのまま加工して仕上げた人気商品のひとつ。「水族館の依頼でダイオウイカをスルメに加工したこともあるんですよ。それは乾燥標本と呼ばれるらしいんですけど・・・」「へぇ~!伍魚福って、めずらしい社名ですよね」「父が兄弟二人で事業を始めようとした時に占い師に相談したら『5種類の魚を飴で炊いて五魚福と名付けて商うと成功します。工場は西の方角に・・・』といわれ、商品名をそのまま屋号とし、言われた通りに実行すると上手くいったそうです。昭和45年株式会社になる時に人を大事にという思いからニンベンを付けて現在の伍魚福になりました」。
「いかなごのくぎ煮のことで先日テレビ出演されてましたね」「昭和46年にいかなごのくぎ煮を初めて商品化したということで、いかなごのくぎ煮振興協会事務局長をやっていまして・・・。くぎ煮で登録商標も取りました。独占するためではなく誰もが使えるように守りたいと。」くぎ煮検定や文学賞などその振興にも力を注がれます。
「父から『うちは工場のないメーカー』と子供の時に聞かされた時はどういうこと?と思っていました」かつては酒屋への売り上げが大半を占め、海のもの山のものを問わず広くおいしい珍味を扱うために確立されたのは、様々な協力工場で得意分野の商品を作るという伍魚福のスタイル。時代が変わり大型酒店やスーパーへと販路が広がる中、手頃なものから高級なもの、冷蔵商品まで商品の幅がますます広がり、現在協力会社は約200社に。「昔、商社に務めていた頃は、女性の下着を作っていました」ブランド、デザイン、品質管理を行いながら外部の工場で製品化し販売するアパレルでの経験が、食品を扱う今も役に立っていると言われます。
「健康志向に応える商品として販売した備長炭カシューナッツが、実際には真っ黒な見た目のインパクトのおもしろさが購入につながっていたり、私が一度却下した社員の新商品のアイディアが敗者復活の商品プレゼン大会で支持され「クリームチーズの生ハム包み」という人気の冷蔵商品となったり、色んなことが起きますよ。本屋の書店員が書くPOPって説得力がありますよね。うちも商品のおもしろさやおいしさを店頭で伝えられるようにもっともっと工夫を重ねたいと思っています。」
神戸で一番おもしろい企業になろう!そんな言葉が掲げられているのは「クレド(信条)」。お父様が社長の時に経営理念として定められた3カ条に加え、山中社長の代になって社員と一緒に、社員も協力工場も販売店もお客様もみんながおもしろいと思えるような会社のあるべき姿について意見を出し合い、決められた内容です。小さな冊子にまとめ各自が持っています。「社員はもちろん、パートの方も同じ考え方を共有して同じ方向を向いて、思いをひとつにして仕事をしたいと思っています。」ともに成長できたらそれが理想ですと語る山中社長。笑顔を絶やさない柔かな物腰の中に熱い思いが伝わってきました。
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試食はお中元青いギフトカタログから「ひょうご雪姫ポークの生姜焼き」と秋田からギバサとワカメ、メカブの3種の海藻がうれしい「ぜいたくねばとろ丼」を。こちらは西宮阪急の白井のおすすめコーナーでも近日販売される予定です。         (文:土田)

セミナーレポート 2016.6.10 公益財団法人兵庫県予防医学協会 健康ライフプラザ 健診部担当部長 田中由紀子さん

2016/6/15 

「行政の仕事を卒業されたばかり」と白井が紹介したのは、兵庫県予防医学協会健康ライフプラザの健診部担当部長田中由紀子さん。保健師として神戸市保健福祉局で活躍され健康増進担当部長を務めた方。「看護師さんとどう違うの?とよく聞かれます。病気を治すのに効果的な治療のお手伝いをするのが看護師で、保健師は未然に病気を防ぐことのお手伝いが仕事です」例えば、赤ちゃんの予防接種、メタボ防止の生活指導、健診による病気の早期発見。特にガンは治癒率が高い早期に発見することが大切だそう「病気になって生活やお金に心配がある時や、在宅看護や地域との連携の相談にも乗ります」。社員の健康を守る企業保健師や病院に設置される地域医療連携室など行政以外でも活躍の場は広く「赤ちゃんからお年寄りまで、お医者さんと福祉、地域をつなぐ仕事なんです。」と田中さん。
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「例えば小さな子を持つお母さんがガンになってしまった時、行政はどのように関われるの?」「子供の世話をする人がいない場合はサポーターの紹介やヘルパーの派遣、世話をしてくれるおばあちゃんがダウンした時には子供のショートステイを紹介したり。ご本人の治療に関わる不安や生活の困りごとを相談できるガン相談支援センターとつなぐことも。みんなが倒れないことが一番大切ですから。介護のこと、自分のこと、子育てのこと、保健師さんいますかと気軽に窓口に訊ねて下さい」。
阪神淡路大震災20年を契機に「食から学ぶ震災の記録」という本の制作を手掛けた際、田中さんのお話に感動した白井「前例がない災害の中、避難所の生活環境を守るために神戸市の保健師さんたちが最初にされた仕事が避難所のトイレの掃除。出すことが食べることに繋がると・・」。「足が不自由なお年寄りや片付けけられていないトイレが嫌で、できるだけ行きたくないからと水を飲まなくなると、それが原因で血圧の上昇や尿路感染症などが増えてきます。中越地震の時はポータブルトイレを使ってその都度汚物を処理するという作業が毎日続きました。でも出すことを確保すれば確実に食事が進んで、みんなが元気でいられるんです」「こんな地味な行政の働きがあって、神戸方式という災害支援の活動指針が確立されてきたんですね」。
会場からは「子供が未熟児で不安をかかえて子育てをする中、保健師さんか毎月家に来てくれて『大丈夫、ちゃんと成長していますよ』という言葉にいつも励まされていました」という声も。「保健師は成長や将来への不安を抱えるお母さんと寄り添って伴走しながら、お母さんとしての強さや判断力を養ってもらうために一緒にステップアップしましょうという思いでいます。家に入ってこられるのが嫌という人もいますが、訪問して生活のあり様にマッチングした助言をすることが大切。高齢者を支える方も同じです」。
認知症を遠ざける心がけとして「三食きっちりこだわりなくおいしく食べること。まめに健診を受けること。運動をすること。人との関わりや周囲に興味を持つことかな・・・」。動脈硬化や糖尿病などが認知症のリスクを上げることも。老後に備え生活習慣病の予防や改善も大切と田中さん。「ご自身の健康はご自身しか守れない。ご主人より自分のこと、その方がいい結果につながることが多いんです。ご自身をいたわって大切にしてください」最後のメッセージが強く優しく伝わってきました。
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今回の試食はお中元青いギフトカタログから赤花そばの十割そばと、北海道の完熟トマトだけを絞ったおなじみのトマトジュースを。                 (文:土田)