白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2017.5.26 白井操の料理講習会

2017/5/30 

毎回好評をいただいている白井の料理講習会。まずは先日放送のNHK「きょうの料理でご紹介したレシピのご紹介から・・・。
「『のりちりめん』は一度ぜひ作っていただきたいレシピ。『のりの佃煮』を20年前『きょうの料理』で紹介して、今回はそれにちょっと工夫を」。旨みがより求められる今の時代に合わせて、ちりめんじゃこを加え、焼き海苔を水で少し湿らせるのにもダシを使った「のりちりめん」に。「ちりめんじゃこは、関西では乾いたもの、関東ではウェットなものが主流。乾いたものは塩分が多めなので、さっと水で洗います。小さい上等なちりめんじゃこは、目の細かいザルを使って」。
海苔は小さくちぎってバットに広げダシで湿らせ5分ほど置きます。ダシと調味料を入れた鍋に海苔を入れ、弱めの中火で約10分。「焼き海苔を10枚も使う贅沢なレシピ。新しいものがやっぱりおいしいけど、古くなりかけたり、使いきれなかった海苔のおいしい使い道にも・・・」。「こんな簡単に家で佃煮が作れるなんて知らなかった」「想像していた味とは違った。海苔の味ってこれなんだ!」「のりの風味がなんとも言えない」と会場からは嬉しい声が・・・。

もう一品は「牛肉とマッシュルームのしぐれ煮」。「これもね、昔は牛肉だけで作ってたんだけど、きのこに旨みとカサの助けを借りて・・・」。薄く切ったエリンギとマッシュルームに塩と酒をかけ、電子レンジへ。きのこの旨みたっぷりの汁を煮汁に加えます。「薄切の牛肉は食べ応えがあるように少しずつまとめておきます。鍋に肉を並べてあまり触らずにアクを取りながら10分程で炊きあがり。いくつになってもお肉が好きという方に何かエネルギーがあるように感じますよね」。「旨みを吸ったエリンギはなんともおいしい」「お弁当に使ってみたい」とこちらも客席の反応は上々。
後半は青果売り場を楽しむアイディアを。「切干のようなささめ大根は、さっと洗って、生のままお酢・砂糖を入れたダシで戻すだけでいい箸休めになります。きゅうりを足しても合いますよ」。「こんなフェンネルの大束も怖がらずに買ってみて。鮭と合わせてマリネもおすすめ。生のハーブは香りが違います。使いきれない時は人に分けたり、ハーブ酢に。広口の瓶に色んなハーブを詰めて、かぶる程度にお酢をいれたら、ラップをかけてふたをします。最初の1週間は日に2~3度瓶を動かしながらカビが来ないように・・・。香りが良くてかどの無いお酢になりますよ」。「最近よく見かけるカラフルなスイスチャード。楽しい野菜が手頃な値段で手に入るのも西宮阪急の楽しさ」。「ゆがいたそら豆は豚肉の生姜焼きの付け合せにも。その時期にしか出回らないものをおかずに添えるだけでお皿に季節感がでます」。色んな野菜を次々に手にしながら楽しみ方をお伝えしました。

今回は白井から旭松の高野豆腐をお土産に。「高野豆腐は体にもすごくいいし、料理方法も色んな可能性があります。このセミナーでもご紹介した生姜焼きに高野豆腐を添えて、おいしいタレまでおいしく味わうレシピや、小さめに切った高野豆腐の含め煮にオリーブ油をかけてサラダ風に仕上げる・・・など新しい食べ方をまたご紹介しましょうね。家で作って食べてみてくださいね」。今回も和やかに駆け足ながら盛りだくさんのセミナーになりました。(文:土田)

セミナーレポート 2017.5.12 株式会社神戸酒心館 代表取締役社長 安福武之助さん

2017/5/18 

今回のゲストは阪神大震災で大打撃を受けた酒蔵を立て直し、海外での日本酒ブームの火付け役ともなった株式会社神戸酒心館 代表取締役社長の安福武之助さん。ノーベル賞の晩餐会で饗されるブルーのボトルに入った「福寿 純米吟醸」は世界に知られる銘柄に。
「創業は1751年、8代将軍吉宗の頃。それから266年、私で13代目です。震災後『神戸酒心館』として再スタートして20年になります。」

まずビデオで、神戸市北区大沢の酒米「山田錦」と六甲の伏流水「宮水」を使い、手づくりされる酒造りの様子の紹介から・・・。「糖分を持つぶどうから作るワインより、米のでんぷんを糖に変えて発酵させる日本酒は手間がかかるんです。」日本酒は酒米の出来不出来にかかわらず、杜氏の経験と技で毎年一定の品質を保つのが美徳とされ、ワインのようなヴィンテージはない分、杜氏の高い技術が必要なのだそう。
世界から日本酒のおいしさが注目される今でも日本酒業界は厳しいと安福さん。「私が生まれた昭和48年をピークに日本酒の販売量は減って今は当時の34%程。酒蔵の数は約半分です。」大学卒業後大手ビール会社勤務を経て、2003年家業に。78歳の但馬杜氏が酒造りを担い、後継者がない現実を見て、先々もずっと高品質の酒を作るために社員の手で酒を作ろうと決意されます。「まずは杜氏さんが来られた時にあらゆる数値データをとることから始め、だれがどの工程を担当しても失敗がないように工夫を重ね、杜氏の技の再現を目指しました。自信がついた頃、コンクールに出してみたら入賞したんです。」「へぇ~!金賞を何度も受賞されていますね。海外に売ろうと思ったきっかけは?」「ワイン市場は日本酒とは2桁も規模が違います。国内が縮小するなら海外へと。ウチの酒をカバンに詰めて、世界各国へ輸入業者を探す旅に出たんです。海外のワインの展示会で試飲をしてもらうと『白ワインのよう』と反応は上々で、ヒアリングを重ねては蔵での酒造りに生かしました」「ワイングラスで飲むと香りも楽しめますものね」。

本日の試飲も「福寿 純米吟醸」をワイングラスで。安福さんおすすめのマスカルポーネはそのままとクラッカーに鰹節と醤油を少しかけたものとを。鯛の刺身には醤油とオリーブオイル。「日本酒はそのものに旨みをたっぷり含みます。日本酒にソムリエがいなかったのはどんな料理とでも相性がいいからだと思います」。会場からはしばし感嘆のため息が。「このフルーティーでみずみずしい味わいをイメージしていただけるようにと青い瓶をずいぶん探しました」「ノーベル賞の晩餐会でもこの青は目立ってますね。」「東京のイベントで偶然同じテーブルになって意気投合した方がスウェーデンの有名なソムリエで・・・。スウェーデンへの輸出が始まり、魚を食べる北欧の人に日本酒のおいしさを広めたいと思っていたところに、日本人が4人もノーベル賞を受賞したと聞いて、晩餐会用にとテイスティングしてもらい採用が決まりました」「すごい!あなたのそのお人柄が素敵な偶然を招いているような気がするの。」「いえいえ。今はどこの国に行ってもシェフが『ウマミ』という言葉を普通に使いますし、日本酒や日本食に興味を持ってくれています。神戸のお酒が海外でも飲めるのは本当に幸せなことだと思いますね。夏に熟成し9月に出る“ひやおろし”、冬の新酒や燗酒・・・と、それぞれの個性を旬の味に合わせてぜひ楽しんでください」。
地元のお酒の素敵にふれてなんだか誇らしい気分になったひとときでした。

セミナーレポート 2017.4.27 白井操の料理講習会

2017/4/29 

今年はNHK「きょうの料理」60周年の年。先日このセミナーにゲストにきてくださった程一彦先生とともに4月から1年間、毎月1回のシリーズ企画「程一彦&白井操の楽しいごはんの時間」が始まりました。
「4月の放送、ご覧いただけましたか?」たくさんの手があがる中、セミナーでは番組で取り上げた薄切り肉のステーキを実演を交えてご紹介。子供たちが急に来た時に慌てて作ったのが始まり・・・というだけあって、作り方はへぇ~と目からウロコ。パックトレイの肉に塩・こしょうをして、火にかける前のフライパンに脂身を下になるように、トレイからパカッと移します。

「弱火でじわ~っと豚自身の脂で焼いていきます。」赤身が上になってパックされているときは形を崩さないように裏返して・・・とアドバイス。「大きなパック肉を買って残りを冷凍保存するときはラップをしてホイルでくるんで、日付を書いて保存をすると風味を損なわず、またおいしく食べられます。」
「10分ぐらい焼いたらひっくり返して。脂か出てきた肉の周りで付け合わせの野菜を焼きます。豚肉の脂のコクを野菜に生かして」。試食は蒸したじゃがいもとスナップエンドウ、大根おろしとみかんポン酢を添えて。「付け合わせはグリーンアスパラやそらまめ、たけのこなどもいいですよ。苦みがあるものは油に溶けだして食べやすくなります。火が早く入るようにフタをして。竹串を肉の分厚いところに刺してみて、透明の肉汁が出てきたら焼き上がり。仕上げにお酒とお醤油を少し回しかけて完成です。切り分ける時、私は傷がついてもいいようなお皿の上でハサミを使います。」フライパンでじっくり焼くのは魚の切り身や鶏肉でもおいしく仕上がるのでおすすめと白井。ポン酢だけでなくドレッシングや煮物の残りを活用したりと、味付けも自由に楽しんで。厚い肉のステーキは硬く感じる年配の方にも、口の中で旨みがじゅわ~っと広がる薄切り肉ならではのおいしさを味わっていただけたら」。

今回は5月2日の八十八夜に先がけて、森半の新茶も味わっていただきました。「コクが薄い分爽やかな味わいの新茶。新茶の茶殻は水気をぎゅっと絞って、白和えなど和え物にしてもおいしいですよ。ぜひ試してみて。皮つきのゆがいたエビがちょっと匂うときは安いお茶にじゃぶんとつけると匂いがとれます。フィンガーボールの代わりに使っても」。
かつて阪急百貨店で配布されていた白井の「カラダにやさしいレシピ集」からも楽しいレシピをご紹介。ブールというドンクにもある大きな丸い食事パンをくりぬいて、くりぬいた部分でサンドウィッチをつくってピクニック気分。サンドするのはジャムやディップ。「魚の骨の周りに残った身をとっておいて、クリームチーズやマヨネーズと混ぜればもうディップになります。大豆の湯がいたものを使っても。痛み始めたイチゴに砂糖をかけて、水分が出てきたら何度かレンジ加熱し、余分な水分を粉の高野豆腐や麩に吸わせて仕上げると簡単にジャムが作れます。日本ではあまり馴染みはないチャツネ。アジア系とヨーロッパ系で味がまったく変わりますが、サンドイッチには便利なもの」。
「新しい食品部長さんは西宮阪急の立上げの時にご一緒した西田さん、そしてレシピ集を作っていた橋本さんがセミナーの新担当になられました」と白井。ご挨拶とともに今年度のセミナーも本格発進です。         (文:土田)