白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

白井のエッセイ

NO.21 月刊「厚生」連載6年の間に

厚生労働省の広報誌 月刊「厚生」の廃刊に伴い6年近く続いていた連載が終わりました。
長い間にはいろんな企画がありましたが、中でも日本の伝統食を見直すという記事は私にとっても本当に勉強になりました。
 日本の豊かな山や海がもたらす産物が長寿の国を作りました。
これはふるさとの味を訪ねてという企画で、春の山形を訪れた際には、山野草を見事に使いこなされる地元の方たちにただ敬服したものです。
冬に疲れた体の老廃物を体外に出し、新しいエネルギーを呼び込むのに雪どけの山菜は大切な栄養源だったようです。
 又男子厨房に入るべしという企画では、歴代の厚生労働省の広報室長に出ていただいてスタジオで一緒に料理を作って楽しませていただきました。
意外にどなたも料理上手なのにはびっくりしました。5,6月は特別企画で知的障害者の方たちが住まわれるグループホームと重症心身障害者の方たちのグループホームをお訪ねする企画だったのですが、ご一緒して下さった厚生労働省の官僚の方のことに向かう姿勢には頭が下がりました。
常に施設を訪れる時は、ポロシャツ姿。スーツは大きな紙袋に入れて持ち歩いておられました。「学生の時に施設のボランティアをしていましたが、スーツで視察をされる役人の姿に何か違和感があって・・・」と。
 もしチャンスがあったら5月、6月号を見て下さいますか。
雑誌は大きな本屋さん、市役所や保健所関係にあります。
その方のあたたかさがにじみ出るような仕上がりになっています。

平成15年7月14日


NO.22 NTTドコモ関西 有光社長さんて素敵な方でした。

NTTドコモ関西有村正意さんは料理のできる社長さんです。
「単身赴任だと野菜不足になりがちだし、油と塩分も多くて。だから自分で作るんです。料理はね、楽しいです。食べることは好きですから。買い物は週末です。でも日持ちしないものは近くのスーパーで、ちょっと早く帰れるときにね。ウチの近くのスーパー、10時まであいてるから助かります…。」
すごい!自然体そのもの。いい感じです。
「朝ご飯が栄養を考えて摂るチャンスです。炭水化物は昼と夜にしっかり摂ってる、摂らざるを得ないのかな、だから朝は納豆にトマト、お豆腐にそれにカスピ海ヨーグルト。これは自分で作ってるんですよ。果物やジャムを混ぜて食べてます。野菜も10種類以上。食物繊維も毎日ちゃんと摂ってますよ。」
 最近作ったのはタコご飯。淡路島で釣ったタコで。
「たまねぎの袋に入れてぬめりを塩でもんで洗い流すでしょう。そしたらグラグラ沸いた湯の中に酢と醤油をちょっと入れてタコをゆがきます。タコが柔らかく色もきれいになるんですよ。あ、この時のゆがいた汁をとっておくんです。そしてお米を洗って、さましたこの汁でご飯を炊きます。昆布も一枚入れてね。タコも食べやすく切っていれます。赤飯みたいになっておいしいんですよ。これは評判でした。」
「じゃあもうひとつ教えちゃおうかな、究極の有村パスタ。お湯沸かすでしょう。健康を考えて塩は少なめです。まずスパゲティを入れるでしょう。ちゃんと時間を計っていれますよ。野菜も同時にかたいもの順に入れます。スパゲティーが茹で上がるころに野菜も茹で上がるって感じです。できたらかにばさみみたいなのでお皿にあげてあつあつを塩こしょうでいただきます。これはぜったい挽きたての香りのいい黒こしょうがいいです。粉チーズもいいですね。これは奥さんに教わったんですが、超ヘルシー簡単料理です。」
おみごと!
ご飯作りを通してたくさんのメッセージが伝わりました。
有村さんと話しているとお人柄を感じます。バランスのいい方だなぁと。
仕事は分刻み、なのにその余裕と優しさはどこから来るのかと思っていましたが、このあたりに笑顔のエネルギーのもとはあったんですね。

平成15年8月11日


NO.23 河内源一郎商店 山元先生から麹を学びました。

味噌、みりん、酢、酒、甘酒、これら日本の伝統的な食事を支えてきた製品の原料はお米や麦や大豆ですが、麹があってこそ生まれたものです。
私はこの夏、すてきな学びがありました。場所は九州の鹿児島、河内源一郎商店の社長、山元正明先生にお会いしたことです。
麹といえば食品を作るために必要な材料ぐらいにしか思っていなかった私は、生きた麹を生で食べることがどれ程人間の身体にとって大切なことであるかを教えていただきました。
麹にはでんぷん分解酵素、たんぱく質分解酵素、脂肪分解酵素の三大消化酵素を多く含んでいること。だから麹を入れた味噌はおいしい。
又、お砂糖を入れないのに甘酒は甘くおいしくなる。
魚を塩漬けにするとき麹を入れると旨味が濃く、ひどい臭いもせず熟成していくのです。
豚肉を漬けると身体にやさしい豚肉になり、糠に入れると嫌なにおいがなく、かき混ぜなくても酢っぱくならない糠味噌漬けができるのです。まさに目からウロコです。
この秋に、私が理事長を務めるNPO法人「日本自然素材研究開発協議会」の食と健康を考える会に山元先生を講師にお招きすることになりました。
今、日本は焼酎ブーム。なんと今出回っている名前の通った焼酎のほとんどは先生の所の麹菌だそうですよ。

特定非営利活動法人 日本自然素材研究開発協議会
Eメールアドレス  info@npo-jnmc.net
ホームページ http://www.npo-jnmc.net

平成15年9月21日


NO.24 神戸へスタジオ移転します。

大阪にスタジオを作って丸8年が経ちました。
あの阪神淡路大震災で神戸のスタジオの食器の多くは割れ、ライフラインはすべてストップ。料理研究家のうれしそうなクッキングより、もっと生きていくことに密着したことが大切な状況でした。
当時の私は仕事どころではなく、あちこちに野菜料理の小鉢ものを配るボランティアもだいぶ手慣れてきた時でした。久しぶりに有馬にお風呂に入りに行き足をうーんと伸ばしたとたんです。「よし、勇気を出そう!」と新しい気持ちが湧いてきたのです。
自宅から大阪へ電車に乗って通う日が始まりました。車窓の景色は、神戸はあれほど大変なのに淀川を越えるとほとんど普通に見えました。
後から聞くと、結構地震の影響を受けたところもあったようでしたが、街行く人は普段の生活をしておられるのが不思議でした。
今つくづく振り返ってみると本当に皆さんに支えれた日々でした。
本作り、テレビ、ラジオの収録、雑誌やパンフレットの撮影、企業のアドバイスに料理教室などなど料理研究家としての仕事を切れ目なく続けさせていただけたことをつくづく感謝します。
さて、新しいスタジオは神戸の住吉山手、白鶴美術館のすぐ下です。ワクワクしています。
便利な街中から庭にイノシシが入ってくるという場所に移転です。
「今日食べたものが明日の笑顔のエネルギーになることを祈って」をモットーに新しい白井操クッキングスタジオ10月末に神戸のスタジオスタートです。

平成15年10月20日


NO.25 「長寿のごはん」発売お知らせ

老けない、ボケない、太らない・・・。
野菜、大豆、魚、海藻、ヨーグルト・・・。とくると、「長寿のごはん」。講談社から13日新発売です。
なにしろ楽しい撮影でした。
楽しい理由は色々あって、まずスタッフの食事がこの料理本の通りとても健康的なメニューであること。
これはアシスタントの悦ちゃんの配慮によるものなのですが、お昼前に○○と○○を撮影するとちょうどお昼にあったかい○○が食べられるから、夜までに出来る料理は○○と○○で次の日のお昼用に残しておいて・・・。
なんて調子でまずスタッフの胃袋が守られました。
そしてデザインのおもしろさ、自分達も本を作りながら写真がおもしろいのです。
誰かが笑いを提供し皆で分かち合う。これこそ健やかライフです。
 エッセイの部分は料理の撮影の後、私の身の回りのことを書きました。
教室に通う女の子からのお便りに、「ごま」のページに書いてある「母がすり鉢に残ったごま衣で小さなおにぎりを作って『ハイ!』と口に入れてくれる」という話を読んだ時、白井先生が私たちに料理を教えて下さる時に時々そのようなことをしてもらっている事を思い出して嬉しくなりました。とありました。私の普段のままを書いたつもりです。
栄養計算や塩分計算は聖隷三方ヶ原病院に、もちろん長寿の料理のコツなどアドバイス付きです。
ぜひ書店で手にとって見てください。
本の中で私がずっと笑っていますよ。

平成15年11月18日