白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

白井のエッセイ

NO.31 韓国での素敵な旅より

李 英蘭さんは、以前にもこのエッセイに書かせていただいた李 吉鉱さんの奥様です。李吉鉱さんは、韓国のサムソングループを世界有数の企業に育て上げた主要メンバーのお一人で、日本サムソンのトップとしても、長い間活躍してこられた方です。李 英蘭さんとお会いしたのは、2年前の韓国でした。
初めてお会いしたときから、その謙虚で暖かい人柄に惹かれてきました。英蘭さんはご結婚後まもなく、李さんの日本派遣とともに来日され、25年間ものあいだ、夫の李さんを支えながら、日韓を繋ぐ大切な架け橋となってこられました。
「私を韓国のお姉ちゃんと呼んでちょうだい。あなたを妹のように思うから。」嬉しいお言葉に感動しつつ、ご招待に甘えて、連休の後半をソウルの李さん宅で過ごさせていただきました。
滞在中は、本当に心のこもったおもてなしを受けて、心も体もほっこりとして帰ってきました。
李さんの素敵なお宅は、論峡洞のお屋敷街にありました。一歩はいると、まるでホテルのスウィートルームに美術館が入ってるみたいです。
「うーん、すばらしい・・・。」お部屋の調度や雰囲気もさることながら、お二人の人柄が伝わる温かいおもてなしのお陰で、韓国がずいぶん身近に感じられるようになった旅でした。
何しろ只今日本は、「冬のソナタ」が大ヒット中。ドラマを通して、今まであまり知られてこなかった韓国の若者の暮らしも伝わってきます。
ワインを飲んだり、パスタを食べたり・・・、あれ?キムチはどうなってるのだろう?と、英蘭さんに尋ねてみると、若者の中には、辛いキムチを好まなくなっている人も増えてきているとか。
他に最近の変化といえば、結婚後も働く女性が多くなり、テンジャンチゲ(韓国風味噌汁)は作っても、丁寧に煎りじゃこや昆布、干しだら、干し椎茸、干しえびなどを揃えて、だしをとるような人は減っているとか。
日本でも、即席だしで済ませる人が多くなっているのと同じでしょうか。ただ、日本の方が、もっと心配なのは、お野菜不足。英蘭さんも、「私から見ると、日本よりも韓国の若者の方が野菜を食べる量は、まだ多いんじゃないかと思いますよ。」と。
確かに、デパートやスーパーでも野菜の種類や量は日本よりもずっと豊富だし、お店でキムチや焼肉をまくサンチュは、お変わり自由。
お店の人も気持ちよく取り替えていきます。前菜代わりにたくさんついてくるキムチやナムルのことを考えても、お野菜は、意識しないでもずっとたくさん食べられているように感じました。
日本と韓国の違いと共通項。25年もの間、若い日々を日本で過ごされた彼女のメッセージは、心にすーっと入ってきました。
子育ても日本で終え、夫の仕事をずっと支えてこられた李 英蘭お姉ちゃん。彼女から伺うお話は、日本から見た韓国の姿だったり、韓国から見た日本の姿だったり、両方の国をきちんと知っている彼女のお話はとてもバランスがいいのです。豊かなお人柄は、いつも前向きでとても68歳には見えません。
今、日本と韓国の間は、いろんな面で交流が急速に進み、テレビドラマのお陰もあって、お隣の国はうんと近いものになっています。
観光に訪れる焼肉やピビンバの国だけじゃなく、もっといろんなことをお互いに深いところで理解するチャンスなのでしょうね。
韓国にできた素敵なおねえちゃん、お兄ちゃん、素敵な旅をありがとうございました。
きっとまた近いうちにお目にかかれることを楽しみにしつつ・・。

平成16年5月12日


NO.32 頌栄幼稚園名物園長 阿部扶早さん

頌栄幼稚園のお母さんたちにお弁当作りのヒントつきの講演会をさせていただきました。
115年も前からキリスト教の保育をしてきた名門幼稚園の園長先生は、阿部扶早さんという名物先生。
彼女の体中からあふれ出る子供の可能性を伸ばす力は素晴しいものです。「操!こどもがね・・・・」時として嬉し涙を浮かべながら子供の持つエネルギーを受け止めてやらねばならない痛みや喜びを話してくれます。
彼女との出会いは40年ほど前。本も何冊かともに作ってきましたが、子供が日々の暮らしの中で喜びや感動をみつけ、人への思いやりや生きていく知恵を学んでいく姿をテーマにしてきました。
 近頃は、益々複雑化する社会の中で、あらゆる仕事がスペシャリストを求める時代になってきているように感じます。
自分に何ができるのか、自分のオリジナリティーは何なのか。そんな問いかけが増えているなか、人真似ではない、その人独自の創造性の大切さを感じます。
そして、それを隣の誰かと共有できる力が必要なのかとも思います。
子供の頃に感動したこと、その感動を言葉で表現して人に伝えること、そんな訓練は、子供が親の用意した世界の中にいる間にこそ、たくさん経験させてやることができるのではないでしょうか。
そんなメッセージを私は「食」から、彼女は「保育」を通して、してきたように思います。
 こんなお話も、6月15日(火)にNHKでさせていただくかもしれません。また、詳しくはお知らせのページをご覧下さい。

平成16年6月10日


NO.33 最近不思議に思うこと

時々なんでだろうって思うことってありません?私の最近の不思議を
書いてみます。あまり難しく考えない方なのですぐ忘れてしまうのだけど、ふと、なんでだろうって・・・。
・冬のソナタ、私も毎週土曜日楽しみにしているのだけど、なんであそこに出てくる人たちってコート着てご飯を食べるんだろう・・・寒いのかな?
・最近の若い女の子の服。下着なのか上着なのか分からないのが多いけど、下着のような薄い服の下着ってどんななんだろう・・・。
・・・ついでに
・きれいなお姉さんたちがはいている細くてヒールの高いかかとのサンダル、階段を降りる時ってどんな気持ちなんだろう。2階からつんのめって落ちる直前の気分と似ているのかな~。
・テレビのCMでお祭りの縁日の通りを子供を頭に乗せてぐるぐるまわしながら歩く人の側で私も2人を見てみたい。本当にまわしているのかしら・・・。
首、大丈夫?

私、人がどうしたこうしたとか、いわゆる噂話は余り興味がないんだけど、道を歩いたり車で道路を走っていると、不思議が一杯あって毎日興味深々です。

平成16年8月2日


NO.34 夢の機内食

この夏は飛行機に乗ることが多く、空のマナーにもいろいろ考えさせられました。
友人の客室乗務員から聞いた話ですが、“困ったさん”はみんなだいたい同じ問題を起こすようで、何度お願いしても携帯電話の電源をオフにしない(機長から以上を指摘され、乗客に訴えたら何人もの人がオンにしたままでびっくりしたとか)。トイレでたばこを吸う。アルコールを飲みすぎて大トラになった挙げ句倒れる。彼女達の苦労が目に見えるようです。せまくて思い通りにならない状態で長時間我慢するわけですから、お客の方にもストレスがたまります。
 それにしても機内食を作る会社の人には頭が下がります。聞くところによると、乗客の宗教上の理由に配慮して複数のメニューを用意したり、何食分積み込むかなど搭乗30分前まで調整を続けているそうです。客室乗務員の動線に配慮することも彼らの仕事だとか。機内食ゆえのさまざまな制限もあると聞いて、たびたび配られる食事も真剣にいただきました。
 ところで、私の夢の機内食を作ってみました。聞いて下さい、航空会社のみなさん!どうしてこれだけ毎日世界中を飛び回っているのに、各地のおいしい旬が味わえないのかしら。行きは思いをはせてその国の料理を一口味わい、帰りは和食の健康食を食べて疲れた体を機内でいやす。ごく自然なことだと思うのだけど・・・・。
 さて、私の考えた機内食。ウーン、行き先はカナダか北欧か。焼いた和風味(これは選択できる)サーモンの下に野菜のソテー、乾かないよう水分の出やすいキノコも入ってます。サラダは寒天で固めた野菜とスープにドレッシングをかけて。器ごと常温で固まらせています。色も楽しい!あとは好みのおにぎりをいくつかチョイス。デザートは果物で・・・・。なーんて無理かな?

2001年8月2日 毎日新聞連載「食べにおいでよ」より

平成16年8月11日


NO.35 日本の食卓づくり

米国に留学、そのまま結婚して高校の先生になった方が6月、先生と高校生総勢16人を連れて来日、うち女性の先生8人が私のスタジオにみえました。
 日本には夫婦茶碗というものがあってそれは柄や素材は同じでも大きさに大小があること、お箸も色違いで長短があること、家族で一人一人のお茶碗が決まっている家庭が多いことなどを伝えると、彼女たちはその一つ一つを手に取って感心していました。言葉にするのは苦手だけど、気持ちを物にこめる日本の食卓づくりのいくつかを理解されたようでした。
 日本のホームステイ先で体験した不思議も話してくれました。ごちそうとして出されたもののほとんどが、すき焼き、手巻きずし、お好み焼きのいずれか。外国からのお客様だからと、悩んだらみなさん同じメニュー選びになったのでしょう。季節を考えて、ナスの揚げ煮なんてどうでしょうか。大根おろしを加えてみぞれ煮に。さっぱりして印象的な味わいです。
 一人がお世話になっている家の奥さんはいろいろ作ってくれるのはうれしいのだけど、いざテーブルに着くと英会話のこともあるのでしょうが、食べる時は一切話さない。食べ終わってからニコニコと話す。同調する人が何人かいました。
 日本人は一人膳の時代が長く、食卓を囲むようになってからも、食事中に話すことはお行儀が悪いといわれました。彼女のお母さんは、お客様に料理がおいしとほめられると必ず、「食卓に乗っているものも大切だけど、いすの上の人はそれをもっとおいしくする」と言っていたそうです。食事を楽しくするというのは、共同作業なのですね。

1998年7月9日 毎日新聞連載「食べにおいでよ」より

平成16年8月18日