白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

ムッシュ・フルーリ花探検 第6話ストレプトカーパス

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと一緒に花探検しよう!
ムッシュ・フルーリ園長のとっておきの植物セミナーが開催されます。
思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。
フラワーセンターのお花とムッシュ・フルーリに会いに行きませんか?
(参加の皆様には会場で操さんのレシピプレゼントもあります。)
6/22(土)13:30~15:00 ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学
★参加には予約が必要です。予約・お問い合わせは・・・
 TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

第6話 ストレプトカーパス
いよいよ梅雨入りも近くなってきたね。梅雨の花といえば、そう、やっぱりアジサイだね。アジサイほど日本の梅雨に似合う花はないよね。ということで、今回はアジサイをテーマにしようと思ったけど、ムッシュ・フルーリとしてはあまりにも能がないので、花探検というタイトルに見合った花にするよ。ということで、フラワーセンターらしいこの時期の花といえば、やっぱりストレプトカーパスじゃな。
ストレプトカーパスの園芸品種①

ところで、ムッシュ・フルーリのファンのみんななら、もちろんストレプトカーパスはよく知っているよな。 あっ、いま知らないって声がちらちらっと聞こえたぞ。あまりよく知らないファンもいるようなんで、話すとするかな。しっかり覚えておくんじゃぞ。

フラワーセンターには、全国どころか世界に誇れる植物コレクションがあるんだけど、何と言っても一つは食虫植物、そして二つ目はゲスネリアなんじゃ。ゲスネリアっていうのは、イワタバコ科の植物の総称で、日本にはイワタバコが全国的に分布しているな。イワタバコ科の植物は、熱帯や亜熱帯を中心に3000種余りあって、観賞価値の高い花を咲かせるものも多いんじゃ。このシリーズの第1回目で話したスミシアンサもその一つじゃったのぉ。みんなが良く知っているものでは、セントポーリアやグロキシニア、アキメネスなんかがあるかな。

ストレプトカーパスは、約130種もの原種が主にアフリカに自生しているんだけど、世界中で数多くの園芸品種が育成されていて、みんなが目にするのはほとんどが園芸品種だろうな。ストレプトカーパスは、大きく分けて葉がロゼット状に展開し茎が立ち上がらない無茎種と茎の伸びる有茎種に分けられるんだ。無茎種は地際から多くの葉を広げ、青、紫、ピンク、白など多くの花色を持った鉢花として販売されているんだ。無茎種の中には、一葉種と言って、種が発芽して双葉の片方の一枚だけが成長し続けるという変わったものもいて、その葉の形から「牛の舌(ウシノシタ)」と呼ばれているんだ(写真参照)。
「牛の舌」と呼ばれている一葉種

有茎種にはサクソラムという代表的な原種があって、一時、ハンギングバスケットに植えたものがよく出回ってたから、みんなもきっと知っていると思うよ。
さて、ストレプトカーパス(Streptocarpus)という名前は、ギリシャ語で「捻じれた果実」という意味で、花の咲いた後に細長くて捻じれた莢ができることがあるからなんだ。その莢には大変細かな種がたくさん入っているから、もし種が取れたら播いてみるといいよ。

フラワーセンターがどうしてストレプトカーパスなどのゲスネリアのコレクションを始めたかっていうと、比較的弱光線を好み、花色が豊富でコンパクトな草姿なので、1980年代に流行したセントポーリアに続く室内植物として普及させようとしたからなのさ。当時、国内で出回っていたストレプトカーパスは、わずかな海外からの導入品種だけで、日本の気候になじまず性質が弱いものが多かったので、それらの課題を解決すべく育種に取り組んだってわけさ。今まで育種に利用されていなかった原種を海外から取り寄せ、それらの優れた性質を導入して、今までにない育てやすくて、花色や花型の変化に富んだ数多くの園芸品種を育成することができたんだ。

ストレプトカーパスは、直射日光を嫌うので、春と秋には50%程度の遮光を、夏は日陰で、冬はレースのカーテン越しの窓辺などで栽培すればいいのさ。春と秋は良く成長するので、数日おきに鉢の底から水が出るまでたっぷりと水を与え、冬は乾かし気味に、夏は時々株全体にシャワーをかけてやるといいよ。上手に育ててやると、春から秋まで咲き続けてくれるぞ。

ストレプトカーパスの園芸品種②

また、ストレプトカーパスの面白いところは、葉挿しで繁殖できるってこと。細長い葉を根元から切り取って、3枚くらいに分割して根元側の3分の1くらいを清潔なバーミキュライトなどに挿しておけば、発根して新芽が出てくるんだ。お気に入りの園芸品種はこうして増やすといいよ。

ストレプトカーパスの園芸品種③

どうだい、ストレプトカーパスを栽培してみたくなったかな? まずは、フラワーセンターに来て、ゲスネリア室を覗くことだな。インテリアとして飾ることのできる可愛いストレプトカーパスが待ってるぞ。

操の「へぇ~!」
近くの美容院の窓辺にもたくさんのセントポーリアが並んでいます。フラワーセンターでも花の育種をされているのですね。園芸の世界もファッションと同じように、時代とともにブームが移り変わりますよね。あじさいやダリアはどんどん新しい品種が生まれて、今ブームを感じます。フラワーセンターの花壇も流行を追いかけたりするのかしら。

「ストレプトカーパス」を見に行こう!!
兵庫県立フラワーセンターのHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいことが満載です。

ムッシュ・フルーリ花探検 第5話サラセニア

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと一緒に花探検しよう!
「春のうきうきフェア」開催中の兵庫県立フラワーセンターでは、
春の花が咲き誇る園内に、ムッシュ・フルーリ園長が登場して
「へぇ~!」と楽しめるイベントを開催!!
青空を泳ぐ鯉のぼりとムッシュ・フルーリに会いに行きませんか?
(参加の皆様には会場で操さんのレシピをプレゼントします。)
➀5/18(土)13:30~15:00 ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学
②6/22(土)13:30~15:00 ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学
※参加ご希望の方はご予約をお願いします。予約・お問い合わせは 
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

第5話 サラセニア
世間は10連休という超ゴールデンウィークの真っ盛り。フラワーセンターでは、春の一大イベント「チューリップまつり2019」も終わり、花壇の植物も夏模様に衣替えの時期が来てるんだ。
さて、そんな中、温室に囲まれた中庭では、サラセニアの花が最盛期を迎えつつあるんだ。あれっ!サラセニアって何?って声があちこちから聞こえてくるぞ。わかったよ、じゃあ、今日はサラセニアについて話すとするか。

サラセニアっていう植物は、食虫植物の一種で、瓶子体(へいしたい)と呼ばれる筒状の葉に虫を落とし込んで捕らえ、消化酵素やバクテリアなどにより捕らえた虫を分解し、養分を吸収するんだ。和名はヘイシソウ(瓶子草)っていうんだけど、筒状の葉が酒器として使われている瓶子に形が似ているから名付けられたのさ。だから、その筒状の葉を瓶子体って呼ぶのさ。
えっ! 瓶子が分からないって? 瓶子っていうのは、神事で使われるお神酒を入れている酒器のことさ。因みに英名はピッチャープラント(pitcher plant)で、みんなが居酒屋で大量のビールを注文した時に使われる容器、そう、ピッチャーに似ているからそう呼ばれているんだ。どっちにしても、お酒を入れる容器だね!
 神事に使われる瓶子

サラセニアの仲間は、北アメリカ東岸の亜熱帯地域からカナダにまで分布していて、8種類ほどが知られているんだ。日当たりのよい沼地や湿地帯を好み、寒さや暑さにも強いため、日本でも一年中戸外で栽培できるんだ。でも、常に直射日光と水を欲しがるので、日当たりのよい場所で、腰水(鉢を深さ3~5センチ程度の深さの水につけて管理する)をしてやらないといけないけどね。ただし、真夏の暑い時期に水がお湯にならないように気を付けるんだぞ。大変丈夫で栽培しやすいけど、乾燥にはめっぽう弱いので絶対に水を切らさないようにな。それともう一つの注意してほしいのは、肥料はやらないこと。もともと非常にやせた土地に生育しているので、無肥料で十分育つのさ。分かったかな?
 瓶子体

                                                  第2話のネペンテスの時にも説明したけど、サラセニアもネペンテスと同じように、落とし込み式の捕虫方式で、甘い香りと蜜で昆虫たちを誘い込み、瓶子体のふたの下あたりまで来たら、もうほとんど捕まったも同然。ふたの裏や瓶子体の内側には下向きに細かい毛がたくさん生えており、二度と登ってこられないようになっている。なぜか、翅のあるアブやハチでさえ、落ちたら最後、まず出てこれないんだから凄い仕組みなんだね。
 瓶子体の上部(虫が落ち込むところ)
わしも瓶子体の中に落ちて、翅をブンブンと鳴らせているアブやハチを幾度となく見ているのさ。瓶子体の底には、たんぱく質を分解する消化液が溜まっていて、捕らえられた昆虫たちは、じわりじわりと体を溶かされていくんだ。そしてサラセニアは、瓶子体の内側から消化液に溶け出した養分を吸収して、栄養分として取り込んでいくのさ。
とはいえ、みんなが自宅で栽培するときには、わざわざ虫を捕まえて瓶子体の中に入れなくてもいいんだぞ。捕虫による栄養の摂取は、あくまでも補助的なもので、全く虫が捕らえられなくても弱ったりはしないから安心しな。すべて自然に任せておけば大丈夫。放っておいてもいつの間にか虫がはまり込んでるさ。

 

さて、このサラセニアは、花がちょっと変わった形をしていて、色がきれいなので、観賞価値も高いんだ。蕾のときはまん丸の球状で、株の根元から茎が立ち上がってきて、やがその茎の先端が曲がって蕾は下向きになるんだ。顎弁と花弁が5枚ずつあって、それに雌蕊と雄蕊があるんだけど、この雌蕊が不思議な形をしているんだ。雌蕊の先端は五つに分かれて反り返り、その間に水かきのような膜があるので、ちょうど5本の骨の雨傘を上下さかさまにしたような形になるんだ。
 花(赤く垂れ下がっているのが花弁)
そして、その骨と骨の間から5枚の花弁が垂れ下がっているのさ。どうだい、変わった形をしているだろう。綺麗な花の色に誘われてやってきたハチは、雨傘のような雌蕊と花弁の間から中に入り込んで、花粉を体中に付けてしまう。そして、花から出ようとするときに雨傘の骨の先端にある柱頭にその花粉が付着して受粉できるっていう塩梅さ。これも、昆虫に花粉を媒介してもらうために、長い時間をかけて作り上げた芸術作品だね。是非、フラワーセンターに来て、じっくり観察してご覧。植物たちの不思議に感心すること間違いなし!!
 全体の草姿

操の「へぇ~!」
へぇ~。私は基本、可憐な花が好きなので、「すご~い!」「かまれそう~!」という花には怖気づいてしまうんだけれど、どんな花にも生きようとする力があって、いろんな花の形になるんですね、フルーリさん!植物から学ぶことはたくさんありますね。
「サラセニア」を観に行こう!!
兵庫県立フラワーセンターのHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

ムッシュ・フルーリ花探検 第4話 デルフィニウム

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと一緒に花探検しよう!
「春のうきうきフェア」開催中の兵庫県立フラワーセンターでは、春の花が咲き誇る園内に、ムッシュ・フルーリ園長が登場し、「へぇ~!」と楽しめるイベントを開催!!
満開のチューリップとムッシュ・フルーリに会いに行きませんか?
(5・6月は参加の皆様に会場で操さんのレシピプレゼントもあります。)
①4/20(日)10:00~ ムッシュ・フルーリの園内ガイドツアー
②5/18(土)13:30~15:00 ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学
③6/22(土)13:30~15:00 ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学
※①~③いずれの会も予約が必要です。予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)

第4話 デルフィニウム
うきうき,ワクワク、いよいよ春本番がやってきたね。フラワーセンターでは、チューリップが真っ盛り。最近は春が早く来るので、さっさと見に来ないと今月半ばにはピークを過ぎてしまうぞ!
さて、チューリップが終わった後に園内をにぎわす花といえば? そう、ダイアンサス(ナデシコ)に、ルピナス、シャレ―ポピー(ひなげし、虞美人草)、そしてエスコルチア(花菱草、カリフォルニアポピー)などなど。おっと、肝心なものを忘れてはいませんか? おっ、そのとおり、デルフィニウムだね。毎年、4月の後半から、大温室前の中央花壇で一際目を引くデルフィニウムは、その大きさ、草姿、花色、どこを取ってみても、春の花の王者に相応しい出で立ちだからねぇ。

↑花穂が60~80cmにもなり、草丈が1.5mほどになる雄大なデルフィニウム

デルフィニウムという名前は分類上の属名で、デルフィニウム属には300種類ほどの野生種があり、ヨーロッパのピレネー山脈からアルプス山脈、シベリア、中央アジアから中国西南部にかけての標高1300~2300mの山岳地帯、アフリカの高山地帯など、いずれも海抜の高いところに自生しているから、夏の暑さにはめっぽう弱くて、日本の西南団地では夏越しが難しいんだ。だから、本来は宿根草なんだけど、秋まきの一年草として取り扱われているのさ。
フラワーセンターでは、秋に種を播いて、翌年の春に花を咲かせるように育てているんだぞ。早春に咲く花菜が終わる3月半ば頃に、デルフィニウムに植え替えると、チューリップが終わるころから咲き始めるのさ。今年もまた見逃さないようにな。
デルフィニウム属には数多くの野生種があるって言ったんだけど、その中でもエラートゥムとグランディフローラという野生種を中心に品種改良されてきたのが、抜けるようなブルーの花で、雄大な花穂を持つ園芸品種のグループなんだ。パシフィック・ジャイアント・シリーズやオーロラ・シリーズなんかが有名だけどね。


↑花の中心部にある黒い(左側の花)、または白い(右側の花)小さな花弁
(綺麗なピンクやブルーに色づいているのは顎弁)

デルフィニウムの花をよく観察すると、ブルーやピンクなどに色づいた花弁の中心に、白もしくは黒い小さな花弁状のものがあるだろう? でも、花の後ろ側をよく見ると、本来あるはずの緑色をした顎弁が見当たらないよね。ということは? 花好きの皆ならもう解ったかな? 以前にもこのコーナーで書いたと思うけど、デルフィニウムはキンポウゲ科に属していて、キンポウゲ科の特徴といえば? 思い出したかい? そう、顎弁が色付いて花弁の役割をしていて、花弁が退化しているんだったね。デルフィニウムもその特徴を踏襲していて、綺麗に色づいている花弁のようなものは実は顎弁で、真ん中にある小さな白や黒いものが花弁なんだぞ。この小さな花弁は、英語でBee(ビー、蜜蜂)と呼ばれていて、花にとまった蜜蜂のように見えるからそう呼ばれているらしいんだ。
キンポウゲ科に属するものは、クリスマスローズ、アネモネ、ラナンキュラス、クレマチス、フクジュソウ、オダマキなどなど、数え上げればきりがないけど、すべて顎弁が色付いていて、花弁が退化しているかなくなっているものばかりだね。その証拠に、花の後ろ側には緑色をした顎弁がないだろう。この際、一度よ~く観察してみてごらん?

↑少しすっきりしたタイプの新しい園芸品種のグループ

ちなみに、デルフィニウムっていう名前なんだけど、これはギリシャ語のdelphis 、英語で言うところのdolphin、すなわちイルカのことで、蕾の形がイルカによく似ているからだそうだよ。観察ついでに、蕾の形も良く見ておくんだよ。

操の「へぇ~!」
最近、町の花屋さんでもよく見かけるようになったデルフィニウム。青がとても印象的ですよね。花姿も立派なので、青系の花を集めたブルーガーデンでも映えそう。色とりどりのチューリップの後にデルフィニウム一斉に咲くと風景も一変しますね。

「デルフィニウム」を見に行こう!!
兵庫県立フラワーセンターのHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。