白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

「恨み」と「秘密」のオトギリソウ

みんなはオトギリソウって言う花を知っているかな? 日本中の山野に自生している植物で、夏になるとスクッと直立した細い茎の先に3㎝ほどの黄色い花をたくさん咲かせるので、庭に植えている人もいるくらいなんだぞ。
 オトギリソウの花

さて、今回はこのオトギリソウって名前の由来を勉強してもらうとするとするかな。ときは平安時代、花山天皇の頃、晴頼という優れた鷹匠が居たんだそうな。晴頼は飼っている鷹が傷つくと、ある薬草を使って傷を直ぐに治してしまっていたんだ。鷹匠の仲間達はその薬草を名前を聞き出そうとしたんだけど、晴頼は頑としてその名を明かすことはなかったんだ。ところが、彼の弟がうっかりとその名前を漏らしてしまったもんだから、さあ大変。晴頼は激怒して即座に弟を斬り殺してしまったんだ。そのできごと以来、秘密の薬草はオトギリソウ、つまり弟切草と呼ばれるようになったんだぞ。しかも、弟を斬ったときに飛び散った血しぶきが、葉や花に転々と黒いシミを残したと言われてるんだ。
 オトギリソウの花の拡大
(弟の血痕とされる黒い点や筋が見える)
 オトギリソウの葉の黒点
 オトギリソウの葉の裏の黒点

どうだい、なかなか怖い話だろう? オトギリソウという名前がこのような言い伝えが由来なので、その花言葉も「恨み」、「秘密」、「敵意」など、あまり好ましいものじゃないんだよな。だから、庭植えするのを忌み嫌う人も居るんだけどね。でも、別名には「鷹の傷薬(タカノキズグスリ)」や「血止め草(チドメグサ)」など、薬草としての効能を意味するものもあるんだぞ。

オトギリソウは文字通り分類学上「オトギリソウ属」に含まれるんだけど、このオトギリソウ属は学名では「Hypericum(ヒペリカム)」と呼ばれていて、欧米ではこの名前で呼ばれる園芸植物が数多くあるんだ。日本にも古くからあるビヨウヤナギやキンシバイなどがそうで、最近では、花じゃなくて果実を観賞するヒペリカムの園芸品種も切枝として花屋さんの店先を賑わせてるよね。
ガーデンや花屋さんでヒペリカムを見つけたら、オトギリソウの名前の由来となった、遠い昔の言い伝えを思い起こしてみるのもイイかもね。
 ギンシバイの花
 ビヨウヤナギの花
 観賞用ヒペリカムの果実

多肉植物とサボテン

最近、多肉植物やサボテンが、特に若い人たちの間で流行っているらしいね。えっ、そんなの知らないって? おいおい、ちゃんとアンテナを張り巡らせて、世の中の動きぐらいは知っとかなくちゃ、年寄り呼ばわりされちまうぞ!
 ハオルシア
 リトープス
ところで、流行っている理由っていうのが、普通の植物に比べて形が変わってて、可愛くてインテリア小物として使えて、しかも乾燥に非常に強いので、水やりをちょっとくらい忘れても、びくともしないところなんだって。流行るのは嬉しいけど、手入れしなくていいからっていうのは、ちょっと感心できないなぁ。生き物として扱っていないってところが、どうなんだろうって思っちゃうよ。
まあ、ぼやきはそれくらいにして、本題に戻ろうか。よく、これはサボテンですか、それとも多肉植物ですか?って訊かれることがあるんだけど、みんなも訊いたことがあるんじゃないの?
まずは、正解を話しておこうか。多肉植物というのは、葉や茎、根に水分を貯蔵して肥大した組織を持った植物の総称で、同じ様な能力を持ってるけど、植物学的には何の血縁関係もないもの同士が集まったグループなんだ。とうことは・・・・・、そう、よく気がついたね、サボテンも茎に水分をためて肥大しているので、多肉植物に含められるんだね。 多肉植物の中でも、サボテンは非常に種類が多く、しかも植物学的にもサボテン科に分類されている大きなグループだから、多肉植物から独立して呼ばれているだけなんだね。
  アエオニウム
 オオベンケイソウ
 キダチアロエ
 マツバギク
サボテンは、サボテン科に分類されるグループで、南北アメリカ大陸に千数百種も自生しており、その形や生態、生活環境も様々なんだ。みんなはサボテンは水が要らないって思っていないかい? 実はサボテンは乾燥には非常に強いけれど、生長期には十分な水が必要なんだ。本当は水が大好きで、水栽培もできるくらい何だぞ。乾燥にめっぽう強いことから、ずいぶん誤解されているんだよ。
 金鯱(サボテン)
 鶯鳳玉(サボテン)
サボテン以外の多肉植物も、乾燥には強いけど、生長する時期には水や肥料が必要だから、年中、水もやらずに放ったらかしにしないでくれよな。もちろん太陽光も好きだから、年中家の中に置いてちゃ弱ってしまうぞ!サボテンもそれ以外の多肉植物も、あくまでも生き物だってことを忘れないように!!

仙人掌とシャボテン

前回は、サボテンと多肉植物の区別について簡単に勉強してもらったけど、今回と次回でそれぞれについて、さらに深く掘り下げて勉強してもらうぞ!

まずはサボテンからいくとするか。サボテンが日本に入ってきたのは、16世紀の後半で、南蛮人によって持ち込まれたらしいんだ。彼らが持ち込んだのは「ウチワサボテン」という大きくて平たい丸い形をしたサボテンで、その茎の切り口で衣服の汚れを取ったり、樹液を石鹸(シャボン【ポルトガル語】)のように使っていたため、石鹸のようなものという意味で「石鹸体(シャボンテイ)」と呼ばれるようになったらしいぞ。それが次第に訛っていって現在のサボテンになったんだな。でも、今でもシャボテンという呼び名を使っているところもあるからなぁ。
 ウチワサボテン
仙人掌と書いてサボテンと読むのは知っていたかい? たぶんみんなは知らないんだろうなぁ。サボテン愛好家の中ではよく知られてことなんだけど、これは中国でウチワサボテンのことを仙人掌と書くことから、それを拝借したようなんだ。仙人掌(サボテン)は、呼び名と漢字の起源が全く別物なんだってこと覚えておくようにな。

さて、サボテンは、サボテン科に属する植物の総称で、南北アメリカ大陸に千数百種の野生種があるってことは、前回勉強したとおりだけど、そのすべての種に共通していることがあるんだぞ。
 (絨毛に包まれて刺が規則正しく生えている刺座)
それは、刺座(しざ)と呼ばれる器官を持っていることなんだ。ちょっと難しくなるけど、刺座とは、刺を生じる特別な器官で、枝が極端に短くなって,しかも体内に埋もれてしまった短枝(たんし)の変形した器官で、刺はその短枝の葉が変形したものなんだ。ところで、短枝とは、葉と葉の間すなわち節間の成長が起こらないために、短い茎に葉が束のように生えている枝のことで、サボテンの刺は全て刺座より出てるんだぞ。 しかも刺座には刺のほかに毛も生えていて、ふわふわした長い毛や絨毯のような短くて密に生えてる毛もあるんだ。 サボテン以外の多肉植物にはこの刺座がないことから区別できるんだぞ。

サボテンがあの独特の形をしているのは、もちろん乾燥に耐えて生き抜くためで、あの樽のような太い茎の中に、たっぷりと水分を蓄えているからこそ、砂漠のような極端に雨の少ない気象条件でも生きていくことができるんだね。どうだい、すごいだろう? サボテンに限らず、全ての植物は、地球上のあらゆる環境に適応して進化し、その形や大きさを自在に変化させ、生き延びる術を見いだしてきたんだぞ。
 球形サボテンの代表格「金鯱」
  西部劇で有名な柱サボテン
 柱サボテンの花

サボテンと一括りに言っても、全ての種が乾燥地帯に生えているわけじゃなくて、月下美人やクジャクサボテン、それにドラゴンフルーツとして有名な紐サボテン類など、中南米の熱帯雨林などに自生する森林性サボテン類、
 森林性サボテンの月下微震
 紐サボテン類のドラゴンフルーツ
 ドラゴンフルーツの花
クリスマスカクタスやデンマークカクタスと呼ばれている、ブラジルの高山地帯に自生するシャコバサボテン類、さらには、枝も葉もあって普通の木と同じような形態のコノハサボテン類ながあるんだ。
 森林性サボテンのシャコバサボテン
 コノハサボテンの花
 刺のあるコノハサボテン
みんなが考えつく、砂漠に生えている球形や柱形をしているサボテンだけがサボテンじゃないことをしっかりと頭にたたき込んでおくんだぞ。